2020年までに新しいボルボ車に搭乗中の事故における、死亡者または重傷者ゼロを目指す「Vision2020」を掲げるボルボ・カーズ。そんな彼らが3月22日に発表した2020年以降のすべての新型車に180km/h制限を設けるという決意表明に驚いた人も多いかと思う。その意図について考察してみよう。
3月22日にボルボが発表したリリースに衝撃を受けた。なんと2020年以降に発売されるすべてのボルボ車(MY21)の最高速度を180km/hに制限するというのだ。筆者はこの"すべてのボルボ車”というフレーズに驚きを隠せなかった。なぜかといえば、それは速度無制限区間が存在するアウトバーンがあるドイツ市場も含むからである。
ドイツでは以前よりもぶっ飛ばすクルマが減っているという話は聞くが、それでもなお、アウトバーンの速度無制限区間では200km/h以上の速度で追い越し車線を走行するクルマも多い。メルセデス・ベンツSクラスやポルシェ、BMW7シリーズ、アウディA8などの高級車が猛烈な速度で疾走している。欧州の富裕層はお金で時間を買っているのだ。
ボルボにとってドイツは非常に重要なマーケットのひとつである。ボルボ車の販売台数の世界第5位はなんとドイツなのだ。そのドイツにおいても180km/h制限を実施するということは、多くのユーザーを失う可能性がある。
だが、ボルボにとっては高速で走行するユーザーを失うことは十分承知の上だろう。それ以上にボルボが掲げる「Vision2020」を達成するためには、スピード超過による重大事故を減らすことのほうが重要だと考えているのだ。従来の顧客を失っても、乗員の安全性を最重要視するというのはボルボの信念あるいは哲学であり、ある意味英断と言ってもいいだろう。