5/31、東京都公安委員会が、4/19に発生した池袋交通死傷事故において暴走車を運転していたドライバーの運転免許を取り消す行政処分を決定したということを、報道機関を通して発表した。死傷者を出したことを考えれば、それは妥当な処分と言えるのだが、「免許取り消し」はあくまでも行政処分。肝心の刑事処分の方は一体、どうなっているのかを検証してみよう。なんと、不起訴処分(実質的に無罪)になる可能性もあるというのだ!
なぜ「意見の聴取」ではなく「聴聞」が行われたのか?
★道路交通法
第百四条 公安委員会は、第百三条第一項第五号の規定により免許を取り消し、若しくは免許の効力を九十日(公安委員会が九十日を超えない範囲内においてこれと異なる期間を定めたときは、その期間。次条第一項において同じ。)以上停止しようとするとき、第百三条第二項第一号から第四号までのいずれかの規定により免許を取り消そうとするとき、又は同条第三項(同条第五項において準用する場合を含む。)の処分移送通知書(同条第一項第五号又は第二項第一号から第四号までのいずれかに係るものに限る。)の送付を受けたときは、公開による意見の聴取を行わなければならない。
この規定により、「意見の聴取」行われたのなら何も問題は無いのだが、もし報道どおり「意見の聴取」ではなく「聴聞」が適用されたとしたら、話は違ってくる。
★道路交通法
第百四条の二 公安委員会は、第百三条第一項又は第四項の規定により免許の効力を九十日以上停止しようとするとき(同条第一項第五号に係る場合を除く。)は、行政手続法第十三条第一項の規定による意見陳述のための手続の区分にかかわらず、聴聞を行わなければならない。
注目すべきは、「意見の聴取」に関する条文にはない「第百三条第一項(又は第四項)の規定により」と言う部分。それは以下の通りだ。
★道路交通法
第六節 免許の取消し、停止等
(免許の取消し、停止等)
第百三条 免許(仮免許を除く。以下第百六条までにおいて同じ。)を受けた者が次の各号のいずれかに該当することとなつたときは、その者が当該各号のいずれかに該当することとなつた時におけるその者の住所地を管轄する公安委員会は、政令で定める基準に従い、その者の免許を取り消し、又は六月を超えない範囲内で期間を定めて免許の効力を停止することができる。ただし、第五号に該当する者が前条の規定の適用を受ける者であるときは、当該処分は、その者が同条に規定する講習を受けないで同条の期間を経過した後でなければ、することができない。
一 次に掲げる病気にかかつている者であることが判明したとき。
イ 幻覚の症状を伴う精神病であつて政令で定めるもの
ロ 発作により意識障害又は運動障害をもたらす病気であつて政令で定めるもの
ハ イ及びロに掲げるもののほか、自動車等の安全な運転に支障を及ぼすおそれがある病気として政令で定めるもの
一の二 認知症であることが判明したとき。
以下略
つまり、警察(公安委員会)が、ドライバーがなんらかの精神異常状態であったと判断したために、「意見の聴取」ではなく「聴聞」が行われたとも捉えることが出来るのだ。もし、実際に、例えばアルツハイマー型の認知症と診断され、責任能力がないと判断されれば、不起訴、あるいは起訴されたとしても、罰が軽減される可能性が十分出てくる。事実、数年前に88歳の高齢ドライバーが軽トラで小学生の列に突っ込み、7人が死傷するという事故が起こったが、結果的にそのドライバーは認知症と判断され、不起訴処分になっているのだ。
もちろん、すべては推測に過ぎず、また、一般的に「意見の聴取」と「聴聞」が混同されている状況を考えれば、ただ報道が勘違いしただけなのかもしれないが、いずれにしても、事故から2ヶ月が経とうとしている今になっても真相がはっきり見えない状況は、まさに国民の疑惑をあおるばかりであることは間違いない。