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収納性に優れたシート構造と、それが実現した広くて低くてフラットなフロア。軽バンの新たな姿を提案するN-VANのパッケージング力には驚かずにはいられない。ピラーレスの大開口も画期的だ。
レポート●工藤貴宏(KUDO Takahiro)
フォト●森 信英(MORI Nobuhide)
助手席まで低く沈み込んで荷室を拡大
積載性の追求がN-VANの最大のテーマ。そのための工夫が、長尺物も積めるように後席のみならず助手席まで床下へ沈み込む構造としたことだ。まるで最初から存在しなかったかのように低く平らに沈む構造が秀逸。〈運転席まわり〉質実剛健に徹した道具感がたまらない
N-BOXではステアリングより上にあったメーターが一般的な位置となり、数多い収納はサッと出し入れすることを重視したオープンタイプを採用。N-BOXとは異なるデザインで、ひときわ実用的にまとめられている。塔のようにそびえたつシフトレバーの台座が特徴的。MTのワイヤーリンケージを通すための設計だろう。
最小限の計器だけを組み込んだ簡素なデザイン。とにかくシンプルで大きな速度計が中央に鎮座し、補助的とはいえタコメーターも全車に組み込まれる。右側にはカラーのマルチディスプレイを採用するなど廉価感はない。
右側はメーター内の液晶画面の操作に加え、CVT車はクルコンのスイッチを盛り込む。シンプル装備の廉価グレードまで含めて前走車追従型なのは驚きだ。左側にはオーディオスイッチを装備。
車線逸脱警告など安全運転支援系のスイッチとライトの光軸高さ調整ダイヤルをインパネ右端に配置。「FUN」の光軸調整は自動式だ。
助手席ドアミラーの下には、目視できずに死角となる助手席側側面を映す補助ミラーを組み込む。前後輪付近を映す。
ATセレクトレバーは一般的なストレートゲート式。ハンドルの近くにあるので、操作する際も手の動きは少なくてスマートだ。 スロットルや空調の制御が燃費重視のモードになる 「ECON」。 | 非接触キーを標準装備する「+STYLE」系はプッシュ式スターターを採用。 |
足元は従来の軽バンと違ってブレーキペダルの位置も違和感なし。マルチインフォメーション・ディスプレイ
航続可能距離:燃費履歴とガソリン残量から算出した航続可能距離の概算値を表示。給油のタイミングを予測できる。 | 平均車速/経過時間:平均車速や経過時間などドライブ情報を表示。ホンダセンシング装着車はその情報も確認できる。 |
燃費表示:数字の平均燃費をバーグラフによる平均燃費を併記。平均燃費はトリップのAとBで切り替え可能。 | ガイダンス表示:ドアが開いていることをはじめ車両の状態を伝える表示は、イラストが添えられわかりやすい。 |
軽バン初の6速MT
短めのストロークで、ソリッドな感触だが固過ぎないシフトフィールが心地いい。なんと軽バン初の6速だ。アクセル&ブレーキの著しい左寄りがないペダルレイアウトも従来の軽バンに比べて自然。ただしフットレストはない。
〈居住性&乗降性〉快適性を重視した運転席。他の座席は格納性が最優先。
助手席と同様に後席も板のような座面を組み合わせた簡易的な設計。小さく折り畳めることを最重視したつくりだからだ。N-BOXに比べて足元は狭く、背もたれがほぼ垂直なのは居住性よりも荷室の積載性を重視しているからである。荷室拡大を優先するのは商用バンならではだ。 | 従来の軽バンと違って乗用車サイズの快適なシートを備える。運転姿勢はハンドルを抱え込むような独特なスタイルではなく、ステアリングの高さを調整できる(「G」「L」を除く)のも大きな長所。シートはクッションのサイドから下にかけても生地の縫い目をなくし、乗り降りを繰り返しても破れにくいよう工夫している。 |
「L」以上のCVT車はセンターアームレストを装備。大きなサイズで、ロングドライブ時に左腕を休ませられる。
運転席がここまでリクライニングできるクルマは多くない。ほぼフラットで、仕事の合間の休憩はゆっくり休めそうだ。
助手席の背もたれは倒すと水平になり、停車時にテーブルとして利用可能。伝票などを置くのにもちょうどいいスペースとなる。
上級仕様になると、前席、後席、そして荷室に加えて助手席側開口部を照らすランプも装備。荷室の広いN-VANならでは。
大きなフロントウインドウに合わせ、サンバイザーも大型。「+STYLE」系は運転席/助手席ともバニティミラーが付く。
助手席と後席を日常的に畳んで使うユーザーも多いことだろう。そのため外す必要のあるヘッドレストやリヤピローを固定する場所をしっかり用意。
〈室内の収納スペース〉前例がないほど数多くの収納で快適をサポート
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①助手席前上部にはドリンクホルダーとトレーを配置。ドリンクホルダーには500mℓ紙パックも置ける。
②バインダーなどを使用してテーブルのようになるスリットはナイスアイデア。純正アクセサリーでは脱着式テーブルも用意している。
③ドアハンドルに溝を切ることで、袋などをぶら下げられる発想も秀逸。こういう細かい実用アイデアが溢れるのもN-VANの魅力だ。
③もちろん、ドアハンドルは小物入れとしても使える設計だ。一般的なドアハンドルよりも大きめにつくられていて実用的。
④グローブボックスはないが、ボックスティッシュも置ける大型トレーがその代わりを果たす。脇にはDC12Vアウトレットを用意する。
⑤メーターパネル脇のスペースはペンホルダー、スマホのケーブル格納、仕切りを外してガラケー入れなどに利用可能だ。
⑥運転席用のドリンクホルダーはダッシュボード右端。エアコンの風で飲み物の温度調整ができるのもうれしいポイント。
