3月28日に新型二代目へとスイッチした軽ワゴン・日産デイズに、同社本社がある横浜周辺で試乗。今回もエアロ仕様「ハイウェイスター」のターボとNA、それぞれのFF車に試乗した。追浜工場内のテストコース「グランドライブ」では見えなかった、真の実力とは。
REPORT●遠藤正賢(ENDO Masakatsu) PHOTO●遠藤正賢、日産自動車
追浜のテストコースでの試乗、発売当日の発表会、そして今回の公道試乗と、三度新型デイズを目にして改めて実感させられるのは、日産が「パーシブド・クオリティ」(perceived quality)と呼ぶ、見た目品質の高さ。
追浜で初めて新型デイズハイウェイスターを目にした時、遠目にはそれをセレナハイウェイスターと見紛うほどだったが、それは内外装の造形だけではなく品質においても変わらない。
むしろこの新型デイズに対し、日産車で見た目品質において匹敵するのはセレナやエクストレイルなどのCセグメントカーがやっとで、それを上回る比較対象はインフィニティ系の車種のみ、というのが率直な印象だ。
今回テストしたのはターボ車が標準内装、NA車がオプションの「プレミアムコンビネーションインテリア」だったが、後者ではより一層強く、そのクオリティの高さを見せつけられる。
初代デイズも決して見た目品質は低くないどころかむしろ高かったのだが、日産の開発陣が新型デイズでこの「パーシブド・クオリティ」向上にかなりのこだわりを持っていたであろうことは、プレゼンテーションの中で「登録車メーカーである我々日産」という言葉が異口同音に聞かれたことからも窺える。
そして同様に大きな開発テーマとして掲げられていたのは、後席と荷室の空間、小物入れの充実度、静粛性、加速性能、予防安全性能の5つ。これらを一つずつ、改めてチェックしていこう。
まず後席と荷室の空間だが、これを拡大するために、ホイールベースを65mm延長して2495mmとし、これを実現するためにパワートレインも一新し小型軽量化、エンジンルームを65mm縮小している。
小物入れは単純に数が増えただけではなく、それぞれの形状や使い勝手もよく煮詰められている。また、助手席側ドアトリムに車検証・説明書入れを収めるボックスを設けたのはアイデア賞ものだが、フタが上端のダイヤル式ロックと各部の溝&フックで保持する構造となっているため、その開閉、正確には脱着が決して容易ではない。
「車検証やメンテナンスノートは車検・点検の時にメカニックが使うだけ。説明書はまず読まれない」という、極めて現実的な視点に立った設計なのだが、わざわざメーカーが自ら、日常点検と正しい使い方の学習からユーザーを遠ざけるのは、いかがなものだろうか?
内外装のチェックを終えた所で、いよいよ公道へ。最初に最上級グレード「ハイウェイスターGターボプロパイロットエディション」標準インテリアのFF車、次にNAエンジン+Sハイブリッドの「ハイウェイスターX」プレミアムコンビネーションインテリアのFF車に試乗した。両車とも165/55R15 75Vタイヤを装着し、銘柄はターボ車がブリヂストン・エコピアEP150、NA車がダンロップ・エナセーブEC300+だった。
走り出してすぐに感じるのやはり、その圧倒的とまで言える静粛性の高さだろう。グランドライブで試乗した際も同様の印象を抱いたが、周囲に騒音を発生・反射するものが多い公道では、その静けさがより明確に体感できる。
このために吸遮音材の使用部位を大幅に拡大するのみならず、パワートレイン自体の振動を抑制することで「キューブなみの静かさを実現した」(日産開発陣)というのだが、絶対的な音量ではなく耳障りに感じるノイズが少ないという点ではむしろ、キューブよりも静かに感じられるほどだ。
一方で、セレナと同容量のブラシレスモーターが採用され、ギヤ比が先代より20%低められた電動パワーステアリングの感触は、確かに抵抗感が少なくスムーズではあるものの、低速域ではアシストが不足するどころか過剰なほどで、女性ユーザーを主眼としていることを考慮しても軽い。しっかりした手応えが得られる中・高速域とはまるで逆の感触だ。
