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マツダCX-8で東京から紀伊半島まで1100kmのロングドライブに行ってきた|SUVレビュー


土曜の夕刻になんとなく、月曜日になんにも予定がないことに気がつく。土日の泊まりがけよりも日月の外出のほうが渋滞にも合いにくく混雑にも巻き込まれないことに気がついたことから、日曜日にふらりと出かけることを画策。相方はマツダCX-8であ。




REPORT●安藤 眞(ANDO Makoto)


PHOTO●神村 聖(KAMIMURA Satoshi)




※本稿は2017年12月発売の「マツダCX-8のすべて」に掲載されたものを転載したものです。車両の仕様が現在とは異なっている場合がありますのでご了承ください。

室内の静謐さに驚く

 2017年のクルマ関連の話題のひとつが、高速道路の制限速度引き上げ。11月から、新東名の一部区間に限って110㎞ /hに引き上げられた。そこで今回は、その区間の視察も兼ねて、新東名を西に向かうことにした。ロングツーリング性能を謳うCX-8には絶好のステージだ。




 試乗車は最上級の「Lパッケージ」。シート表皮に使われるナッパレザーの手触りは、絶妙の滑らかさだ。弱点は冬の冷たさだが、CX-8は「XDプロアクティブ」以上のグレードにシートヒーターを標準装備。このスイッチを入れておけば、乗車時からぬくぬく……なのだが、ヒーターの入らないサイドサポートの冷たさが微妙に残念だった。




 反面、快哉を叫びたいのが、ステアリングヒーター。これも「XDプロアクティブ」以上のグレードに標準装備となる。身体は着込めばどうにかなるが、手はそうはいかないから、シートヒーターより欲しいのはステアリングヒーターだ。




 ともあれ、寒い朝でも快適なCX-8で東名高速へ。CX-5の旧型では、交差点の右左折時に若干のターボラグが残っていたが、CX-8ではほとんど感じられなくなっている。




 高速の進入路での加速は力強い。CX-5より車重が約200㎏増えているが、大人3人+撮影機材程度の負荷など物ともせず、ぐいぐいと速度を載せていく。加速の音質にディーゼルっぽさはあるものの、音圧は低く不快ではない。




 巡行時も、80㎞/h程度までは、かすかなディーゼルノックが聞こえてくるが、それ以上の速度になると、聞こえるのはほぼロードノイズだけ。旧知のカメラマンと四方山話でひとしきり盛り上がってから、ふと気づく。「今、普通の声で会話してたよね?」。CX-8は会話明瞭度を高める静粛性対策が数多く行なわれているが、期せずしてそれを確認できた。

こちらは、紀北町の魚飛渓(うおとびけい)。すれ違いどころか一台通るのもやっとの九十九折の周りは、ご覧のように目を奪われるような佳景の数々である。深山幽谷に見えながら、しかし実は海から数キロしか離れていない。南勢の自然の豊かさに驚かされる。

隘路で、先進装備を役立てる

 新東名に入ったところで、レーダークルーズコントロールをセット。スイッチはステアリングの右スポークに集約されており、取扱説明書を見るまでもなく簡単だ。110㎞ /h区間に入ったところで、設定速度を上げる。ステアリング介入式のレーンキープアシスト(LKS)も作動させれば、ドライバーはやることがなくなる。




 大阪方面に行くと混雑しそうなので、紀勢道の終点・尾鷲まで行くことにする。ICを降りてGSに寄ったら、「銚子川で遊ぼう」というパンフレットが目に入った。流程13.8㎞の小さな川だが、上流域にはほとんど人が住んでおらず、汽水域まで高い透明度が維持されているという。行ってみると、深い淵の底まではっきり見えるほど水が澄んでいた。




 ただし川沿いの林道は狭く、対向車が来ようものなら、退避スペースまでバックを強いられる。このとき強い味方になったのが、360°ビュー・モニター。死角が多い左後方が把握できるのに加え、超音波センサーが障害物を教えてくれる。




 次に目指したのが、四日市の工業地帯。いわゆる「工場萌え」の写真を撮るためだ。その際、約20㎞の渋滞に巻き込まれたが、有り難さを実感したのが、車速0まで対応するレーダークルーズ。再発進にはドライバーがアクセルをちょいと踏む必要があるが、渋滞追従の微妙なペダル操作はクルマがやってくれる。




