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アルミが37%スチール63%のハイブリッドボディ: タイカンのテクノロジー徹底解説4


ポルシェ初のフル電動スポーツカー、「タイカン(TYCAN)」。スポーツカーの雄たるポルシェがプライドを賭けて開発した電動スポーツカーだけに、そこに投入されたテクノロジーは、想像を遥かに超えるものだった。ポルシェ・タイカンのテクノロジーを徹底解説する。第4回は「ボディ編」だ。




TEXT◎世良耕太(SERA Kota) PHOTO &FIGURE◎PORSCHE

最新のボディ技術の粋を集めたハイブリッドボディ

 タイカンのボディはアルミとスチールのミックスマテリアルだ。カーボンファイバーは使っておらず、その理由を開発エンジニアは、「アルミとスチールの組み合わせに関して多くの知見を持っているので、必要性を感じなかった。カーボンファイバーは軽いが、変形する性質を備えておらず、成形に難がある」と説明した。

Bピラー、ルーフサイドレール、クロスメンバーなどはホットスタンプ材を使う。フード、ドアアウターなど、いわゆる「ふた物」はアルミ、サスペンションタワーは鋳造アルミを使う

写真を見るとドアインナーパネルもアルミを使うようだ

 ストラットマウント、アクスルマウント、リヤのサイドメンバーは鋳造アルミ。タンパーマウントは鍛造アルミ。フロントサイドメンバーはアルミのシェル構造。1941mmのサイドシルにはアルミ押出材を使用。Aピラー、Bピラー、サイドルーフフレーム、シートクロスメンバーは熱間プレスのスチール。バルクヘッドクロスメンバーには、マンガンボロン鋼を使っている。フロントとリヤエンドを除き、アウタースキンはアルミ製で、325mmの深さを持つワンピースのサイドパネルは生産技術上のチャレンジだったという。ホワイトボディの重量は320kgだそう。

いわゆるハイブリッドボディでアルミ板材(おもにボディパネル)が18%、アルミの押出材が11%、鋳造アルミが8%で、37%がアルミ、63%がスチールのボディだ

多彩な接合技術を使う。抵抗スポット溶接が3139箇所、MAG溶接が5.7m、MIG溶接が7.5m、クリンチングが734箇所、セミチューブ・パンチングリベットが1642箇所、ドリルドスクリューが714箇所、ソリッド・パンチングリベットが16箇所、接着剤が195m、ローラーヘミングが8.5m、FSW(摩擦攪拌接合)が100箇所と、まさに接合技術のデパート状態だ

バッテリーフレームは28本のボルトでボディと接合される

 アルミ製のバッテリーフレーム(150kg)は28本のボルトでボディに固定され、構造部材として機能する。フロント、サイド、リヤ方向の衝突の際は、バッテリーフレーム内に配されたアルミ製のストラクチャーがロードパスとして機能。スチール製のプレートがバッテリーモジュールと冷却回路を衝撃から守る構造になっている。

タイカンは世界中の安全基準をクリアしている

CAE(Computer Aided Engineering)によるシミュレーション数はパナメーラ開発時を大きく上回っている

 当然のことながら、安全性に関しては世界中(アメリカ、ヨーロッパ、中国、ロシア、韓国、オーストラリア、中東、日本など)の異なる基準を満たすことが目標だった。前面衝突の試験では、衝撃エネルギーをフロントセクションで吸収し、ドアはまったく影響を受けず、操舵が可能な状態を保つ。これを実現するのが、デフォーマブルボディ(変形するボディ)とリジッドバッテリーフレーム(変形しないバッテリーフレーム)の組み合わせだ。高い衝突安全性能を実現するため、パターンによってはパナメーラの2倍以上のシミュレーションを行なったという。

新開発のガラスルーフは、5層構造になっている。各層を厚さを合わせると5.77mmになる

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