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2006年に生産を終了し、16年10月のドイツ・ケルンショーで復活したドゥカティ「SS=スーパースポーツ」。現行モデルはパニガーレを彷彿させるフロントマスクで、最高出力110PSを発揮する排気量937㏄のL型2気筒テスタストレッタ11°エンジンを搭載します。
REPORT●青木タカオ(AOKI Takao) PHOTO●山田俊輔(YAMADA Shunsuke)
ドゥカティ SUPERSPORT S……189万3000円
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「SS1000DS」が2006年に生産終了して以来、10年ほど「SS=スーパースポーツ」を名乗るモデルは姿を消していました。復活を発表した2016年秋、ケルンショーに続くミラノショーでは「もっとも美しいバイク」としてアワードを受賞。大きな話題となったのはもちろん、スーパースポーツに対するドゥカティの熱意が認められた瞬間でもありました。
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こうして眺めてみると、デビューから3年が過ぎた今も称賛の声が絶えないことに頷くばかりです。見るからに軽量でコンパクト。彫り込みが美しいフューエルタンク、運動性能の良さに直結するバネ下の軽さをひとめで伝える片持ち式スイングアームとY字スポークホイール、マスの集中化を図ったコンパクトなアクラポヴィッチ製ツインサイレンサーなど、全身からスポーティかつ高性能であることが滲み出ています。
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それでいてエレガントさもあり、上質感を漂わせているからたまりません。今回乗るのはドゥカティ・クイック・シフト(シフトアップ/ダウン対応)やフルアジャスタブルのオーリンズ製48mm径チタンコートフォーク、リアシートカバーなどを備える上級仕様のSバージョン。
オプションパーツとして設定されているアクラポヴィッチのマフラーやパニアケース、グリップヒーターなどが備わり、快適なロングライドを提案。ツーリングパッケージとしています。
セパハンはトップブリッジより上にマウント、アップライトなライポジに
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跨ってみると前傾姿勢が緩やかで、トップブリッジの上にクランプされるセパレートハンドルの絞り角も広め。ゆったりとしたライディングポジションであることがわかります。シートとハンドルが近く、小柄な人もグリップが遠いなんてことは感じないでしょう。
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シート高は810mm。両足を地面におろすと、身長175cmの筆者の場合、カカトがうっすら浮く程度で足着き性は良好です。シート先端が絞り込まれて、足を下ろしやすいことも報告しておきましょう。−20mmのローシートも、オプションに設定されています。
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全域トルキーで、扱いやすさもある
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パイパーモタード系譲りの排気量937㏄L型2気筒テスタストレッタ11°は最高出力110PS/9000rpm、最大トルクは93Nm/6500rpmを発揮しますが、その80%をわずか3000 rpmで発生してしまいます。
「スーパースポーツ」というネーミングからサーキット向けの尖ったエンジンフィーリングを想像しがちですが、先代たちがそうであったように街乗りからツーリング、サーキット走行も楽しめるオールラウンダーであるのがドゥカティSuperSport(スーパースポーツ)というわけです。
ミドルレンジが力強く、限られたパワーバンドはなく低速域でもギクシャクするようなことはありません。しっかりとあるパルス感は大袈裟ではなく、スムーズに回って中高回転域も伸びやか。ピークトルクを6500rpmで迎えても、10,000rpmまでパワフルに回りきっていくのです。
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ハンドリングは軽快で、速度域が上がらなくともキビキビ走ってくれるのも、公道に主眼を置いたマシンであることを強く感じさせます。前後サスペンションはしなやかに初期荷重からよく動き、優れたトラクション性を生み、気を抜いてもスロットル操作と荷重移動のテンポを極端に間違わない限りは、リズム良くコーナーを駆け抜けられる親和性も持ち味になっています。
ライディングモードは「スポーツ」「ツーリング」「アーバン」の3つが予め用意され、ABSやトラクションコントロール、クイックシフトの設定が変化。右手のグリップ操作にダイナミックに反応する「スポーツ」を選んでも過激すぎるなんてことはなく、肩肘張らずに楽しめるトータルバランスに優れたスポーツバイクであることがわかるのでした。
ただし、冷たい路面に手こずるときはトラコンの介入度が高い「アーバン」や「ツーリング」の恩恵を感じるとき。さらに乗り手の好みや技量に合わせて、モードをカスタマイズすることもできます。
目をつり上げなくとも、ゆったり走っているだけでハイペースを保て、乗り心地もいい。もし、ドゥカティは気難しいなんて敬遠している人がいたら、ぜひ乗って試していただきたい。その先入観が変えられるはずです。
