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グローバルモデルの日本への最適化


日本の国民車として長らく愛されたカローラも、今や全世界で販売されるグローバルモデル。しかし、欧米と交通環境が異なる日本の道路と、日本人ユーザーにマッチさせるため、さまざまな部分に国内専用設計が施されている。日本のクルマとして、トヨタが徹底的にこだわった新型カローラのメカニズムを紹介する。




図版解説●安藤 眞(ANDO Makoto)/編集部




※本稿は2019年10月発売の「新型カローラのすべて」に掲載されたものを転載したものです。

どれも魅力的なデザインとサイズの異なる3つのボディ







セダンとツーリングも3ナンバーサイズとなった。しかし、グローバルモデルのデザインコンセプトはそのままに、日本のユーザーや交通環境に適した使いやすさを求め、日本専用ボディが与えられた。

エンジンと乗員の位置を下げ、低重心と居住性を向上

エンジン及び乗員レイアウトを下げることで、ヘッドクリアランスを確保。空力にも有利な低重心シルエットが構築された。数値としては従来型よりエンジンフード後端が40㎜、乗員のヒップポイントは前席が39㎜、後席が45㎜下げられている。

3ナンバーでも許容できるサイズ設定

サイズの拡大を最小限に収めるため、グローバルモデルとは異なるプラットフォームを採用。ホイー ルベースと車両の長さ、幅ともコンパクトに仕立てられた。全幅に関しては、すでに国内ユーザーに受け入れられた30型プリウスと同寸の1745㎜。

スタイリッシュでも良好な視界

従来型はAピラーを手前に引いて、フロントガラスの見開き角を大きくしていたが、新型はAピラーを寝かせてスタイリッシュさを追求。代わりにピラーの幅を細くし、三角窓も追加して、良好な視界を確保している。

フェンダー加工でトレッド拡大

コンパクトボディながらも、タイヤの四隅配置を強調した、 踏ん張り感のあるスタンスを実現。これを達成するために、リヤのフェンダーアーチのリム化などでトレッドを拡幅している。

後席の乗降性はワゴンが有利



後席はドアの開口角が小さく、大柄な人には乗降性はギリギリ。特にルーフが後ろ下がりになっているセダン(左写真)は、身長175㎝あたりから頭の動線にも気を遣う必要がある。ワゴン(右写真)は実測約2㎝高く、180㎝ぐらいまでなら許容できる。

新プラットフォームの採用で強化された骨格

プリウスやC-HRで実績のあるGA-Cプラットフォームをベースに構築された新型カローラのボディ。骨格構造の合理化に加え、結合部の形状進化や構造用接着剤の導入などで、従来型に対して捩り剛性は約67%高くなっている。

国内仕様のために外板のほとんどを専用設計

全幅の縮小には、ドアパネルや前後バンパーを縮小して対応。図では重なっていて見にくいが、フロントフェンダーも日本専用品だ。全長も短くなったため、ルーフパネルも変更になった。ボンネットはハッチバックがアルミ合金であるのに対し、セダンとワゴンは鋼板製だ。

生産技術と生産工場の協力で狭くなった全幅に対応

グローバルモデルに対して全幅を片側22 ㎜狭めた結果、工場でドアガラスを取り付ける際の作業性悪化が予想されたが、生産技術や工場部門と早い段階から検討を実施。内部構造も日本専用とすることで解決を図った。

室内のトリム類も国内向けの専用設計

フロントドアを従来型と同じ幅まで開けた際、乗降スペースも同等が確保できるよう、ドアトリムも日本専用に設計。腰の動線と重なるアームレスト後端部を16㎜追い込み、従来型同等のスペ ースを確保した。

高強度部材を効果的に配置

床まわりの骨格構造は、GA-Cプラットフォーム共通。前面衝突荷重はトーボードに配置されたホットスタンプ材(1500MPa級)の骨格を通じてサイドメンバーやサイドシルへと分散。サイドシルと後席足元のクロスメンバーには、超高張力鋼板が使用されている。

ドアミラーさえもつくり変え日本の環境にアジャスト

実質的な最外側となるドアミラー間の幅も、グローバルモデルより縮小。取り付け位置を16㎜高くし、ミラーハウジングも新設計(専用の金型が必要になる)。ミラー格納時の全幅は、グローバルモデルより34㎜狭くなった。

薄型レンジの鉄対策にも工夫がこらされる

セダンはリヤコンビネーションランプも専用設計。全長の縮小とトランク容量を両立させるため、グローバルモデル比で18㎜の薄型化を行なっている。バルブとレンズ面が近付くことによる熱対策には、上に放熱空間を確保して対策された。

