新しいエンジンが登場すれば、その裏では役目を終えてひっそりと退場するエンジンが必ずある。華やかな直噴ターボのSKYACTIV-G 2.5Tのデビューで代替されたV6エンジンが本稿の主役である。
SKYACTIV-G 2.5Tの登場時に、V6を置き換えるという役目があることがアナウンスされていたのをご記憶の方もいらっしゃるだろう。G 2.5Tの初搭載がCX-9であることからもわかるように、北米市場における大排気量エンジンとしての役目を担っている。その「代替されたエンジン」が本機である。
MZIのエンジンコードは振られているものの、その実態はフォード・サイクロンV6(現在はデュラテックのペットネームのほうが多く用いられている)。これは、当時マツダがフォードと資本提携を結んでいたためだった。アメリカ市場のV6ながら横置き搭載の車種が大半を占めていることが特徴のひとつである。
マツダMZIとしては2006年のCX-9が初出で、3.5ℓの排気量として登場を果たした。高出力とNVH性能の両立のために、アッパーインテークマニフォールド/可変バルブタイミング機構/高流量吸気ポートの開発に意が注がれている。
クランクはブロックへの振動低減を図りフルカウンター式に、さらに支持剛性を高めるためのキャップのサイドロックおよび連結構造のトレイを採用している。クランク先端にはデュアルマスダンパプーリを採用、280Hz帯の振動を3dB低減させたという。
吸気騒音については先述のアッパーインテークマニフォールドが寄与、レゾネーターを4つ配することで共鳴対策し、かつ違和感のないリニア性を実現している。
2008年にはボア径を3mm拡大し排気量を3.7ℓに増大、この排気量シリーズとしてはフォードグループで初めての搭載だった。広島で生産して北米に輸出するという「帰国子女」のようなエンジンだったが、CX-9のフルモデルチェンジにあたり新エンジンとしてSKYACTIV-G 2.5Tが登場、その役目を終えている。
【Mazda 3.7 MZI】
エンジン形式 60度V型6気筒DOHC
排気量 3726cc
内径×行程 95.5×86.7mm
圧縮比 10.3
最高出力 200kW/6250rpm
最大トルク 270Nm/4250rpm
ブロック素材 アルミ合金
カムトレイン DOHC
吸気弁/排気弁数 2/2
バルブ駆動方式 直接駆動
燃料噴射 DI
可変バルブタイミング In-Ex