⑦助手席のドアポケットはボトルホルダーをメインとした構造。ここは外した助手席ヘッドレストの格納スペースにもなる。
⑧運転席左のフロアにもドリンクホルダーとして活用できる収納ボックスをレイアウト。運転席周辺には合計3本のペットボトルが置ける。
⑨シフトレバーの脇にもフックがあり、コンビニ袋を吊り下げるシーンでも重宝するだろう。ゴミ袋を掛けても便利。
⑩インパネ右下にも小型収納を装備。ダッシュボード各部に徹底的に多く組み込んだ収納部からは、開発者のこだわりが感じられる。
⑪ドアを開け閉めする際に握る運転席ドアのハンドルも底があって小物を置ける形状になっている。ガラケーなどが収まる容量だ。
⑫運転席のドアポケットはペットボトルとB5サイズの冊子を同時に収納可能。ペットボトルなしならA4のファイルも置ける大きさだ。
⑬助手席後ろの後席用ドリンクホルダー。助手席を畳んでボードを広げない状態であれば2.0ℓのペットボトルも置ける。
運転席のシートバックポケットは内部にファスナー付きのポケットを用意。車検証はここに入れておけばいいだろう。〈ナビ・AV・空調〉全グレードにオーディオを標準装備
昨今では珍しく、オーディオを標準装備。一方ナビは販売店オプション設定で、写真のような7インチ画面タイプが松竹梅の3機種と、ひと回り大きな8インチ画面タイプを用意。立派なのは全機種とも通信料まで永年無料で使える車載通信端末を標準搭載していること。 「ナビ装着用スペシャルパッケージ」にはリヤカメラもセット。 | 通信機能を活用して、詳細な交通情報を反映した“最速ルート” など高度な道案内ができるのも強み。 |
いずれのメニューもアイコンを大きくするなど操作性に配慮。
廉価仕様のベーシックグレードまでフルオートエアコンを標準装備。PM2.5対応の集塵フィルター付き。 「G」を除きUSBジャックは標準で2個あり、いずれも急速充電対応。いまどきの商用車はかなり親切だ。 | DC12Vは助手席前に2個ある。運転席から遠いのは、シガーライターとしてのニー ズが減ったからだろう。 |
オーディオは2タイプ
標準装備のオーディオは2種類。写真は「G」と「L」用でDINサイズのAM/FMラジオ。「+STYLE」系はUSB入力対応で、本体を隠して設置。表示はメータ ー内、操作はステアリングリモコンで行なう。〈ラゲッジルーム〉低いフロアと高い天井がハイレベルな積載力を生む
助手席まで倒せば2.5mを超える荷室長は見事で、床が低くてフラットなことにも驚く(従来の軽バンの床は高め)。床のフックは8ヵ所。車両後部だけに設けるのが一般的だが、助手席付近にもあるのはさすがである。
シートの格納方法は助手席脇のラベルで確認できる。動かすレバーやストラップはオレンジで目立つから、操作時にわかりやすい。
運転席足元に組み込まれ脱着式のボードは、荷物などが運転席の足元へ落ちないためのガード。安全への配慮を具現化した一例である。 助手席シートを格納しただけの、ボードを引き出す前の状態。中央付近にある溝を埋めるのはボードの役割だ。 | 助手席を沈めたあとに、シート下に格納されていたボードを引き出すことでフラットなフロアを実現。それにしても、低く沈む助手席には驚くばかり! |
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荷室にはフロアのフックや壁のリヤシートピロー固定用ベルトなども用意されている。リッドの一部が定規なのは遊び心。
通常時:高さ1260mm 最小奥行き:720mm低い床と高い天井による、軽自動車としては圧倒的な大空間が見事。後席位置が前寄りなので奥行きがN-BOXより広い。水が染み込まない床のマットをはじめ、壁のトリムも傷が目立たない仕上げ。
後席格納時:最小幅905mm 奥行き1550mm座面ごと床下に沈み込む後席の採用で、低くてフラットな床をつくり出せるのが自慢。床を低くすることで実用性向上をねらったことがよくわかる。自転車などの積み下ろしも楽だ。
助手席+後席(左側)格納時:ロールーフ車で2560㎜、ハイルーフ車で2635㎜という助手席格納時の荷室奥行きは、軽自動車史上最長。P34の写真からもわかるように、車内にバイクを積めるほど、ちなみに写真のバイクはCRF125Fだ。アイデア次第でラックやフックが追加できる
Cピラー&Dピラーで9個、天井に3個、テールゲートに1個と片側だけで13個のユーティリティホールを用意(合計26個)。「COOL」以外は28個となる。![](https://motor-fan.jp/images/articles/10008960/big_1191000_201904031414310000001.jpeg)
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ユーティリティナットにアイテムを取り付けて、荷室を自己流にカスタマイズできる。純正アクセサリーでもここを活用するバーやボード、フックなど用意するが、使い方に合わせて自分で工夫できるのがポイント。ボルトサイズはM6。
注目装備
リヤウインドウはポップアップ開閉:「+STYLE」系のスライドドアの窓は一般的な上下昇降式ではなく、外側に少しだけ開くポップアップ開閉式。
Honda SENSING:軽商用車として初めてすべてのグレードに自動ブレーキなど先進安全支援システムを標準装備。目となるのは単眼カメラとミリ波レーダーだ。
LEDヘッドライト:「+STYLE FUN」のヘッドライトはフルLED式。ドーナッツ状に光る点灯状態も個性的でなかなかキュート。
Hondaスマートキー:「+STYLE 」系のキーは非接触式。キーを取り出さずにできる施錠/会場は手がふさがりがちな商用車にこそ便利だ。
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