各部の吸遮音対策により静粛性が高められた

ダッシュパネルには、エンジンルーム側にもキャビン側にも吸遮音材を配置。エンジンルーム下もアンダーカバーで覆い、放射音を抑えている。リヤフェンダーライナーは、吸音効果を持たせた不織布製だ。

グリルシャッターの採用でバイブリッドの性能を向上

頻繁にエンジンを停止するハイブリッドモデルには、フロントグリルに電動開閉式のシャッター機構を装備する。暖機の促進及び、エンジン停止時に水温低下を防ぐことと、空力性能を向上させるのが目的だ。

車体下面にも徹底した空力対策が施される

ハイブリッドモデルは床下のほぼ全面を空力カバーで覆っている。「a」で示されているのが、軸方向の渦を発生させ、ボルテックス・ジェネレーター効果で直進安定性を高める「エアロスタビライジングフィン」。

THSⅡ 1.8ℓハイブリッドシステムで走りと好燃費を両立

ハイブリッドパワートレーンは、プリウスやカローラスポーツと同様、ポート噴射のハイブリッド専用エンジン2ZR-FXEと2モーターを組み合わせたTHSⅡシステムを採用。実用燃費はプリウスに肉薄する。

■エンジン型式2ZR-FXE


種類・気筒数:1797


種類・気筒数:直列4気筒+モーター


弁機構:DOHC16バルブ


ボア×ストローク(㎜):80.5×88.3


エンジン最高出力(kW[㎰]/rpm):72[98]/5200


エンジン最大トルク(Nm[㎏m]/rpm):142[14.5]/3600


使用燃料:レギュラー


燃料タンク容量(ℓ):43


モーター最高出力(kW[㎰]):53[72]


モーター最大トルク(Nm[㎏m]):163[16.6]


リヤモーター最高出力(kW[㎰]):5.3[7.2]


リヤモーター最大トルク(Nm[㎏m]):55[5.6]

1.8ℓ4気筒自然吸気エンジン

1.8ℓ自然吸気エンジンは、従来型ワゴン「フィールダー」に搭載されていたものを継承。吸気弁連続可変リフト機構「バルブマチック」を装備し、高出力と低燃費を両立。200万円を切る価格から設定されているのも魅力的だ。

■エンジン型式2ZR-FAE


排気量(㏄):1797


種類・気筒数:直列4気筒


弁機構:DOHC16バルブ


ボア×ストローク(㎜):80.5×88.3


最高出力(kW[㎰]/rpm):103[140]/6200


最大トルク(Nm[㎏m]/rpm):170[17.3]/3900


使用燃料:レギュラー


燃料タンク容量(ℓ):50

スポーティな走りの1.2ℓターボ

「W×B」グレードに搭載される1.2ℓ直噴ターボエンジンは、6MTのみとの組み合わせ(スポーツのみCVTも設定あり)という走りに特化した設定。C-HRやカローラスポーツに搭載されるのと同じもので、最大トルクは2.0ℓ相当、最高出力は1.6ℓ相当。

■エンジン型式8NR-FTS


排気量(㏄):1196


種類・気筒数:直列4気筒


弁機構:DOHC16バルブ直噴ターボ


ボア×ストローク(㎜):71.5×74.5


最高出力(kW[㎰]/rpm):85[116]/5200-5600


最大トルク(Nm[㎏m]/rpm):185[18.9]/1500-4000


使用燃料:レギュラー


燃料タンク容量(ℓ):50

気持ち良いシフトチェンジを提供するi-MT

MTには、ドライバーのシフト操作を検知してエンジン回転数を自動的に合わせる制御を導入。ギヤを入れる操作でシンクロナイザーが作動し、インプットシャフトの回転数が変わると、これを「変速操作」と判断。ドライバーがクラッチをつなぐ前にエンジン回転数を同調させ、ギクシャクしない変速を実現している。

プラットフォームの進化に合わせてサスも進化

プラットフォームが1クラス上になったことから、サスペンション形式も1クラスアップグレ ード。フロントは入力分離マウントのストラット方式、リヤにはダブルウイッシュボーン式を採用する。

視覚情報に注目したサスセッティング

サスペンションのチューニングには、「視覚情報に注目したセッティング」という新たなメソッドを導入。挙動の絶対量を下げるのではなく、視覚情報のブレを少なくすることで、ドライバーが無意識に対応できる動きをつくり込んでいる。

