教習車でもお馴染みのCB400スーパーフォア(SF)は、4半世紀近くも基本設計が変わらずに進化を続ける、バイク界の重鎮だ。2017年のマイチェンで大幅に戦闘力をアップし、熟成を遂げつつあるこのモデルの魅力にあらためて迫る!
REPORT:川越 憲(KAWAGOE Ken)
PHOTO&EDIT⚫️佐藤恭央(SATO Yasuo)
キャンディークロモスフィアレッド・アトモスフィアブルーメタリック……911,520円
ダークネスブラックメタリック……868,320円
貴重な4発ネイキッドは27年のロングセラー!
PROJECT BIG-1のコンセプトの下、1992年に登場したCB400SUPER FOUR(以下・SF)は、兄貴分に当たるCB1000SFと同年に発売された。大型二輪免許が教習所で取得できるようになり、大型バイク市場が盛り上がる中、メーカーもリッタースポーツバイクの販売に力を入れ始めている中でのリリースだったが、CB400SFはライバルを寄せ付けない性能と乗りやすさに加え、普通二輪免許の教習車として広く採用されて、多くのライダーに馴染みがあったことから、現在まで安定したセールスを続けているロングセラーだ。
実質はCB-1の後継機であり、当時のネイキッドブームを築いたゼファーに真っ向勝負! 翌年以降に登場するXJR400やGSX400インパルスとともに90年代のミドルネイキッドの文化を根付かせた立役者である。
さてこのCB-SFは、CB1300シリーズと同じく、ハーフカウル付きのCB400SUPER BOLD’OR(以下・SB)をラインナップするほか、マイナーチェンジを重ねて熟成を深めてきた。コンセプトが同じなので、CB1000SFやCB1300SBと同様のスタイリングや仕様変更も同じくする部分が多く、現在は400ccクラスでライバルがいないと言えるほどの成功を収めている。現行モデルは2017年のマイナーチェンジで、3psパワーアップし、小型2室構造のサイレンサーで重低音の効いた排気サウンドを実現。また、ヘッドライトをLED化するなど、装備面も充実させた。
取り回しやまたがった時など、なにも気負いがいらないのだが、絶対的な安心感がある。CB400SFというバイクをよく見慣れて、何度も試乗体験があることもその理由だが、熟成を重ねたライディングポジションをはじめ、メーター周り、ミラーの位置まで違和感がないことも挙げられるだろう。最近のホンダ車特有のホーンスイッチがウインカースイッチの上に位置するレイアウトも、左右に若干ずらされて配置されているので自然に操作できる。
CB400SFの特徴を一言で表現すると「許容範囲が広い」ことに尽きる。ライダーのライディングスタイルから、走るシーンまで、相応の使い方が出来るのだ。通勤や通学に使用しても、サーキットでのスポーツランにおいてもライダーなりの満足感が得られる。そんな懐の深さが、長く支持されてきた理由のひとつだろう。実際に、前輪に積極的に荷重をかけた走り方も、後輪を軸にした走り方でもハンドリングがあまり変わらず、低速から粘り、スムーズに加速するエンジンは、ワインディングで多少スロットルワークを雑にしても破綻なく走行できる。
ワインディングでの撮影時に雨が降ってきて、路面はウエットの状態だったが、しっかりとタイヤに荷重をかけながら走ることができたのは、車体のバランスが良く、トルクの出方がフラットでコントロールしやすい特性のおかげでもあるだろう。
この、街中でもサーキットでも満足できる性能は、クラス唯一のV-TECエンジンによるところも大きい。バルブ作動タイミングを低中回転域と高回転域で切り替えることで、低回転域ではトルクを重視しながら、高回転では気持ちよく回り、加速の伸びもついてくる特性を得ている。この切り替わり特性がスムーズで、乗っていると排気音が変わったなと分かるのだが、特に意識すこともなくライディングに集中できる。そのため、見た目に派手さは無くツーリングスポーツ的な位置付けだが、誰が乗ってもワインディングやサーキットで速く走らせることができるはずだ。
また、約300km走った際の燃費は22~23km/ℓとほぼ諸元通り(WMTCモード値)でランニングコストもまずまず。様々なスポーツで「いい道具は所有者のスキルアップをサポートしてくれる」と言われるが、これからもCB400SFは、まさにそのいい道具であり続けるだろう。
足つきチェック(ライダー身長182cm)
ライダーの体重(70kg)ではリヤサスペンションの沈み込みが大きめなので、足着き性は良好ステップに足を乗せた時にヒザの曲がりが大きく余裕があるためニーグリップがしやすい。ヒザとハンドル位置が近いので数値以上に車体がコンパクトに感じる。
⚫️ディテール解説
シート下は書類や車載工具スペースのほか、レインウエアなどが収納できるインナーボックスを確保。インナーボックスの最大積載量は3kg。
◼️主要諸元◼️
車名・型式:ホンダ・2BL-NC42
全長(mm):2,080
全幅(mm):745
全高(mm):1,080
軸距(mm):1,410
最低地上高(mm):130
シート高(mm):755
車両重量(kg):201
乗車定員(人):2
燃料消費率*1(km/L):
国土交通省届出値定地燃費値 (km/h)…31.0(60)〈2名乗車時〉
WMTCモード値(クラス)…21.2(クラス3-2)〈1名乗車時〉
最小回転半径(m):2.6
エンジン型式:NC42E
エンジン種類:水冷4ストロークDOHC4バルブ直列4気筒
総排気量(㎤):399
内径×行程(mm): 55.0×42.0
圧縮比: 11.3
最高出力(kW[PS]/rpm):41[56]/11,000
最大トルク(N・m[kgf・m]/rpm):39[4.0]/9,500
燃料供給装置形式:電子式〈電子制御燃料噴射装置(PGM-FI)〉
始動方式:セルフ式
点火装置形式:フルトランジスタ式バッテリー点火
潤滑方式: 圧送飛沫併用式
燃料タンク容量(L):18
クラッチ形式:湿式多板コイルスプリング式
変速機形式 常時噛合式6段リターン
変速比:
1速…3.307
2速…2.294
3速…1.750
4速…1.421
5速…1.240
6速…1.130
減速比(1次/2次):2.171/2.933
キャスター角(度):25゜ 5′
トレール量(mm):90
タイヤ:
前…120/60ZR17M/C(55W)
後…160/60ZR17M/C(69W)
ブレーキ形式:
前…油圧式ダブルディスク
後…油圧式ディスク
懸架方式:
前…テレスコピック式
後…スイングアーム式
フレーム形式:ダブルクレードル
■製造事業者/本田技研工業株式会社
■ライダープロフィール

1967年生まれ。有限会社遊文社・代表取締役にしてバイク誌を中心に活動するフリーライター・編集。BiGMACHINE(内外出版社)や培倶人(エイ出版社)など多岐に渡り活躍中。愛車はBMW R1150GS・BUELL XB9SX・TZR250(1KT)、NSR250R(MC18)etc.。
趣味は草野球とバレーボールとアニメ(主に80年代)と映画鑑賞(16mm映写技師免許所持)。