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軽貨物車と軽乗用車、何が違うの?…法規上の違いをホンダN-VANとN-BOXで比較


7月12日にバモス/アクティの後継車としてデビューした軽商用バン「N-VAN」は、FFの軽乗用車である新型「N-BOX」をベースとしながら、ボディや室内の設計が大幅に変更され、全グレードとも4ナンバーの軽貨物車に分類されるようになっている。だがそもそも、軽貨物車と軽乗用車は、一体何が違うのだろうか? 法規上の違いについて、国土交通省自動車局に聞いてみた。

ホンダN-BOX

--軽貨物車と軽乗用車は法律上、どのような構造面での違いがありますか?




国交省「正確には『自動車の用途等の区分について』という依命通達で定義されているのですが、軽自動車、登録車とも、貨物車に関しては荷物を積み下ろす場所と、置く場所の広さが決められています」




--具体的にはどう違うのでしょうか?




国交省「まず、荷物を積み下ろす場所の広さですが、車体の後面または側面の開口部有効長が、軽自動車は縦600mm×横800mm以上、登録車の場合は縦横各800mm以上必要となります。と同時に、開口部垂直面の投影面積が、軽自動車は0.48平方メートル以上、登録車は0.64平方メートル以上確保されていなければなりません」

ホンダN-VANの開口部寸法

 N-VANの場合、ホンダ公表値でバックドア開口部が縦1200(ロールーフ車)~1300mm(ハイルーフ車)×横1230mm。Bピラーレスとなっている左側側面も縦1230mm×横1580mmと、いずれも上記の基準を余裕でクリアしている。

--では、荷物を置く場所の広さは?




国交省「前席より後ろを最大限荷物が置けるようにした状態の床面積が、軽自動車は0.6平方メートル以上、登録車は1平方メートル以上確保されている必要があります」

後席を格納したホンダN-VANの室内

 これについてもN-VANは、ホンダ公表値で2名乗車時の荷室フロア長が1585mm、荷室幅は4名乗車時の数値ではあるが1325(ロールーフ車)~1390mm(ハイルーフ車)となっており、この数値から計算すれば床面積は2平方メートル以上。登録車の基準さえダブルスコアでクリアしていることになる。
ホンダN-BOXのバックドア開口部
後席を格納したホンダN-BOXのラゲッジルーム


 この2つだけであれば、バックドア開口部の広さと2名乗車時の荷室床面積に大きな差がないN-BOXでも、問題なく4ナンバーの軽貨物車として届出ができそうだが…。

--同じ車種で乗用ワゴンと商用バンの両方がある場合、商用バンの後席が乗用ワゴンより前側に付いていたり、形状がシンプルだったりするのはなぜですか?




国交省「それは、シートを全部起こした状態で、人が乗るスペースよりも荷物を置くスペースの方が広くなければならない、と規定されているからなんですね。さらにその状態で、最大限乗れる乗員の総重量より、最大限積める荷物の総重量の方が大きいことも求められています」

運転席側前後席を起こしたホンダN-VANの室内
4名乗車時のホンダN-BOXの室内


 この規定が存在するため、どれだけバックドア開口部が大きく、また後席格納時に広大なラゲッジスペースが得られるクルマであろうとも、後席を起こした時のラゲッジスペースが狭ければ軽貨物車として届出できないのである。

--軽貨物車を選ぶと、税金と車検の面ではどんなメリットとデメリットがありますか?




国交省「まず軽自動車税ですが、軽乗用車は自家用が1万800円、営業用が6900円ですが、軽貨物車は自家用が5000円、営業用が3800円と半分程度になります。一方で車検の有効期間は、初回のみ軽乗用車の3年間に対し軽貨物車は2年間と短いですが、2回目以降はどちらも2年間です」

 登録車の場合、2回目以降の車検有効期間が乗用車は2年間なのに対し貨物車は1年間となるため、自動車税額の安さは車検時の費用でほとんど相殺されてしまうが、軽自動車では自動車税制上のメリットをほぼ永続的に得ることができる。




 とはいえ車両そのものは、軽貨物車では耐久性とコストが重視される分、軽乗用車に対し内外装の質感と乗り心地、静粛性の面で劣る傾向にある。そして、後席がシートアレンジ優先、つまり格納時に広く平らな床面が得られるよう設計されているため、ごく短距離短時間の移動を除けば3名以上で移動するのに適していないことが多い。




 N-VANの場合はさらに、助手席もシートアレンジ優先の設計となっているので、長時間の業務利用はもちろん、個人が趣味で遠出するのに使う場合は、事実上1人乗りになると考えた方が良い。




 他人を乗せる機会がほぼないということであれば、軽貨物車の車種・仕様を選んでも実用上のデメリットは少ないと思われるが、1台のクルマに2人以上乗って移動する機会が多いのならば、維持費の安さに釣られることなく軽乗用車を選ぶべきだろう。
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