スチール製ダイヤモンドフレームに排気量197ccの空冷単気筒SOHC2バルブエンジンを搭載。現代的な雰囲気とレトロムードが融合した車体は、昨今人気の「ネオクラシック」なスタイルを感じさせます。いま気になる存在、タイGPXの「Gentleman(ジェントルマン)」に乗ってみました。
REPORT●青木タカオ(AOKI Takao) PHOTO●山田俊輔(YAMADA Shunsuke)
Gentleman(ジェントルマン)……38万2800円
イタリアの洗練されたデザインを参考に開発され、リーズナブルな価格帯も強みとなっているタイのGPX。モーターサイクルだけでなくATVで実績を積み、タイ国内ではホンダ、ヤマハに次ぐシェア第3位につけているブランドです。
日本総代理店として月木レーシング(大阪府貝塚市)を母体としたGPX Japan社も2018年に設立済みで、バイクイベントにも精力的に出展し、メディアへの露出も増えています。
200ccモデルの「Gentleman(ジェントルマン)」はLED式のリングライトを配した現代風のヘッドライトをはじめ、エッジの効いたシャープなフォルムなどモダンな装いの中にレトロムードが融合する「ネオクラシック」なスタイル。
前後17インチの足まわりはトラディショナルなクロススポーク仕様ですが、フロントフォークは倒立式でブレーキキャリパーもラジアルマウントタイプと先進的です。
リヤシートにはシートカバーが付けられシングルシート風に。見れば見るほどに、既成概念を打ち破った斬新なスタイルに惹きつけられていくではありませんか。
スチール製ダイヤモンドフレームに搭載されるのは、タイの自社工場で製造される空冷単気筒SOHC2バルブエンジン。最高出力11.5PS/7500rpm、最大トルク1.34kg-m/7500rpmを発揮します。
独特のムードと際立つ存在感があり、触れてみたくなる質感の高さも持っているのでした。跨ってみましょう。
しっくりきて乗り手の体格を選ばない
全長2020mm、全幅790mm、全高1160mm、ホイールベース1400mm、車両重量160kgの車体は、ホンダ「CB250R」(全長2040×全幅805×全高1045mm、ホイールベース1355mm、車両重量144kg)に近い大きさです。
軽量・コンパクトですが、車体の後方寄りに座面が設定されている影響もあり、ライディングポジションは窮屈ではありません。
バーハンドルはプルアップされることなく、緩やかにカーブしてグリップ位置を前方に。上半身は若干の前傾姿勢となりますが、伏せる角度も穏やかです。
シート高は800mmで、身長175cmの筆者の場合、ヒザが軽く曲がって両足ともカカトまで地面に届きます。取り回ししやすい小柄なボディで、乗り手の体格を問わないのも魅力でしょう。
軽快な操作性、扱いやすいエンジン
空冷式シングルエンジンの吸気機構は、もはや懐かしのキャブレター式。ただし始動性に難はなく、ハンドル右のセルスターターボタンを押せば一発で目覚めます。
スロットルレスポンスは穏やかですが、低中回転域のトルクはしっかりあって、もたついて不満を感じるなんてことはありません。200ccであることを考えれば充分すぎるほどに元気で、扱いやすいエンジンはトコトコとノンビリ走ってもいいし、高回転まで引っ張り上げてパワーを絞り出すのも面白いのでした。
シフトロッドの両端にピロボールが用いられるなどし、ギヤチェンジ時のシフトフィールも良好。スイッチ類も日本製バイクとほぼ同じ位置にあり、違和感を抱くことはありません。
ハンドリングにクセがなく、ピレリ製のバイアスタイヤがフットワークの軽さを後押ししています。4ピストン・ラジアルマウントキャリパーのフロントブレーキも自然な操作性、申し分のない制動力を発揮し、YSS製のリヤショックやスチール製角型スイングアームを含め足まわりもジャストフィットしています。
スタイリッシュでストリートで目を惹くという点では、人とは違うバイクを求める人に最適でしょう。特にジェントルマンはカスタムムードたっぷりで、「ナンダあれ?」とライダーたちから注目されそうです。もちろん市街地でクルマの流れをリードできますし、都市高速を利用した郊外へのツーリングに出掛けるのもいいでしょう。お洒落も似合いそうです。
Gentleman(ジェントルマン)ディテール解説
LEDリングを組み合わせたハロゲン(12V35W)ヘッドライトやLEDウインカーが、モダンなフロントマスクを演出しています。
オフセットマウントされたラウンドタイプのLCDメーター。速度やエンジン回転数はもちろん、燃料計やギヤポジション、電圧計も表示し、機能性に富んでいます。
倒立フォークにラジアルマウントキャリパーがセットされた足まわり。17インチのブラックリムは、ピレリ製のバイアスタイヤ「ANGEL CITY」を履きます。
他のGPXモデルがそうであるように、スイッチ類は日本車のレイアウトとほぼ同じで操作しやすい。「ジェントルマン」で唯一おやっと思うのは、ハンドル右にハザードスイッチを備えていることです。
燃料タンクは12Lの容量を確保。上面にはバンド風の装飾、ニーグリップ部にはラバーカバーが備わり、レトロムードを演出しています。
オイルクーラー付きの空冷単気筒200㏄エンジン。キャブレター仕様であることに魅力を感じる人も少なくないでしょう。
赤いステッチが施されたタックロール調のダブルシートは、クッション厚もあって座り心地がいい。シングルシート風のカバーを標準装備し、軽快でスポーティなテールエンドを決定づけました。
テールエンドに向かって角度が付けられたサイレンサーもスポーティ。同社の150ccモデルではリヤブレーキはドラム式ですが、200ccモデル「ジェントルマン」ではディスク化されているのも見逃せません。
前後ウインカーやテールライトはLED式。クラシックなムードと現代的な装備が融合するレトロモダンスタイルとしています。
原動機種類 : 4ストローク
排気量 (cc) : 197
圧縮比 : 9.2 : 1
冷却方式 : 空冷(オイルクーラー)
ヘッドライト : LEDリング/ハロゲン12V35W
テールライト : LED
エンジン始動方式 : セルモーター
ブレーキシステム(前): ダブルディスク
ブレーキシステム(後): シングルディスク
フロントサスペンション : アップサイドダウン
リヤサスペンション : YSSシングルサス
タイヤ(前): ピレリ製 110/70-17
タイヤ(後): ピレリ製 140/70-17
全長(mm): 2,020
全幅(mm): 790
全高(mm): 1,160
地上高(mm):200
シート高(mm): 800
軸間距離(mm): 1,400
車両重量(kg): 160
カラーリング:ブラック、ブルーグレー