なお、日産オートモーティブテクノロジー車両実験部の高橋徹主担によれば、「据え切り時の操舵力は年々軽くなっており、15Nmが直近の同クラスの相場。新型デイズはそれよりやや重めの16~17Nmに設定している」とのこと。つまりこれは、操舵トルクを重めにセットした中・高速域との差が大きいことが、そう感じさせているのだろう。
そして、日産本社の駐車場から近隣の一般道へと出ると、グランドライブではほぼ見られなかった一面が顔を覗かせる。それは、目に見えないほど細かな路面の凹凸を、特にタウンスピードではリヤサスペンションが極めて忠実にドライバーへ伝えてくることだ。
新型デイズでは、ダンパーのサイズが拡大されるとともに高応答バルブが用いられ、さらにはラジエーターサポートとフロントサブフレームをつなぐロアサイドメンバーを追加するなど、ボディ剛性の向上も図られている。しかしながらこれらの対策は、こと低速域においては残念ながら功を奏しているとは言い難い。
今回は155/65R14 75Sタイヤ装着車や4WD車に試乗する機会が得られなかったため断言はできないが、原因は165/55R15 75Vタイヤのエアボリュームの少なさ、エンジンルーム前進のため悪化した前後重量バランス、FF車のトーションビーム式リヤサスペンションのフリクション、あるいはそのいずれもか。この特性は、今回試乗した2台とも、全く同じ傾向を示していた。
高橋主担によれば「キビキビしたハンドリングと不安を与えないロール特性、突き上げの少ない乗り心地とのバランスを取るのが非常に難しかった。だが、あまりスペシャルなタイヤにしてしまうと、リプレイス用タイヤを装着した際に乗り味が変わりすぎるので、新車装着タイヤはいずれもサイズ相応の硬さ・グリップにしている」とのこと。
その一方で、元町商店街のような石畳路や高速道路の継ぎ目、大きな凹凸でのマナーは「グランドライブ」で試乗した際よりもむしろ好印象に。また高速域での直進性、旋回時の安定性・軽快感とも申し分なく、非常にリラックスして走ることができた。これはブレーキの効きが必要充分以上なうえ、その過渡特性がリニアで扱いやすいことも大きく影響しているだろう。
新開発のBR06型0.66L 3気筒エンジンには、「ハイウェイスター」ではNA車・ターボ車とも「S-ハイブリッド」が組み合わされる。今回サブバッテリーを鉛電池からリチウムイオン電池に変更することで、セレナに対し回生エネルギーの回収量を約2倍、アイドリングストップ時間を約10%、モーターアシスト時間を10倍以上拡大したという進化版だ。
【Specifications】
<日産デイズ ハイウェイスターGプロパイロットエディション(FF・CVT)>
全長×全幅×全高:3395×1475×1640mm ホイールベース:2495mm 車両重量:880kg エンジン形式:直列3気筒DOHCターボ 排気量:659cc ボア×ストローク:62.7×71.2mm 圧縮比:9.2 エンジン最高出力:47kW(64ps)/5600rpm エンジン最大トルク:100Nm(10.2kgm)/2400-4000rpm モーター最高出力:2kW/1200rpm モーター最大トルク:40Nm/100rpm JC08モード燃費:25.2km/L WLTC総合モード燃費:19.2km/L 車両価格:164万7000円
<日産デイズ ハイウェイスターX(FF・CVT)>
全長×全幅×全高:3395×1475×1640mm ホイールベース:2495mm 車両重量:880kg エンジン形式:直列3気筒DOHC 排気量:659cc ボア×ストローク:62.7×71.2mm 圧縮比:12.0 エンジン最高出力:38kW(52ps)/6400rpm エンジン最大トルク:60Nm(6.1kgm)/3600rpm モーター最高出力:2kW/1200rpm モーター最大トルク:40Nm/100rpm JC08モード燃費:29.8km/L WLTC総合モード燃費:21.2km/L 車両価格:146万9880円