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祝!ノーベル化学賞受賞!——② リチウムイオン vs ニッケル水素


旭化成・名誉フェローの吉野彰氏が、ノ=ベル化学賞を受賞された。リチウムイオンバッテリーの開発の功績によるもの。おめでとうございます。


90年代初頭にニッケル水素(Ni-MH)電池とリチウムイオン(Li-ion)電池が生まれ、二次電池の世界が一変した。それぞれに長所と短所があり、現在は適材適所で使用されている。その違いは何か。


TEXT:牧野茂雄(MAKINO Shigeo) 

 乾電池のように「一度だけの使い切り」という電池は一次電池、充電して繰り返し使うことができるものは二次電池と呼ばれる。二次電池は正(+)極と負(−)極にそれぞれ異なる極材をあてがい、これを電解液に浸して化学反応を引き起こすことで発電する。セパレーターは単純に正極と負極を接触させないための「仕切り」であり、電子はこの中を自由に移動できる。充電時は正極から負極へ、放電時は負極から正極へと電子が移動する。この「往復」が可能な点が二次電池の特徴だ。市販のアルカリ乾電池などに「充電しないでください」と注意書きがある理由は、充電方向への電子の移動ができない「非可逆的反応」構造であり、外部から電圧を掛けると過熱などの恐れがあるためだ。




 二次電池は、極材にどのような材料を使うかによってニッケルカドミウム、ニッケル水素、リチウムイオンといった種別が生まれる。一般に流通可能な二次電池で重量当たりの容量密度(単位はWh/kg)が高いのはリチウムイオン系であり、ニッケル水素がその次、ニッケルカドミウムがその次、もっとも古くから存在する鉛酸がいちばん小さいという順番である。




 ただし、電池の性能はこの容量密度だけでは語れない。瞬間的にどれくらいの電力を放出できるかという「出力密度」、その出力をどれくらいの時間だけ維持できるかというエネルギー密度、これらの重量・大きさ当たりの特性、コスト、入手しやすさ、寿命などさまざまな指標をもとに、「この用途にはどんな二次電池がいいのか」が決定される。

リチウムイオン二次電池の構造。

 現時点で最強のリチウムイオン二次電池は、電極間をリチウムイオン(Li+)だけが移動し、極材そのものは化学変化を起こさないという特徴を持つ。+(陽)イオンは+の電荷を帯びた原子(団)であり、電子とは違う。ニッケル水素電池は化学変化を利用するため、充電/放電、つまり酸化/還元を繰り返すうちに電子が出入りする「棚」の構造が崩れてしまい、これが劣化の原因になる。リチウムイオン二次電池もイオンの移動を何百回も繰り返せば極材が表面から劣化するが、これは充電そのものによる化学変化ではない。極材にストレスを貯めないような充放電と電解液成分の工夫で表面劣化を抑え込み、寿命を延ばすことができる。その手段のひとつが電池内の温度上昇を抑えること、つまり目一杯の充放電を避けることだ。現在、この制御ソフトウェアは非常に進んでいる。

二次電池の充放電についての考え方。さまざまな実験から、SOC(ステート・オブ・チャージ=充電状態)を広くしないほうが、その電池が生涯に溜め込むことのできる容量が多くなることがわかった。その順番はC>B>Aであるり、ハイブリッド車はほとんどがCである。Aの使い方だと充電回数はせいぜい1000回ほどだが、Cの使い方だとその10倍程度まで稼げると言われている。

市販のニッケル水素電池の構造。繰り返し使えるニッケル水素電池の内部構造は左ページのリチウムイオン電池とほぼ同じであり、正負極材の間に電解液が染み込んだセパレーターをはさんでいる。うまく使えばなかりの長寿命だが、満充電のまま放置すると寿命は縮まり、「少し使ってすぐ充電」を繰り返すと容量が減るメモリー効果が現われる。だから純正充電器との組み合わせがベスト。

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