車両挙動と感覚の整合で操舵応答性をチューニング

操舵応答性の点では、ピッチ挙動とロール挙動の時間軸における関連に注目。体感感度も視覚感度も低いロールに対し、視覚感度の高いピッチ挙動のタイミングを適正化することで、ドライバーの意図とクルマの応答「感」の整合を図った。

ステアリングフィールも緻密にセッティング

ステアリング系には、摺動部に起因するクーロン摩擦と、タイヤも含めたゴム類に起因する弾性摩擦があるが、新型カローラでは弾性摩擦に起因する実舵角の遅れを補正する制御を導入。操舵のダイレクト感を向上させた。

数値に現れない領域の減衰力も新開発オイルで制御

ダンパーにはカローラスポーツから導入された技術を水平展開。圧力を受けた時にフリクションが増える新オイルを使用し、油圧が応答しない超微低速領域の減衰力を高めた。しかも旋回時に横力が加わった時だけ減衰(摩擦)力が増大するため、乗り心地に悪影響を与えない。

凍りついたウインドウも素早く溶かして、すぐ発進!



「霜取りウォッシャー」をディーラーオプションに設定。前回走行時に温めたウォッシャー液を魔法瓶構造で保温し、次回使用時の昇温を早めたのがミソ。プラットフォーム上の既存穴を利用して取り付けるため、今後は他車型にも展開を図る予定とのことだ。

空気洗浄機として機能してくれるエアコン

エアコンを空気清浄機として働かせるのが、エアクリーンモニター。エアコン作動時にクリーンスイッチを押すと作動を開始し、センサーがダストを検知すると、エアコンの風量を高めて空気の循環量を増やし、エアコンフィルターの稼働率を高める。

光学センサーで微細な塵の粒子を監視する



追加したのは光学式のダストセンサーと表示パネルだけで、既存のエアコンの浄化能力を有効活用。粒径1〜10㎛のダストに対する感度が高く、PM2.5が問題視されている中国市場では好評を博しているそうだ。

風景の自動制御で素早く綺麗に

既存エアコンの空気清浄機能を利用しているため、 清浄度の最終到達点は変わらないが、風量を自動的に増すことで、浄化速度が速まるのがポイント。同等の清浄度に達するまでの所要時間は、約半分になっている。

さまざまなリクエストにオペレーターが対応

ディプレイオーディオにはDCM(車載通信機)を標準装備しており、安心&便利なコネクティッドサービスを5年間基本利用料無料で使用できる。ヘルプネットによる事故時の通報サービスや、多彩な機能を持つマイカーサーチは魅力的。スマホではなく、純正ナビを利用したいオーナーには2種のナビキットが設定されている。

ドライブスタートコントロール

シフト操作時における急発進、急加速を抑制し、衝突時の被害軽減に寄与する、誤発進抑制機能。後退時に衝突した際など、アクセルが踏み込まれた状態でシフトをDへ入れても表示で注意を促すとともに出力を抑え、急発進を抑制する。

スマホの連携で便利さがアップする

国内トヨタ初となる「ディスプレイオーディオ(DA)」を全車に標準搭載した。これにより、スマートフォンと連携した「TCスマホナビ」や「LINEカーナビ」などのナビアプリのほか、音楽、ラジオアプリなどもSmartDeviceLink(SDL)を介してDA上で使用できる。

レーントレーシングアシスト

一部グレードにレーントレーシングアシストを搭載。車線の中央を走行するために必要なステアリング操作の一部を支援。車線をはみ出しそうな時にはブザーとディスプレイ表示に加えて、ステアリング操作の一部も支援してくれる。

プリクラッシュセーフティ

前方の車両や歩行者(昼夜)、自転車運転者(昼)を検出し、警報ブザーとディスプレイ表示で衝突の可能性を知らせてくれる。ブレーキを踏めなかった場合にはプリクラッシュブレーキで衝突を回避または被害軽減をサポート。

ロードサインアシスト

最高速度や一時停止など、うっかり見逃してしまうと交通違反につながってしまう交通標識を車両のカメラが認識し、マルチインフォメーションディスプレイに表示してくれる。速度規制を超えた場合などには表示とブザーで警告を発する。

全車速対応クルーズコントロール

ミリ波レーダーと単眼カメラによって前走車に追従するオートクルーズ。ガソリンターボ車以外の「W×B」グレードと、「S」グレード、「G-X」グレード(ハイブリッド車)は完全停止にまで対応する全車速追従機能が付いた。

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