ポルシェ初のフル電動スポーツカー、「タイカン(TYCAN)」。スポーツカーの雄たるポルシェがプライドを賭けて開発した電動スポーツカーだけに、そこに投入されたテクノロジーは、想像を遥かに超えるものだった。ポルシェ・タイカンのテクノロジーを徹底解説する。第4回は「ボディ編」だ。
TEXT◎世良耕太(SERA Kota) PHOTO &FIGURE◎PORSCHE
最新のボディ技術の粋を集めたハイブリッドボディ
ストラットマウント、アクスルマウント、リヤのサイドメンバーは鋳造アルミ。タンパーマウントは鍛造アルミ。フロントサイドメンバーはアルミのシェル構造。1941mmのサイドシルにはアルミ押出材を使用。Aピラー、Bピラー、サイドルーフフレーム、シートクロスメンバーは熱間プレスのスチール。バルクヘッドクロスメンバーには、マンガンボロン鋼を使っている。フロントとリヤエンドを除き、アウタースキンはアルミ製で、325mmの深さを持つワンピースのサイドパネルは生産技術上のチャレンジだったという。ホワイトボディの重量は320kgだそう。
アルミ製のバッテリーフレーム(150kg)は28本のボルトでボディに固定され、構造部材として機能する。フロント、サイド、リヤ方向の衝突の際は、バッテリーフレーム内に配されたアルミ製のストラクチャーがロードパスとして機能。スチール製のプレートがバッテリーモジュールと冷却回路を衝撃から守る構造になっている。
当然のことながら、安全性に関しては世界中(アメリカ、ヨーロッパ、中国、ロシア、韓国、オーストラリア、中東、日本など)の異なる基準を満たすことが目標だった。前面衝突の試験では、衝撃エネルギーをフロントセクションで吸収し、ドアはまったく影響を受けず、操舵が可能な状態を保つ。これを実現するのが、デフォーマブルボディ(変形するボディ)とリジッドバッテリーフレーム(変形しないバッテリーフレーム)の組み合わせだ。高い衝突安全性能を実現するため、パターンによってはパナメーラの2倍以上のシミュレーションを行なったという。