東京オートサロンでワールドプレミアされたトヨタの新4WDスポーツ、GRヤリス。新しい4WDシステムや新開発プラットフォーム&エンジンなど見どころの多いニューモデルだが、現時点では詳細が不明なところが多い。取材を通じてわかったことをまとめてみた。次はシャシー&4WDシステム編だ。
GR-FOURのキモはJTEKT製ITCCの使い方にある
GRヤリスは、トヨタにとってセリカGT-FOUR以来のスポーツ4WDモデルだ。新開発の4WDシステムは「GR-FOUR」と名付けられた新しい4WDシステムである。
センターデフ式ではなく、カップリング式の4WDであるGR-FOURだが、単なるカップリング式ではないのがGRヤリスの特徴だ。(トヨタのカタログページには「電子制御多板クラッチ(ビスカス・カップリング)センターデフ」と表記があるが、これは誤りだろう。ビスカスカップリングは、高粘度シリコーンオイルのせん断(剪断)抵抗を利用した流体クラッチの一種だから、明らかに今回のGRヤリスのカップリングとは違う)
東京オートサロンに展示してあったベアシャシーは、特別仕様車 RZ“High-performance・First Edition”(車両価格456万円)のものだ。
カットされた電子制御多板クラッチカップリングが見える。これは、ジェイテクトの「ITCC」というカップリングユニットだ。ITCCは、Intelligent Torque Controlled Couplingの頭文字からきた名称だ。FFベース電子制御4WDカップリングで世界シェアナンバー1のユニットである。
GRヤリスもこのITCCを採用したわけだが、もちろんGRヤリス専用のITCCを使う。
そもそも、ITCCは前後輪の駆動力を前輪100:後輪0〜前輪50:後輪50まで連続的に可変させることができるカップリングユニットだ。今回のGRヤリスは
Normal:前60:後40
Sport:前30:後70
Track:前50:後50
の3つのモードで前後駆動力配分を変えられる。
前30:後70? という疑問については、こちらの記事をぜひ参照していただきたい。GR-FOURの技術的ポイントを解説している。
欧州仕様のリリースを読むと、「理論的には前100:後0から前0:後100まで変化させられる」と書いてある。
この点をトヨタのエンジニアに訊くと
「100:0から0:100の駆動力配分はメカニズム的には可能な構造になっている。ただしリヤ100%配分で走りに効果あるシチュエーションがほとんどないのと、熱的に短時間しか使えない(から30:70までしか使わない)」と説明された。
このあたりの秘密については、さきほどの記事を参照していただきたい。
ちなみに、日産ジュークのALL MODE 4×4(トルクベクトル付き」ではリヤアクスルに2つのITCCを使って左右のトルクベクトル制御を行なっている。
GRヤリスには、次の2グレードがある。
特別仕様車 RZ“First Edition” 396万円
特別仕様車 RZ“High-performance・First Edition”456万円
その差額60万円。
ここに含まれるのは、
・前後トルセンデフ
・冷却スプレー機能付き大容量空冷インタークーラー
・8スピーカーJBLサウンドシステム&アクティブノイズコントロール(RZは2スピーカー)
・ブレーキダクト
・プレミアムスポーツシート(スエード/サイド合皮、RZはファブリック)
・BBS製18インチ鍛造アルミホイール
・ミシュランPilot Sport 4Sタイヤ
・カラード(赤色)ブレーキキャリパー
となっている。走行性能に影響するのは、デファレンシャルだ。
ノーマルのRZには、いわゆる「オープンデフ」が付く。これに対してRZ“High-performanceは、トルセンデフが前後につく。
トルセンデフは、ジェイテクト(JTEKT)の商標で、
トルセンTypeA
トルセンTypeB
トルセンTypeC
の3タイプがある。今回GRヤリスが使うのは、TypeBだ。
TypeBのトルセンデフは、ヘリカルギヤを使う。オープンデフにはできない瞬時に路面に応じたトルク配分を可能にする。ルノー・メガーヌR.S. CUPのフロントに使われているものトルセンTypeBだ。