現代の路上でもしっかり現役で走れるとわかったラビットS301。では同じ鉄スクーターのライバルと比較すると、どうだろう? 今でも中古車が比較的買いやすい状況にある鉄スクーターといえば、イタリアのベスパだろう。クラシカルなビンテージシリーズは買いやすい状況でラビットと比較しやすい。では見て乗って違いを感じてみよう。
悩めるビンテージ御三家。富士重工、三菱、ベスパ
ハンドシフトがビンテージの証
キーシリンダーを見比べる
ラビット・ベスパのライバル対決。まず操作系でいうとキーシリンダーがまるで違う。写真上はラビットS301で、キーを差し込み1段回すとイグニッションオン。この状態でセルを回せばエンジンがかかる。さらに2段回せるようになっており、次がスモールライト点灯、その次がヘッドライト点灯と、キーでヘッドライトを操作できるようになっている。だが、イグニッションはバッテリーカバーの上パネル右にある。走行中は操作しにくい位置といえる。
変わって写真下のベスパET3ではメーターの上にキーシリンダーがある。キーを差し込み1段回すとイグニッションオンになる。この状態でキックペダルを踏み込むとエンジンが始動する。ベスパはバッテリーレス構造。ゆえにセルはないが、バッテリーを気にせず保管できる。またラビットと違ってヘッドライトは右グリップのスイッチで操作する。走行中でも操作しやすいので、ラビットより使いやすい。
2台のエンジンを掛けてみる
ではエンジンをかけてみよう。ラビットはキーを1段回してセルスターターを押す。冷間時はキーシリンダーの左にあるスターターボタン(チョークノブ)を引くと、始動性が良くなる。一度温まればスターターボタンを引く必要はない。ラビットのアイドリング回転は低く、メーター内の赤いインジケーターが点灯する。これはスロットルを開けると消灯して充電していることを教えてくれる。
対してベスパはキーを回してキックレバーを踏み下ろす。やはり冷間時はシート下のチョークノブを引くと始動性が良くなる。アイドリング回転数は低くも高くもない状態がベスト。ベスパにはバッテリーがないため、ラビットのようなインジケーターはない。
ラビットS301の最終モデルであるスーパーフロー125は車両重量が120kgある。対してベスパ125ET3の車両重量は73kgしかない。その差は47kgにもなり、小柄な女性ひとり分ラビットが重いことになる。これは発進時や加速時の性能差になって現れる。ラビットは信号ダッシュがスーパーカブ50並みであるのに、ベスパは国産90ccスクーターくらいに元気が良い。また走行中の加速についてもラビットは緩慢に車速が伸びる感覚だが、ベスパは加速力に鋭さを感じる。動力性能については明らかにベスパが上だ。
走りのキャラはまったく異なる
走り出して感じる足回りの違いはどうだろう。
まずラビットは前にも書いたように乗り心地が非常に良い。同時期の4輪であるスバル360も同様の傾向で「スバル・クッション」という言葉が生まれたほど。ラビットのフロントサスペンションは3つ又アームとリンク部品、それにショックユニットで構成されている。対してベスパは長い1本のパイプが伸び、ホイール部にリンク部品が付いて上下動する。これをショックユニットで支えている。これだけでもラビットのサスペンションストロークが長いとお分かりいただけよう。またショックユニットの減衰力は穏やかな設定だ。
対してベスパは乗り心地が良くない。悪いとまで言わなくても、硬い部類だ。それはフロントサスペンションのストロークが短いことに端的で、上下動はほぼしない。リヤサスペンションもラビットはソフトでベスパはハードという印象。
この足回りの動きはブレーキ性能によっても印象が異なる。ラビットとベスパともに前後ともドラムブレーキ。どちらもリヤブレーキを主体に使うのだが、ラビットはフロントも結構効いてくれるので、フロントブレーキだけで速度を調整できる。対してベスパはフロントがほぼ効かない。フロントブレーキだけ握ると、サスペンションが大袈裟に沈むものの速度が落ちているのを実感しづらい。
またタイヤはどちらも10インチだが、ラビットは3.50サイズでベスパは3.00サイズ。これはそのままハンドリングに現れる。ラビットは直進性が強く、素直な倒し込みだが安定志向。対してベスパは軽快なハンドリングが身上で、ヒラヒラとコーナーを駆け抜けていく。
総合的にベスパはスポーティでラビットは安定志向。どちらがいいかは個人の好みが大きいだろう。
燃費はベスパが優勢か?