首都高速道路(首都高)は大都市の間を縫うように道が作られ、その構造はかなり複雑です。都心環状線から放射状に道が伸び、分岐や合流がいっぱい。しかも左側だけでなく、右からの分岐や合流もあり、不慣れな人を困惑させます。合流レーンも短いですし、そのうえカーブやトンネルもたくさん。そんな首都高ですが、スズキ「カタナ」なら、圧倒的な加速性能や制動力で余裕を持って走れます。
REPORT●青木タカオ(AOKI Takao) PHOTO●山田俊輔(YAMADA Shunsuke)
KATANA……1,512,000円
トルクフルだから“青い鳥”のごとく快走!!
結論から言ってしまいますと、「カタナ」の身のこなしの軽さと動力性能なら何ら問題ありません。クルマの流れをリードできますし、車線変更もクイックかつスムーズ。急カーブも旋回性の良さから、落ち着いて曲がることが可能です。アップライトなハンドルで、ライディングポジションも上半身が起きて視線が高く、クルマが多くても先を見通せます。
そういえば「あいつとララバイ」にも“首都高の青い鳥”こと初代ナナハン・カタナが登場し、“ゼッツー”に乗る主人公の研二くんとバトルしていましたね。筆者の部屋の本棚にあるコミックスを引っ張り出して、ついつい読みふけってしまいます。
あっ、またしてもバイクブーム世代にしか通じない古い話をしてしまいました。申し訳ないです。「あいつとララバイ」は楠みちはる先生の漫画でして、1981年から1989年まで週刊少年マガジン(講談社)にて連載されて人気を博し、実写版やアニメで映画化もされているので、もしよろしければチェックしてみてください。
ちなみに「GSX-750S カタナ」に乗る“青い鳥”は第30巻に出てきますが、くれぐれも首都高でバトルなんてしてはイケマセン。
話しがいつも逸れてばかりですが、新型「カタナ」で首都高を走ると、エンジンレスポンスの鋭さがありがたいと感じました。特に中央環状線をキビキビ走ろうとすれば加速と減速の繰り返しになりますから、右手のスロットルワークに機敏に反応してくれないと軽快に走れません。
その点、スーパースポーツ「GSX-R1000」譲りの並列4気筒DOHC4バルブエンジンはトルクフルで、首都高で多用する低中速レンジが力強く、まさにピッタリではないかと感じました。
これは歴代「GSX-R1000」のなかでも、特に「ダッシュが強烈」と定評のある“K5エンジン”と呼ばれる2005年のパワーユニットを「カタナ」はベースにしているからなのです。“K5エンジン”はスーパースポーツ用のパワーユニットにしてはロングストローク設計で、高回転の伸びはもちろん加速性能も重視した特性になっています。「カタナ」はストリートバイクですからこれが丁度良く、専用セッティングを新たに施し心臓部となったのです。
首都高の洗礼も高性能なブレーキで回避
そして首都高でありがちなのが、ブライドコーナーの先で渋滞し、クルマが停止していること。あるいは出口を降りていくと、すぐに停止線があって、さらに急カーブだったりするから厄介です。こんなシーンに備えてスピードの出しすぎは厳禁ですし、ブレーキングが遅れるのも要注意ですが、強力なストッピングパワーとタッチの良好な操作性を持つブレーキを備える「カタナ」なら心配は要りません。
フロントはブレンボ製ラジアルマウント対向4ピストンモノブロックキャリパーと310mmフローティングマウントディスクの組み合わせ。リヤも対向2ピストンキャリパーと250mmディスクと申し分ありません。
また、バイクの減速はブレーキだけに頼ることなく、エンジンブレーキも重要ですが、スリッパークラッチを搭載していることで、コーナー進入時なども後輪のホッピングなどを気にすることなくシフトダウンすることができたのも走りに余裕をもたらしました。もちろんABSを標準装備ですし、慌てることなくスピードをきっちり落とせるのは、忙しない首都高を走るときの安心材料となったことを報告しておきます。
首都高はトンネル区間も多く、周囲が暗くなると瞬時にマルチファンクションディスクプレイの表示が反転して見やすくなったのも感心しました。交通量の多い中、メーターを凝視することはできませんが、視界の中で欲しい情報が直感的にわかるようになっています。エンジンインジケーターランプが上部にあり、任意の回転数で点灯するようプログラムを可能とするなど機能性に優れたメーターです。
都会を駆け抜ける首都高は便利ですし、安全に走ればバイクにも快走路となるでしょう。それは名古屋高速や阪神高速、福岡や北九州の都市高速などにも言え、新型「カタナ」ならなおさらでした。
主要諸元
型式 2BL-GT79B
全長 / 全幅 / 全高 2,130mm / 835mm / 1,110mm
軸間距離 / 最低地上高 1,460mm / 140mm
シート高 825mm
装備重量 ※1 215kg
燃料消費率 ※2 国土交通省届出値:
定地燃費値 ※3 23.8km/L(60km/h) 2名乗車時
WMTCモード値 ※4 19.1km/L(クラス3、サブクラス3-2) 1名乗車時
最小回転半径 3.4m
エンジン型式 / 弁方式 T719・水冷・4サイクル・直列4気筒 / DOHC・4バルブ
総排気量 998cm3
内径×行程 / 圧縮比 73.4mm × 59.0mm / 12.2
最高出力 ※5 109kW〈148PS〉 / 10,000rpm
最大トルク ※5 107N・m〈10.9kgf・m〉 / 9,500rpm
燃料供給装置 フューエルインジェクションシステム
始動方式 セルフ式
点火方式 フルトランジスタ式
潤滑方式 圧送式
潤滑油容量 3.4L
燃料タンク容量 12L
クラッチ形式 湿式多板コイルスプリング
変速機形式 常時噛合式6段リターン
変速比
1速 2.562
2速 2.052
3速 1.714
4速 1.500
5速 1.360
6速 1.269
減速比(1次 / 2次) 1.553 / 2.588
フレーム形式 ダイヤモンド
キャスター / トレール 25°/ 100mm
ブレーキ形式(前 / 後) 油圧式ダブルディスク(ABS) / 油圧式シングルディスク(ABS)
タイヤサイズ(前 / 後) 120/70ZR17M/C(58W) / 190/50ZR17M/C(73W)
舵取り角左右 29°
乗車定員 2名
排出ガス基準 平成28年国内排出ガス規制に対応
※1:装備重量は、燃料・潤滑油・冷却水・バッテリー液を含む総重量となります。※2:燃料消費率は、定められた試験条件のもとでの値です。お客様の使用環境(気象、渋滞等)や運転方法、車両状態(装備、仕様)や整備状態などの諸条件により異なります。※3:定地燃費値は、車速一定で走行した実測にもとづいた燃料消費率です。※4:WMTCモード値は、発進、加速、停止などを含んだ国際基準となっている走行モードで測定された排出ガス試験結果にもとづいた計算値です。走行モードのクラスは排気量と最高速度によって分類されます。※5:エンジン出力表示は「PS/rpm」から「kW/rpm」へ、トルク表示は、「kgf・m/rpm」から「N・m/rpm」へ切り替わりました。〈 〉内は、旧単位での参考値です。●車体色はモニター表示のため、実物とは異なる場合があります。●仕様および装備は予告なく変更する場合があります。●掲載写真には、合成または特別に許可を得て撮影したものが含まれます。