あらゆるクルマのチューニング&カスタマイズを手掛ける総合パーツメーカーのHKS。ホンダS660においても例外ではない。そんなHKSが開発した水冷式のオイルクーラーとインタークーラーに注目。WEB OPTIONが徹底検証した。
WEB OPTIONへのリンクはこちらから!ハードに走るユーザーが増えてくると当然起こってくるのが、発熱の問題だ。
ホンダS660も例外ではない。当初はフットワークなどから展開を始めたパーツも、今ではユーザーに合わせてタービンなどハード指向のものが増えてきている。とにかくチューニングを求めるユーザーが多く、HKSではS660用に出した製品がヒットし続けているという。
S660の場合、吸気温度が高くなる傾向にあり純正のインタークーラーではキャパが不足しがち。フルノーマルであっても、少し走っただけで吸気温度は150度を超えてしまうことも。
となると、ECUが危険を察知してフェイルセーフが入り、本来の性能が発揮できない場合もある。また、場合によってはノッキングを誘発し、エンジンにダメージを与えてしまう恐れもある。
そんな状況を早期から確認していたHKSでは、当然大型のインタークーラーの開発を行ってきたが、装着スペースの制約が多いS660のエンジンルームでは、従来の空冷式インタークーラーでは納得のいく性能を発揮させることが敵わなかったという。
そこで発想を転換して開発を始めたのが、水冷式のインタークーラーだ。インタークーラーコアに専用の冷却システムを持たせることで、レスポンスを損なうことなく吸気温度を適性まで下げることに成功したのだ。
専用の経路を新設する水冷式ということもあり、システムは複雑化してコストも上がってしまう。しかし、その効果は歴然としたもの。空冷式ではどうしても下げることができなかった吸気温を、サーキット走行をしても50度台に抑えることができるようになったというのだ。当然、サーキットでの連続走行を行っても、ノックリタードが起こらなくなったことは確認済みだ。HKSでは、今後エンジンルームのスペースに制約のある車種に関しては、同様のシステムを構築することも考えていけるだろう。
そして、走行風による冷却が安定させにくかったオイルクーラーの装備に関しても同様の理論で水冷式を開発。オイルクーラーをフロントに付ければ空冷でも冷却効果を発揮できそうだが、そうなると経路が長くなって油圧の低下を引き起こしてしまうという。
油温に関しては水温と同程度まで下げて安定させることが理想のため、こちらはエンジン冷却水にバイパス経路を設けることでシステムを構築。やはり、サーキットでは100度を超えていたものが、95度程度に安定させることが可能となった。
水冷方式のクーリングシステムを改めて開発したことで新たな手法としての認識を高めたHKS。今後も新たに製品開発を進める車種に関しても、既成概念や既存のシステムにとらわれず、最適なパーツ開発を手がけてくれそうだ。
PHOTO:Hiroki Iwashima
<HKS S660用 水冷クーリングシステム>
水冷式オイルクーラーキット 29万8000円
水冷式インタークーラーキット 38万8000円
インタークーラー専用のラジエターをフロントに装備し、専用電動ウォーターポンプで冷却水を循環させることで、インタークーラーを冷却する。このシステムを投入することで、すぐに150度以上にまで上がっていた吸気温度が50〜60度で安定するようになり、エンジンのポテンシャルを安全に引き出せるようになる。
これは、GT100Rタービン早着者の走行テストの結果(HKS社内データ・サーキットテスト)。インタークーラー入口の温度は、走行開始後1分もしないうちに160度を超える。そしてノーマルインタークーラー、試作の空冷インタークーラーともに約5分でインタークーラー出口温度が90度に達し、フェイルセーフ(ノックリタード)が入ってしまい性能が大きく落ちる。その点、製品化された水冷式インタークーラーは、約55度で安定している。
こちらは水冷式のオイルクーラー。エンジン冷却水をコアに通しで油温を水温と同レベルに保とうという趣向で開発された。オイル経路が最低源で収まるため、油圧のドロップも発生しない。
こちらは、装着した車両で筑波サーキットTC2000を7周全開した時の油温データ。エンジンを通過したオイルは最高で105度まで上がっているが、オイルクーラーを通過することで約95度まで低下して安定。水温への影響もみられなかったという。