
ポルシェといえば911。911といえばスポーツカーの代表選手だが、そのポルシェも近年ではスポーツカーよりSUVの方が売れている。北米での911の人気の推移と、「ポルシェ・スポーツカーとSUVの販売台数が逆転したか?」をデータをもとに見ていこう。
21世紀歴代911で売れたのはどのモデル?
スポーツカー王国アメリカで売れているスポーツカーは? という記事を書くためにポルシェ911、そのライバルたちの販売データを調べてみた。

そこで見えたものは、ポルシェ911というブランドの強さと、コルベット、マスタングというアメリカンスポーツカーの人気ぶりだった。
今回は、「21世紀に入ってからの911で人気が高かったのはどのモデルか?」というところからスタートしよう。
996型(1997年ー2004年)

21世紀初頭に販売されてた911は、1997年デビューの996型。初めての水冷エンジン911だ。2002年には不評だった涙目のヘッドランプデザインが変更になっている。
996型のワールドワイドでの生産台数は、17万5262台だ。
997型(2004年ー2011年)

2004年デビューの997型は、2011年まで売られたが、2008年9月のリーマン・ショックの大波を受けて販売台数を大きく落としている。が、これは997型のせいではなく、市況が極めて悪かったからだ。
997型のワールドワイドでの生産台数は、21万3004台だ。
991型(2011年ー2019年)

そのあとを受けて2011年に登場した991型は、高い人気を維持することに成功。2019年に販売開始された新型992型が、(ポルシェ・ファンでなかったら)991型と見分けがつかないほど似ているのは、991型が成功していたから、と言える。もっとも、911シリーズの場合は、登場以来高い人気を維持し続けているから、スタイリングが大きく変わらないのだが。
991型のワールドワイドでの生産台数は、21万7930台だ。

現代のポルシェを支えているのは、スポーツカーではなくSUVだ

「現代のポルシェを支えているのは、スポーツカーではなくSUVだ」と良く言われる。せっかくなので、それを検証してみよう。
21世紀初頭、北米での高級SUV市場を牽引していたのは、レンジローバーだ。レンジローバーは90年代後半から北米で売れていた。1999年にはオール・ランドローバーで約3万台。2000年代も2001年-2010年の10年間で年間平均3万7400台売れている。
この美味しい市場に目を向けたのは、BMWである。90年代、ランドローバー社の親会社はBMWだったこともあって、BMWは高級SUVのノウハウを吸収、2000年にランドローバー部門をフォードに売却するのとほぼ同じタイミングでX5をデビューさせた。2000年には北米で2万6720台を売り、2002年には4万2742台を売り上げている。ちなみに、X5は、2001-2010年の10年間で年平均3万5370台を北米で販売している。

この「美味しそうな市場」にポルシェがカイエンで参入したのが、2002年の初代955型である。このマーケットに食い込みたいと考えていたフォルクスワーゲンの思惑もあり、VWトゥアレグと共通のプラットフォームを使って開発された。
初代カイエンは2004年に1万8000台を売り上げるヒットとなったが、その後販売は低下。2006年には初代後期型957型へスイッチしている。「大ヒット」と言えるのは、2010年に登場した2代目958型だ。この2代目。リーマン・ショック後に販売も立ち直り、2013年には年間1万8500台を売り、その後も年間1万5000台程度を北米で売り上げている。

ポルシェが次に目をつけたのが、カイエンより小型のSUVクラスへの参入だ。それが2014年に発売したマカンだ。発売2年後の2016年には北米で1万9000台以上売り、北米で最も売れたポルシェになった。その後もそのポジションを確固たるものとしている。
この間、スポーツカー部門は、ボクスターに加えてケイマンを投入。911、ボクスター、ケイマンの3モデル構成となった。パナメーラをどのカテゴリーに入れるかは議論が分かれるところだが、2ドアクーペでないのは明らかなので、今回は4ドアということでSUV陣営に入れる。パナメーラは2009年に初代がデビュー、16年に2代目にスイッチしている。ボクスターとケイマンを足した数よりは売れているが、911には敵わない、というのがパナメーラの販売台数だ。


グラフを見てほしい。
スポーツカー:911+ボクスター+ケイマン
4ドア&SUV:カイエン+マカン+パナメーラ
である。
はっきり4ドア&SUVがスポーツカーを上回ったのは2010年である。その差は、年々広がりいまやスポーツカーの3倍も4ドア&SUVが売れている。ポルシェが「スポーツカーではなくてSUVメーカーだ」と言われる所以だ。
パナメーラをスポーツカーに分類すると、2014年が分水嶺になる。
911+ボクスター+ケイマン+パナメーラ=2万3478台
カイエン+マカン=2万3446台
と拮抗し、2018年にはそれが
911+ボクスター+ケイマン+パナメーラ=2万2965台
カイエン+マカン=4万1237台
とほぼダブルスコアになる。