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航空自衛隊「F-15J」の実力。44年間で撃墜数ゼロの名戦闘機


日本を守る陸・海・空自衛隊には、テクノロジーの粋を集めた最新兵器が配備されている。普段はなかなかじっくり見る機会がない最新兵器たち。本連載では、ここでは、そのなかからいくつかを紹介しよう。今回は航空自衛隊の主力戦闘機、F-15Jを紹介する。


TEXT&PHOTO◎貝方士英樹(KAIHOSHI Hideki)

MSIPとは80年代のスーパーカーの電子機器・ソフト面をモデファイ・モダナイズするのに似ている

飛行訓練を終えて滑走路へ着陸する第23飛行隊(新田原基地)のF-15DJ(複座式で前席に訓練学生が、後席に指導教官が座る)。F-15の着陸は機体背面のエアブレーキを展開、機体の迎え角を大きく取り空力的な制動を掛けながら滑走するのが特徴だ。写真/貝方士英樹

 F-15Jは航空自衛隊の主力戦闘機だ。名称の「J」は単座(一人乗り)機を表し、パイロット2人が前後タンデム配置で乗り組む複座機は「DJ」と呼ばれる。2人乗りのF-15DJは主に操縦訓練・飛行訓練のために使われる。前席へ訓練学生パイロットが、後席には指導教官が座る。


 F-15Jのベースとなった「F-15戦闘機」は米国で開発された歴史のある機体だ。米マクダネル・ダグラス社が本機の開発を始めたのは1976年。F-15は米空軍を始め、米国と関係の深いイスラエル軍やサウジアラビア軍なども採用した。全世界で1200機以上が生産されたといわれる。開発から44年を経た本機の歴史のなかで、敵機や対空兵器などで撃墜されたという正式記録はない。これは本機の持つ高い性能を示していることになるはずだ。

F-15Jの排気ノズル。可変式で末端が絞り込まれるように作動する。写真/航空自衛隊

 航空自衛隊はF-15を1981年から導入・運用開始している。従来運用していたF-104スターファイターやF-4ファントムの後継機・代替機として採用したものがF-15Jだ。


 機体には炭素繊維複合材やチタン合金を使用し、軽量化が図られている。心臓部には大推力のターボファンエンジンを2基搭載しており、短時間で作戦空域まで進出できる。軽量・大出力の機体性能を活かして、国籍不明機・領空侵犯機を迎え撃つ要撃機(迎撃機)として日本の空を守っている。F-15Jは現在約200機が全国の航空基地に配備、運用されており、防空任務や緊急発進(スクランブル)に対応している。

エンジンにはF100-PW(IHI)-220Eターボファンを2基搭載する。アフターバーナーも装備し、大推力を発生するパワフルな心臓部だ。写真/貝方士英樹

 防空や領空侵犯などに対応する全体イメージは以下のとおり。現場空域最前線で対処するのが本機の役目だが、いくら高性能とはいえ単独で作戦行動するわけではなく、バックアップ態勢がある。まずは広く見渡す「目」の態勢が敷かれる。高高度から対象空域を監視し、陸上司令部やF-15Jへ情報提供する早期警戒管制機のE-767や早期警戒機E-2Cが監視態勢を築く。そして事態が長時間の状況・飛行となりそうなら空中給油機KC-767なども本機の支援に回り、空中での補給態勢を作る。そしてF-2戦闘機なども本機の作戦支援として常に待機する。こうしたレーダー網やサポート戦力、サプライ態勢などをもって防空システムは形作られている。

空対空レーダーミサイル×4発、空対空赤外線ミサイル×4発などを搭載可能。機体へのミサイルの搭載は担当職種の係員らが手作業で行なう。写真は訓練弾の搭載作業。写真/貝方士英樹

 冒頭で紹介したようにF-15は開発から44年も経っている。ハッキリ言えば「かなり古い戦闘機」だ。空自が保有運用するF-15Jも同様、旧態化しているのは事実。後継機であるステルス戦闘機F-35Aの現場部隊配備も開始されてはいるが、予定数や態勢が一気に揃うわけでもない。そこでF-15Jを現代的に整備して継続使用している。これは「近代化改修(MSIP:Multi-Stage Improvement Program)」と呼ばれるもので、改修工事を受けた機体を「MSIP機」、未施工の機体を「Pre-MSIP機」などと区分している。改修は主に搭載コンピューターの現代化を主に行なわれ、その表示装置や制御系等なども加えて段階的に行なわれる。アナログをデジタルに替えているということだろう。80 年代のスーパースポーツカーの電子機器やソフト面をモデファイ・モダナイズして走らせることと似ているかもしれない。




 空自が現有するF-15Jは約200機で、「MSIP機」と「Pre-MSIP機」との割合は半々とみられる。

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