フォルクスワーゲンのフラッグシップサルーン、アルテオン。流麗なファストバックスタイルで、発売から2年経った今でも新鮮を失わず、スタイリッシュなセダンとして高い人気を誇っている。そんな、ともすると見た目ばかりが注目されがちなアルテオンだが、「買ってみたらかなりの実力派だった」という声もここ最近はよく聞かれる。走りも、快適性も、燃費も、ユーティリティも、フォルクスワーゲンらしくかなり真面目に追い込んだ、正統派セダンでもあるのだ。今回は、そんなアルテオンの燃費にフォーカスしてレポートしたい。
REPORT&PHOTO●小泉建治(KOIZUMI Kenji)
典型的なワンデードライブを再現するコースで計測
最初にアルテオンのスペックを簡単におさらいしておこう。
エンジンは直列4気筒2.0L直噴ターボエンジンで、インタークーラーが付く。最高出力は280ps、最大トルクは350Nmで、7速DCTを介して4輪を駆動する。車重は1700kgで、試乗車両のR-Line Advanceは20インチのアルミホイールを履く。JC08モード燃費は13.3km/Lとなっている。
テスターの体重は76kgで、乗員は一名だ。とくに燃費を意識せず、流れに乗った運転を心掛ける。
まずは編集部からほど近い初台インターチェンジから首都高速4号線に乗る。三鷹の料金所あたりまでは交通量も多かったが、中央自動車道に入ってからは流れも良く、前走車がいなければ80km/hを目安にペースを保てた。
八王子の料金所を過ぎてからは登り坂が多く、とくに小仏トンネル手前の約5km、そして上野原インターチェンジから談合坂サービスエリアまでの約5kmは、高速道路としては最もきついレベルの登り坂となっていて、平均燃費計の数字がみるみる悪化するのが通例となっている。
大月インターチェンジで中央自動車道を出る。ここまでの平均燃費は14.4km/Lとなった。
大月からは一般道で、「タイトで勾配のきついコース」と「穏やかなカーブの続くコース」という2種類のワインディングロードを走る。
今回の燃費テストでは同時に動画の撮影も行っていたのだが、「タイトで勾配のきついコース」で事実誤認の台詞(スペックの数値を間違ってしまいました)を喋ってしまったり、極めてペースの遅い軽トラックに引っかかってしまったりと、何度も撮り直す羽目になってしまい、結果的に最も燃費に厳しいセクションの距離が伸びてしまった。
後半の「穏やかなカーブの続くコース」は比較的燃費に優しいセクションということもあり、なんとか平均燃費は10km/L台を割らず、128kmを走って10.8km/Lとなった。
そして相模湖インターチェンジから再び中央自動車道に乗り、東京を目指す。ここは相模湖インターチェンジから小仏トンネルまでの間と、調布インターチェンジから三鷹料金所(実際にブースがあるのは反対車線のみ)までの間に登り坂があるが、それ以外は全域において下り坂で、燃費が大きく伸びるステージだ。
調布インターチェンジ付近では一時的に平均燃費計が21km/L台を示していたほどだったが、初台インターチェンジを降りた時点で18.0km/Lに落ち着いた。いや、「落ち着いた」というより「大幅に伸びた」と表現するべき好結果だ。
初台インターチェンジからは、交通量の多い幹線道路を夕方の渋滞に巻き込まれつつ18kmを走行。距離が短いので参考程度にしかならないが、平均燃費は8.8km/Lとなった。18kmのうち半分くらいは渋滞だったが、残りの半分は意外と流れがよかったことは付け加えておこう。
こうして全行程273kmを走り終え、総合燃費は12.4km/Lを記録した。JC08モード燃費の達成率は93%となった。
ただ、総合結果だけを見て一喜一憂することに意味はない。全行程のなかにおける高速道路の割合次第で、総合燃費などどうにでもなってしまうからだ。
アルテオンの結果を見てわかるのは、「高速道だとものすごく伸びる」とか「一般道での落ち込みがかなり少ない」といった特徴的な傾向があるわけではなく、燃費の変動がわかりやすいというか、予想通りになるということだ。
世の中には、飛ばしても燃費がそれほど落ちなかったり、逆に速度を抑えて走ったのに意外と伸びない、というクルマもあって、それはそれでなかなか興味深かったりするのだが、アルテオンの場合は「一般道よりは高速道が伸び」「飛ばすよりも穏やかに走った方が伸びる」といったように、一般論として誰もが知っていることが当たり前に結果として出る。
とはいえ、動力性能にまったく不満を感じさせないラグジュアリーなフラッグシップサルーンが、こうしたワンデードライブの典型的コースでマークした12.4km/Lという平均燃費は、多くのオーナーが満足する好成績と言っていいだろう。
フォルクスワーゲン・アルテオン TSI 4MOTION R-Line Advance
全長×全幅×全高:4865×1875×1435mm ホイールベース:2835mm 車両重量:1700kg エンジン形式:直列4気筒DOHCターボ 総排気量:1984cc ボア×ストローク:82.5×92.8mm 圧縮比:9.6 最高出力:206kW(280ps)/5600-6500rpm 最大トルク:350Nm/1700-5600rpm トランスミッション:7速DCT タイヤサイズ:245/35R20 車両価格:618万円