 ただし、車間距離の設定を長めにしておかないと、ブレーキの介入は遅めになり、つい自分でブレーキを踏んでしまう(レーダークルーズは解除される)。それに気付いてからは、車間を最長に設定し、クルマ任せで楽をさせてもらった。

魚飛渓の川岸に降りてみると、恐ろしいほどの巨岩の数々と溜息の出そうなほど美しく透き通った川が迎えてくれる。左は四日市港の工場エリア。昼夜を問わず稼働するダイナミズムが、三重のバイタリティを伝えてくる。

[取材車]CX-8「XD L Package」2WD キャプテンシート(6人乗り:ナッパレザー/ディープレッド革内装)マシーングレープレミアムメタリック

乗員すべてに、特等席を

 翌日は、東海道47番目の宿場として栄えた関宿を訪れた。江戸時代後期の町並みが約2㎞に渡って保存されており、いにしえに浸りながら甘味を楽しむことができる。




 続いてハンドリングを試すべく、名張市にある青蓮寺湖へ。湖岸沿いのワインディングでは、ハンドリングの気持ち良さが際立つ。操舵応答に過敏感がないので、同乗者の身体を振り回すことなくコーナーにアプローチできる。曲がり始めればダイレクトに舵が効くため、道幅をいっぱいに使って旋回Rを大きくし、横Gを減らしながらペースを維持するという走りもしやすい。ブレーキタッチにもう少し剛性があり、奥までしっかり効くようになったら最高だ。




 目的の取材をひと通り終え、帰路につく。月曜日の日中なので、渋滞の心配はない反面、大型貨物が多い。リミッター走行をしていると見られるトラックが、追い越し車線にふらりと出てくる。こういうシーンでも、レーダークルーズをセットしておけばクルマが対応してくれるが、110㎞ /h区間で大きな攪乱要素になるのは、たぶんこの動きだ。




 運転を編集Mに任せ、2〜3列目シートにも乗ってみる。2列目はもう少しシートクッションが長く、抑揚があったほうがリラックスできそうに思えたが、折り畳み時のフラット化も考慮すると、ちょっと難しいかも知れない。




 3列目に身長181㎝の僕が座ると、天井に頭が当たる。しかし、まったく使えないということはなく、お尻を前にずらしてルーズに座れば、頭は当たらなくなる。問題は足の置き場で、内側の足の正面に、2列目のシートレールが来てしまう。試乗車は2列目センターコンソール仕様だったので、足の置き場に難儀したが、センターコンソールがなければシート間に足を投げ出せるし、ベンチシート仕様でも、もう少し足の置き場に自由度はあるはずだ。




 驚いたのは、3列目の静粛性と快適性だ。1列目席との会話も、距離なりに声を大きくする程度で可能だし、風騒音も極小。濡れた路面で水跳ね音が聞こえるのと、タイヤの真上なりにロードノイズが聞こえる以外、静粛性は高い。




 乗り心地も非常に良く、3列目にありがちな「振り回され感」はない。道路工事の補修跡を通過しても、前後左右に頭が揺すられる動きはほとんど出ず、上下動も一発で収まる。




 約1100㎞走って確認できたのは、まずグランドツーリングカーとして申し分ないこと。シートは腰のホールドが良く、腰痛持ちの僕でも快適だった。2〜3列目の「くつろぎ感」と3列目の乗降性を除けば、快適性もプレミアムミニバンに劣らない。むしろ「多人数で遠くまで移動する道具」として選ぶなら、ミニバンより向いていると評価して良い。

亀山市の関宿(せきじゅく)。約2㎞に渡って200棟以上の伝統家屋が居並び、現在も住居や店舗として使われる。今回は写真撮影のため早朝にクルマで入ったが、観光の際には駐車場にクルマを駐めて徒歩で回るべし。

名張市の青蓮寺湖(しょうれんじこ)。青蓮寺ダムによる塞止湖で、住宅地を抜けたすぐのところにある。写真は県道81号から分岐する青蓮寺橋。東側にはもう一脚、弁天橋と称する赤い橋が架けられている。

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