メルセデス・ベンツは基本的にAT、しかしクルマによってはDCTや特殊なATが搭載されていることがある。いずれもペットネームが与えられていることから実態がつかみにくいので、構造から整理してみた。
2019年3月現在の状況を調べてみると、6速MT、7G/9G-TRONIC、7G/8G-DCTがメルセデス・ベンツ車に搭載されているトランスミッション、メルセデスAMGモデルにはAMG SPEEDSHIFT DCT、AMG SPEEDSHIFT TCT、AMG SPEEDSHIFT MCTの3種が用意されているようだ。新たにEQのシリーズとして始まったプラグインハイブリッド車のトランスミッションには特別な名称は今回とくに与えられておらず、PHEVとして登場したときには「9G-TRONIC plug-in hybrid transmission」という呼び方をしていた。
ともあれ、MB車はまだ想起できるが、AMG車の名称は非常にわかりにくい。
変速機というものは、大きく分けて「スターティングデバイス」「変速エレメント」に分かれる。横置き型の場合にはそこに「ディファレンシャルユニット」も内蔵されている。
スターティングデバイスとは、文字どおりクルマを発進させるときに用いる装置。エンジンがいかに強大なトルクがあっても、どれだけ高精細で緻密な制御を用いる変速機であろうと、何千kgにも及ぶ自動車という物体を停止状態から動かすためにはこれがどうしても必要だ。具体的にはクラッチ、トルクコンバーター、モーターなどがある。
対する変速エレメントとは、変速比を創出するための機構。自動車に搭載するエンジンは常に運転状態が変動していることから、使用できる馬力が得られる回転域が限られている。そのエリアを大きく外さないために変速比を変更する必要がある。近年、多段化が進んでいるのは「そのエリア」では飽き足らず、最高効率燃費点という「ポイント」を狙い撃ちするためというのはご存じのとおり。具体的には平行軸歯車、遊星歯車、プーリー+ベルトなどがあげられ、いわゆる順にMT、AT、CVTの基幹部品である。
これらをメルセデス各種の変速機に充ててみると以下のようになる。
こうして整理してみると、AMG SPEEDSHIFT TCTとは9G-TRONICの高機能版であることがわかる(TCTとはトルクコンバーターテクノロジーの接頭語か)。すべての自動車用トランスミッションを眺めてもことさらユニークなのがAMG SPEEDSHIFT MCT。遊星歯車+湿式多板クラッチという構成で、登場時には単に「AMG SPEEDSHIFT」と呼ばれていた。
A/Bクラスの横置きトランスミッションもユニーク。ベーシックなモデルは6速MTを用いていて、日本仕様を始めとする高価格帯はDCTを採用している。かつてのA/BクラスにはCVTを搭載するモデルがあり、それはAUTOTRONICと称していた。CVTの〜TRONICといえばアウディのマルチトロニックがあったのでそれと重複しそうだ。