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初代デビューは1997年。当初は水冷2ストロークエンジンを搭載し、ネーミングに相応しい過激な走りとイメージで高い人気を獲得。第4世代の現在は「Smart Motion」と呼ばれる空冷4ストロークエンジンを搭載。ちなみに125ccモデルも選択できる。アクティブなキャラクター・イメージが表現されたショートムービー(二本立て)は巻末からどうぞ。
REPORT⚫️近田 茂(CHIKATA Shigeru)
PHOTO⚫️徳永 茂(TOKUNAGA Shigeru)
取材協力●aidea 株式会社
◼️プジョー・SPEEDFIGHT 50 R-CUP.......328,900円
アイシーホワイト
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R-CUPのイメージリーダーになったのは、ツーリングカー選手権(4輪)に参戦の308TCRである。
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現在国内で販売されているスピードファイトは3種類のカラーバリエーションを揃える125と同R-CUP(カラーは1種)があり、スポーツマインドに溢れるスタイリッシュな外観デザインが特徴である。
特に今回試乗したアイスホワイトの50R-CUPは4輪レースのツーリングカー選手権(TCR)に参戦する308TCR のカラーリングに揃えられ、よりエネルギッシュで若々しい印象。ちなみに以前に試乗した既報の125R-CUPは搭載エンジンが違う他、前後ディスクの連動ブレーキを装備。価格は367,000 円。(スピードファイト125は339,900円)
さて、試乗車の50R-CUPは49.5ccのエンジンを搭載。ユニットスイングと一体化されているリヤブレーキはシングルカム(リーディング/トレーリング・シュー)のドラムタイプが採用されているものの、その他の車体関係は125とほとんど同じ。
主要諸元に着目すると、125との比較でホイールベースが10mm長いのと乾燥重量が16kg軽いが、異なっているのはそれだけ。他はすべて共通。つまり一般的な“ゼロハン原チャ”からイメージされる内容とは次元のことなる立派な車体を持っているのである。
国産の50ccスクーターと言えば軽量コンパクト、近所の足代わりに徹し価格的にも20万円しない廉価なモデルと言うのが普通だからスピードファイト50R-CUPはお値段も含めてかなり異色な存在と言える。車格的にもヤマハBW'S125に匹敵する。
搭載エンジンのボア・ストロークは37×46mm。同社のジャンゴ50は39×41.4mm。国産車のストロークはだいたい40mm前後。ちなみにスーパーカブとジャイロは44mm。つまりスピードファイト50R-CUPはどれよりもロングストロークタイプのエンジンを搭載しているのが特徴である。
そしてもうひとつ、国産の50ccスクーターは一部を除き、前後に10インチサイズのタイヤを履くが、スピードファイト50R-CUPはなんと13インチホイールを履いている点が見逃せない。
原チャ限定でスクーター選びをする時、この点に大きなアドバンテージが期待できるのである。
車体のしっかり感と重厚な乗り味は本格的である。
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50㏄スクーターという響きからイメージすると前述したように良い意味で裏切られてしまうシッカリした雰囲気に驚かされる。車体を125と共用するのだから、当然と言ってしまえばそれまでなのだが、筆者の記憶にある原チャ・スクーターの仕上がりとはまるで異なっていた。
車体ボリュームはもちろん、前後に採用された13インチサイズのホイールからもたらされる安定感のある乗り味は秀逸。エンジンが専用であることもあって、車重が125よりも明らかに軽いのも魅力的である。
実際、都市部で移動していると、大きな交差点で必要となる二段階右折をするよりも、バイクを降りて横断歩道を押し歩いて進んだ方が、目指す進路へスムーズに駒を進められる事も多いが、そんな時の押し歩きも楽だった。
操縦性も至って軽快。旋回時にはなかなかクイックなレスポンスを魅せるが、流石に13インチホイールらしい落ち着きが伴う。ホイールベースが長い点も相まって、不安感の少ない乗り味が嬉しいところだ。
若干前下がりの傾斜がある左右ステップフロアは、前方で爪先を突っ張ることもできるし、中央部分に盛り上がる壁に足を添えて(両足で挟んで)グリップすることもできる。また足の置き場は後方部まで自由自在なので、急ブレーキ時の身構えから、積極的な左右体重移動等、結構アグレッシブな走り方も許容してくれる。
ただしエンジンのパフォーマンスは、あくまで50ccらしくそれなりの穏やかなものであった。
