日本のアウディファン、そしてアウディ関係者にとって念願の「TDI」、クリーンディーゼルモデルが2月4日、ミッドサイズSUV「Q5」に初めて設定された。その上陸したての最新モデルを、毎年恒例のJAIA(日本自動車輸入組合)「輸入車試乗会」において、会場の大磯プリンスホテル敷地内とその近隣で短時間ながら試すことができた。
REPORT●遠藤正賢(ENDO Masakatsu) PHOTO●遠藤正賢、AUDI
従来日本仕様のQ5に設定されていたパワートレインは、252ps&370Nmの2.0ℓ直4と、「SQ5」用の354ps&500Nmを発する3.0ℓ V6、いずれもガソリンターボの2種類だけだったが、新たにフォルクスワーゲン・パサートと同じ190ps&400Nm仕様のEA288型2.0ℓ直4ディーゼルターボを追加。「40TDIクワトロ」と、「40TDIクワトロスポーツ」の2グレードを設定している。
Q5は現行A4をルーツとする進化版の縦置きエンジン用プラットフォーム「MLB evo」を採用。前後5リンク式サスペンションにアルミ合金が多用されたことで、初代に対し約60~70kg軽くなっている。
「40TDIクワトロスポーツ」エアサスペンション装着車の車重は1920kg。同じエアサス車同士で2.0ℓ直4ガソリンの「45TFSIクワトロスポーツ」と比べると90kg重い。一方で「SQ5」のエアサス車に対しては30kg軽量だ。
この車重に対し190ps&400Nmというスペックは本当に“ちょうど良い”レベル。近年のアウディは内外装のみならず走りの質感も極めて高く、フラットかつリニアな“走る・曲がる・止まる”を、下はA1から上はR8までほぼ全モデルで味わえるのだが、このQ5 40TDIクワトロスポーツはその最右翼と言えるだろう。
ただし、ディーゼルだから当たり前と言えばそれまでだが、力強い加速感を味わえるのはアクセルの踏み始め、低中速・回転域まで。全開に近い発進加速や高速道路の追い越しなどでの速度の伸びは、あくまで190psという馬力相応だ。
インテリアの各装備はスポーツシートや「Sラインパッケージ」が装着されていることもあり、昨年試乗したSQ5とほぼ変わらないのだが、ホールド性・フィット感・各部のクリアランスとも申し分ない前後席と、あらゆる機能を直感的に操作できるスイッチ類など、初めて乗る人にも優しいこのQ5、そしてアウディおよびフォルクスワーゲン各車に共通の設計思想には、改めて賞賛の念を禁じ得ない。
しかもこのQ5には、徐々に少数派となりつつある、グリップが真円のステアリングホイールが装着されている。おかげで何ら違和感を覚えることなく、運転に集中することができた。
こう書くとローテクでアナログなクルマのように捉えられそうだが、実際はその真逆。最先端のテクノロジーの塊なのだが、それらをこれ見よがしに主張することなく、ユーザーフレンドリーなものに落とし込んでいるのは、見事というより他にない。
今回のQ5 40TDIクワトロスポーツ、素の状態でも657万円、オプション込みでは823万円と絶対的な価格は高いのだが、それだけの価値はあると断言できる。しかもガソリン車の「45TFSIクワトロスポーツ」に対し、装備内容は同一ながら55万円安く、極めてお買い得な価格設定となっているのだ。
それまで日本市場において我が世の春を謳歌していたフォルクスワーゲンとアウディだが、2015年のディーゼルゲート事件を境に急落。その後ライバルたちは、ディーゼル車を含むニューモデルの積極投入で反撃し、両ブランドから確実にシェアを奪っていった。
果たしてアウディは、このQ5 TDIを皮切りとしてリベンジなるか。言うまでもなく、その可能性は十二分に高い。
【Specifications】
<アウディQ5 40TDIクワトロスポーツ(4WD・7DCT)>
全長×全幅×全高:4685×1900×1640mm ホイールベース:2825mm 車両重量:1920kg エンジン形式:直列4気筒DOHC直噴ディーゼルターボ 排気量:1968cc ボア×ストローク:81.0×95.5mm 圧縮比:15.5 最高出力:140kW(190ps)/3800-4200rpm 最大トルク:400Nm(40.8kgm)/1750-3000rpm JC08モード燃費:15.6km/L 価格:657万円