3月28日にデビューした三菱「eKワゴン」と「eK X」(イーケークロス)。同日に東京マリオットホテル(東京都品川区)で開催された発表会の席で、両車のデザインを担当した松延浩昭(まつのぶひろあき)プログラムデザインダイレクターにインタビュー。こだわりのポイントなどについて聞いた。
REPORT●遠藤正賢(ENDO Masakatsu) PHOTO●遠藤正賢、三菱自動車工業、日産自動車
--新たに投入された「eK X」に三菱独自のフロントデザインコンセプト「ダイナミックシールド」を採用していますが、今回は日産さんの姉妹車もあります。そこで特に苦労された点は?
松延 開発当初よりこのアライアンスとして、両車とも個性がしっかりしたクルマに仕上げなければならないと考えていました。そこで同じボディを使いながら、変えられる所はしっかり変えながら、双方にバランスが取れるクルマにするというのが、最も苦労したポイントですね。
--三菱さんの「ダイナミックシールド」と、デイズハイウェイスターに採用されている日産さんの「Vモーショングリル」とは造形が全く違いと思いますが、それをどう両立できるようにしたのでしょうか?
松延 両社のデザイナーがしっかりと話し合って、お互いの違いを何度も確認しながら、アライアンスの中でコミュニケーションを取ってデザイン開発を進めていったのが、それぞれのデザインが上手くいった一番の理由だと思いますね。
--実車を見ると、ヘッドランプの取り付け位置が全然違いますね。そしてフロントサイドを見ると、バンパーとフェンダーの分割線が他の軽自動車よりも大きく後方に下げられています。ここで上手くデザインを差別化できるようにしたのでしょうか?
松延 おっしゃる通りです。ランプについてもお互いのアイデンティティをしっかり入れていこうということで、お互いポジティブに捉えてこういう設計にしました。
--このフロントフェンダーの分割線から後ろ側が鋼板で、前側が樹脂でしょうか?
松延 はい、分割線より前側はバンパーですので樹脂製です。
--インテリアでは、シート生地を日産さんのモデルと作り分けていますよね。
松延 ええ、形は一緒ですが、クルマの嗜好性が違いますので、それに合わせてカラーリングでしっかり作り分けました。
--販売目標台数はeKワゴンよりeKクロスの方が多いとのことですが、デザイナーとしてもそれは同じ想いですか?
松延 やはり三菱専用で作っている所はeK Xの方が多いですし、三菱のブランドをより強く表現しているモデルでもありますので、ぜひそちらの方で、三菱のイメージとして盛り上がってくれればいいなと思いますね。
--本当に、日産さんとはまるで違うクルマに仕上がりましたね。
松延 先代までのように同じ土俵で作っている限りはイメージの違いしかできなかったと思いますが、今回日産さんはこれまで通りのハイウェイスター路線を貫き、三菱はSUVのアクティブ路線で行こうという風に、方向性を分けたのが大きいと思います。
--ありがとうございました。