車体のシッカリ感には似合わないポテンシャルであることは否定できないレベル。ただし物は考えようである。法定速度が30㎞/hしか出せない日本で使う以上、その穏やかな走りはむしろ潔い。
筆者にとって久しぶりのゼロハンだったが鉄則であるキープレフトの徹底と二段階右折等のキマリを忘れてしまう様なウッカリミスを犯す心配は皆無だったのである。
またパワートルクはそれなりだが、その出力特性はどの回転域でも生き生きとしていた点も見逃せない。へこたれない柔軟性のある乗り味はロングストロークエンジンの成せる技と思えた。ちなみにこのバイク、今どき珍しいキャブレター仕様。メンテナンス等自分で弄りたいと考えるメカ好きにも良い選択になるだろう。
もちろんお値段も一級。同社のジャンゴ50よりも高価だ。ただしそのキャラクターはプレミアムと言うよりはスポーティな雰囲気を醸す仕上がり。いずれにせよ、125cc と同じサイズ感とシッカリした造りの良さからは、一般的な50ccスクーターから想像されるチープな印象は皆無だったのである。
⚫️足つき性チェック(ライダー身長168cm)
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⚫️ディテール解説
真紅のアイシャドウも鮮やかなフロントマスク。左右にセパレートされたプロジェクタータイプのデュアルヘッドライトは右側(写真左)がロービーム。左側(写真右)がハイビーム用だ。
リーディングアクスルタイプの倒立式フォークには対向4ピストンタイプの油圧キャリパーをラジアルマウント。
スポーツスクーターらしい、左右セパレートタイプのステップ。滑り止め加工を施したアルミ製フロアボードの採用も印象的だ。
空冷4ストロークエンジン採用のユニットスイング式。キックスターターも装備されている。ピリオンステップも採用されているが、日本では二人乗り不可である。
後方に跳ね上げられたブラックマフラー。後輪は左側片支持方式。130/60扁平の13インチタイヤはKENDA製、ブレーキはドラム式だ。
片支持ユニットスイングを支えるモノショック。スペースを工夫して長いストロークが確保されている。
車幅はちょうど700mm。クロームに輝くグリップエンドプロテクター付きでハンドル幅はスリムである。エアロタイプのミラーステーが上質だ。 ハンドル左側スイッチは3種類が縦に並べられたタイプ。最下段がプッシュキャンセル式のウインカースイッチ。中段のグレースイッチがホーンボタン。上がディマー&パッシングスイッチだ。 | 右側のハンドルスイッチはシンプルに一つのみ。赤いのはエンジン始動用のスタータースイッチだ。 |
メーターはシンプルなモノクロ液晶デジタル表示。トリップとオドは切り替え式だ。 逆台形の蓋を開けると僅かな小物入れスペースがある。蓋を裏返してセットするとアクセサリーのスマホホルダーが取り付けられる。 | 小物入れの中にはUSB電源ソケットがある。接続コードは上方左右の角部を通すことができる。 |
オプションのスマホホルダーを使うとこんな感じで固定できる。スマホのナビゲーションも活用しやすい。 レッグシールド内側中央にあるコンビニフックはごく一般的な方式。 | メインフレームが通るフロア中央部にセットされた給油口。ロック付きエアロプレーン型の脱着タイプだ。 |
後席のカバー&後方のウイング装備でスポーティなイメージ。シートは大きくシッカリ感がある。クッションは硬めだが座り心地は良い。 イグニッションキーの操作でシートは前ヒンジで前方に開ける事ができる。底面が凸凹しているが収納容積は十分。 | ヘルメットとその他の小物が余裕で収納できる。 |
シートカバーとエアロウイングが装備されたテールまわり。一体式クリアレンズでカバーされたテールランプ。光源はLED式だ。◼️主要諸元◼️
全長×全幅×全高:1,895mm×700mm×1,150mm
ホイールベース:1,306mm
シート高:800mm
乾燥重量:100kg
エンジン:空冷4ストローク SOHC 2バルブ単気筒
総排気量:49.5cc
内径×行程:37mm×46mm
最高出力:2.64kW(3,6ps)/7500rpm
最大トルク:3.5N・m(0.4kgf・m)/6,500rpm
燃料供給方式:キャブレター式
始動方式:セルフ式
変速方式:オート
燃料タンク容量:8.0L
タイヤ(前/後):130/60-13″/130/60-13″
サスペンション(前/後):油圧式テレスコピック/油圧式ショックアブソーバー
ブレーキ(前/後):ディスク/ドラム
◼️ライダープロフィール
元モト・ライダー誌の創刊スタッフ編集部員を経てフリーランスに。約36年の時を経てモーターファン バイクスのライターへ。ツーリングも含め、常にオーナー気分になった上での記事作成に努めている。プジョー・スピードファイトプジョー・スピードファイトR-CUP