ターボ全盛の現代だが、ターボといえば「ターボラグ」という宿命を持つ。ターボラグをデータ上で検証するため、2.0ℓ直4DOHC直噴ターボ、N20型を搭載するBMW320にOBD2スキャンツールを繋いで検証してみた。データ上で見ると、ターボラグは果たしてどうだったのだろうか?
2.0ℓ直噴ターボに組み合わせるトランスミッションは、ZF製8HP。通常のドライブでは、ターボラグのネガを感じるシーンはほぼない。それもそのはずだ。iPadのDashCommandの画面を見ると、ブースト圧はマイナスかゼロ。つまり過給していないのだ。街中のストップ&ゴーのシーンで、ごくごく穏やかな加速をしているとき、ツインスクロールターボは働いていない。シグナルグランプリ(!)とまではいかないが、かなり深くアクセルを踏み込まないと、過給圧は上がらないことがわかる。普段は過給圧が上がるような加速はほぼしていない。
ためしに、自宅から編集部までの道のりを、普段と同じように走ってみると、やはり過給するシーンはほぼゼロだった。なんのことはない、普段は2.0ℓNAエンジンとして使っているというわけだ。
高速道路で70km/hから100km/hの加速を、ATモード、MTモードの5速固定、6速、7速、8速固定などで試す。アクセルの踏み具合も、緩やか、中間、べた踏みなど試してみる。7速や8速固定でアクセルをやや踏み込むときに、ターボラグの存在は如実に感じられる。
これでは、ターボラグを見つけられない。今度は首都高速で70km/h巡航から100km/hまでの加速を試してみる。ATモードで緩加速を試みると、7速から5速にシフトダウンし、エンジン回転数が上がり、過給圧が高まるという順で加速していく。過給が始まるまでの時間(ターボラグ)はあるが、シフトダウンの変速時間のなかに埋没してさして気にならない。このあたりは8HPとエンジンの協調制御がうまいところだ。今度は、シフトレバーを左に倒してマニュアルモードにしてみる。8速70km/hは1260rpmである。N20の最大トルクは270Nm/1250rpmだ。1260rpm回っていたら、ターボラグなしに過給されてトルクが涌きだしてくる……ということはまったくなかった。アクセルを踏みレスポンスが体感できるまでに約1.5秒。そこからさらに約1秒経たないと、BMWの2.0ℓターボエンジンに期待するトルク感は得られなかった。それでは、と、今度は同じく8速固定で、もう少しアクセルを踏み込む。すると、マニュアルモードだが、ギヤは8→7速にシフトダウンされた。ふむ、そういうことか。
普段320iをドライブしていてターボラグに悩まされることはないと前述した。残念ながら週末にワインディングロードへ走りを楽しみに行くこともできない身としては、日常はほぼ2.0ℓの無過給エンジンとして使い、ごくまれに強い加速Gが必要な場合は、8HPがシフトダウンする変速時間にターボラグがうまく隠されているからだ。
OBD2から取得したデータはログとして出力できる。これをExcelで開いて詳細に見ていくと(パラメーターがあまりにも多くて見きれないのだが)、体感したことがデータで裏づけられる。通常の緩加速はほぼ無過給。強い加速の際はシフトダウン。そして定常走行の際のエンジン出力&トルクの数値は想像以上に低い。BMW3シリーズに2.0ℓという排気量はいわゆるダウンサイジングとは言えない。これが、VWゴルフ1.2TSIのようにダウンサイジング率が上がれば、通常の走行でも「無過給走行」の割合は減ると推測できる。