本格オフローダーではないRAV4に3タイプの4WDシステムが採用されたのは新型RAV4のトピックのひとつだ。特に、後輪に最大80%までトルクを配分するE-Four(ハイブリッド車)と、新採用されたダイナミックトルクベクタリングAWDには要注目。いずれも、ラフロードや雪道で積極的にアクセルを踏んでいきたくなるような優れた制御が実現されている。
レポート●石井昌道(ISHII Masamichi)
フォト●トヨタ自動車
新型RAV4は曲がることの気持ち良さを素直に味わえる
既報の公道試乗(上記リンク参照)に先立って、冬の北海道で雪上試乗する機会にも恵まれた。主眼はもちろん3種類の4WDを体感することだ。
夏場はサーキットとして使用するテストコース上の圧雪路は、道幅が広く、ストレートは長く、コーナーはヘアピンから緩やかなR、そしてS字とバラエティに富んでいる。雪上としてはかなりのハイスピードまで試せる豪快なコースとも言える。路面の整備が行き届いているからグリップもかなり高いが、何台もの試乗車が走ると表面の雪が削られ、コーナーでいきなりツルツルのアイス路が現れるという状況でもあった。
それでも新型RAV4は基本的なシャシー能力が高く、路面にタイヤをじんわりと押しつけていけるため、安心感を持って雪上を駆け巡っていくことができた。
雪上では「ダイナミックトルクベクタリングAWD」の威力がいかんなく発揮される。コーナーへ向けてステアリングを切り込んでいく時にも、滑りやすい路面にも関わらずノーズが思い描いたラインに乗っていき、早めのアクセルオンが可能。駆動を掛けていけばさらに旋回力が増してオン・ザ・レール感覚でコーナーを駆け抜けていけるのだ。
安全が確保されたテストコースだからと遠慮なくアクセルを踏み込んでいってもオン・ザ・レール感覚は続き、自分でも怖くなるぐらいのコーナリングスピードに達していく。まさに驚異的なポテンシャルなのだ。
それに比べると「ダイナミックトルクコントロール4WD」と「E-Four」はコーナー進入時に意図的にしっかりと曲げておかないと、アクセルオンでアンダーステアを出してしまうことになる。駆動力としては十分にあるのだが、ベクタリング効果がないのでリヤから押していってしまうわけだ。
しっかり曲げてからアクセルを踏み込んでいった時も違いは大きい。「ダイナミックトルクコントロール4WD」と「E-Four」は、踏み過ぎると路面や状況によってアンダーステアやオーバーステアが、より早い段階で顔を出し始める。それでも基本性能の高さで、相当なコーナリングスピードには達するし、コントローラブルではあるためドライビングを楽しめることに変わりはない。
特に、滑りやすい路面でわざと振り回すような走りをすると「ダイナミックトルクコントロール4WD」は素直な操縦性が光ってくる。
カウンターステアを当てながらアクセルをどれくらい踏み込んでいけば望んだ姿勢を維持できるというのが分かりやすいからだ。「E-Four」はリヤへの駆動配分が大きくなるので時にRWD的な走りも楽しめる。フロントはエンジンが178㎰/22.5㎏m+モーターが120㎰/20.6㎏mなのに対し、リヤモーターは54㎰/12.3㎏mのため、前後駆動配分が20:80になるのは限られた状況だろうが、ヘアピンで滑りやすい路面に載ったときには意図的にパワーオーバーを出すこともできた。
とはいえやはり曲がる能力の高い「ダイナミックトルクベクタリングAWD」を一度味わってしまうと離れがたくなる。後にオフロードで試乗した時には曲がり過ぎるきらいもあったが、オンロードならジャストな旋回能力を見せつけるから、SUVながらワインディングを攻めに行きたくなる。ストレスなく曲がることの気持ち良さは、RAV4が新たに獲得した走りのキャラクターだ。