SUPERSPORT Sディテール解説
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パニガーレにも通ずるアグレシッブなフロントマスク。登場時に「もっとも美しいバイク」として称えられるだけあって、そのセクシーさに魅了されずにはいられません。
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高度なコントロールパネルへと変換したLCDディスプレイ。バーグラフ式のデジタルタコメーターが左から右へ流れ、速度は中央に表示します。選択したモードだけでなく、DTC(ドゥカティ・トラクション・コントロール=8段階)やABSがその段階か常時わかるのがありがたいです。
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トップブリッジより上にマウントされたセパレートハンドルが、アップライトな乗車姿勢を生み出します。絞り角も広めで、ツーリングユースにも配慮を感じる設定です。オプション設定されるグリップヒーターを装備。温度調整が3段階にできます。
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説明なしに直感的に操作できるスイッチ類。ライディングモードの設定もメーターを見ながら左手のエンターボタンと上下スイッチで難なくできました。
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フロントブレーキはブレンボ製M4.32 4ピストンラジアルマウント・モノブロックキャリパーと320mm径セミフローティングディスクの組み合わせ。倒立フォークはオーリンズ製48mm径チタンコートフルアジャスタブル式と、一線級の装備を誇っています。
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エンジンを剛性メンバーとするスチールパイプ製トレリスフレーム。水冷L型2気筒は前後のシリンダーヘッドがフレームに接続されています。
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フィット感に優れ、上質感もあるシートは、赤いステッチがアクセントに。上級仕様となるSでは、リアシートカバーを標準装備します。
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パニアケース装着や2人乗りを想定し、シートレールは頑丈に設計されています。
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レール脇にはUSB電源ソケットを備え、電子デバイスへの給電に対応可能としました。
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S仕様ではクラッチ操作なしにシフトアップとダウンが可能なドゥカティ・クイック・シフト(DQS)を標準装備。アップ時はスロットルを戻す必要がなく、シームレスなシフトチェンジが可能となります。
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アクラポビッチ製マフラーもオプション設定。迫力のあるサウンドを響かせていました。
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スイングアームは見るからに軽快なアルミ製片持ちタイプ。アルミ軽合金製Y字3本スポークホイールをセットします。
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ターンシグナルはクリアレンズを採用し、灯火器類はすべてLED式。テールエンドもコンパクトでスタイリッシュです。オプションのパニアケースガードを装着しています。
■主要諸元
エンジン L型2気筒 テスタストレッタ 11° 水冷4バルブ デスモドロミック
排気量 937cc
ボアXストローク 94 x 67.5mm
圧縮比 12.6
最大出力 110 ps(81 kW)@ 9,000 rpm
最大トルク 9.5 kgm(93 Nm) @ 6,500 rpm
乾燥重量 183 kg
車両重量 210kg
シート高 810 mm
ホイールベース 1478 mm
燃料供給装置 電子制御燃料噴射、53mm径スロットルボディ、フルライド・バイ・ワイヤ
エグゾースト 軽量2-1-2 システム
ギアボックス 6速
1次減速比 1.84:1
減速比 1速 2.467 2速 1.765 3速 1.400 4速 1.182 5速 1.043 6速 0.958
最終減速 チェーン:フロントスプロケット 15T、リアスプロケット 43T
クラッチ 湿式多版 ワイヤ式 セルフサーボ/スリッパークラッチ機構付
フレーム スチールパイプトレリスフレーム
キャスター角 24°
トレール量 91mm
タンク容量 16リットル(リザーブ容量含)
フロントサスペンション オーリンズ製48mm径TiNコート フルアジャスタブル倒立フォーク
フロントホイール 軽合金Y字3本スポーク3.50 x 17
フロントタイヤ 120/70 ZR17 ピレリ製ディアブロ・ロッソ3
リアサスペンション プログレッシブリンク、オーリンズ製フルアジャスタブルモノショック、アルミニウム製片持ち式スイングアーム
リアホイール 軽合金Y字3本スポーク5.50 x 17
リアタイヤ 180/55 ZR17 ピレリ製ディアブロ・ロッソ3
ホイールトラベル F130mm/R144mm