ジェイテクトは、トルクの低減と高い信頼性を兼ね備えたハブユニット用低トルクシールを開発した。日本国内を始め、極寒冷地を含むグローバル市場で、本製品の拡販を図っていく。
近年、自動車軸受業界を取り巻く環境は、CO2排出規制の強化と、EV化における航続距離の延長を目的として、従来以上の低損失化が求められている。ハブユニットは、自動車のホイールを支える軸受として使用されており、ハブユニットの低トルク化は、燃費に直結するため必要不可欠な技術だが、それと同時に、高い信頼性も要求される。
しかし、低トルク化と信頼性は一般的には背反の関係にあり、その両立が高いニーズに答えるための重要課題のひとつだった。
ハブユニットの軸受部・シール部については、これまでにも低トルクグリースや摩擦抵抗の低減アイテムの開発などを行ってきたが、今回ジェイテクトは、これまで蓄積した技術を基に更なる低トルク化実現の為、アウトボード側シールの開発に着手した。
アウトボード側シールは、極寒冷地市場・インフラ未整備市場では特に、シールリップのしゅう動面に錆が発生することによりシールリップが異常摩耗し、軸受内部に泥水が浸入しやすくなる。泥水の浸入は、軸受寿命低下の主な原因であるため、この問題の解決が急務だった。
今回の開発品「ハブユニット用低トルクシール」は、リップ周辺の被水環境を改善する事を目的に流体解析を行い、これまで確認できなかった水の流れ方向と流量を数値化した。
その結果を基に、シールの周辺構造も考慮し、以下の5つの改善点により現行品と比べて75%の低トルク化と、泥水環境下でのシール寿命の大幅な向上を実現しました。
5つの開発のポイントと効果
① シール開口部のラビリンス(迷路構造)の強化→シール内部に浸入する泥水量の低減
② シール内部に樋構造の追加→泥水をリップに到達させない
③ シールリップのしゅう動面に※スリンガ(ステンレス製)を追加→リップの異常摩耗を防ぐ
④ リップ数を3つから2つに削減→リップ反力を減らしてトルクを低減
⑤ リップ形状の見直し→形状の最適化でトルクを低減
軸受の密封装置は、外部からの異物(ごみ、水分、金属粉など)の浸入防止と同時に軸受部分に保有する潤滑剤の漏れを防止するもの。
※スリンガ 回転軸に装着し、遠心力の振り切り効果で、外部からの浸入を防止密封装置