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名車さまざま、カタチもさまざま。この個性が今の車には足らないのでは? その2


ここで紹介するのも極めて個性的なモデル。ある意味両極にある存在だが、互いにあるべくして存在しているし、またこうした存在があったことが今となっても嬉しい。ここではカースタイリング的デザイン視点で紹介するが、まだまだ現代の車はこれらの先人を超えられていないのではないだろうか。

 まず紹介したいのは、ジャガーXJクーペだ。展示されていたのは、ディムラー・ソブリン4.2クーペと呼ばれる、ジャガーの中でも特別な上級ブランド。グリルの造形だけでなく、グリルの製作手法も異なる。実はこのディムラーはゴットリープ・ダイムラーのエンジンを製造・販売する権利を得たイギリスの会社ダイムラー・モーター・カンパニーのこと。一時期は自動車生産を行なうまでに至っていたが、ジャガーがその会社を買収。その後ジャガーが上級モデルにダイムラーへの敬意を表してネーミングされたといわれる。ちなみに、ディムラーと表記するのは、日本でダイムラー・ベンツ社と区分けするため。


 ディムラーブランドに装着されるグリルは、冷却を目的として上部に窪んだ筋の入るフルーテッドグリルと呼ばれるもの。ダイムラー・モーター・カンパニーで開発された車の特徴でもあった。


 そして、XJシリーズ2世代目のシリーズIIと呼ばれるこのジャガー/ディムラーは、きわめて美しく優雅。ダブルシックスと呼ばれるV型12気筒モデルも擁するだけに、そのロングノーズのプロポーションも大きな特徴だ。


 先代のXJシリーズIに比較して、より優雅なEタイプ的なフォルムをまとったと見ることもできる、といえば言い過ぎか…。しかしながら、セダンの中で、群を抜く優雅さを持ったモデルで、単なる噂にすぎないかもしれないが、初代シーマ登場時点ではジャガーに似ているのでは? と言われた所在もこのあたりのデザインに由来するようだ。


 加えて、サッシレス&Bピラーレスとなるクーペは、きわめて開放感が高い。大きく左右を絞り込んだリヤ周りもジャガー/ディムラーらしさを継承する特徴となっていた。






 そして次に紹介するのが、シトロエンDSシリーズだ。


 


 

シトロエンDSシリーズの廉価モデルID19(1964)。DSともども、全くどのクルマとも似ていないクルマ。

 シトロエンDSシリーズは廉価モデルのID19と、DS21などが展示されていた。写真はID19。とにかくこんなクルマが50-60年代のパリを走り始めたのか、と想像するだけでもわくわくするクルマだ。


 まさに今改めて見直すと、そのアバンギャルドぶりは自動車業界の中にあってトップにあった。


 雲の上のような乗り心地を実現するのが、前後関連式油圧サスペンション、車高調整可能な”ハイドロニューマチック”だ。そしてまるでソファーのような、ふかふかのシート。


 DS21など仕様によっては、リヤサスペンションやステアリングに連動して挙動の影響を受けずに、進行方向を照らすヘッドライト。さらには、クラッチ操作を必要としない、マニュアルトランスミッションなど、驚くほど先進的な装備を盛り込む。


 そしてその独特な機構を包むのが、このボディだ。軽量化のためにボンネットはアルミ製。加えてルーフはFRP製徹底した空力性能を意識したボディは、ノーズを低く抑えるが、これが実現できたのは、エンジンをフロントミッドシップのように後方に配置できたため。


 狙った重量配分はF2:R1というトラクション重視。その狙いもありボンネット先端にはスペアタイヤが配置される。長いノーズと極端なほど短く小さなリヤエンド。リヤにホイールアーチはなく、フェンダーですべてが覆われる。リヤタイヤの交換は、リヤエンドのボルトを緩めることでフェンダーを外して行なうというのも、極めて個性的だ。




 そんな個性的なボディが、油圧サスペンションの特性によって、停止時には油圧が抜けて低く構え、エンジンを始動するとふわっと起き上がりまるで生き物を想像させるのも、シトロエン以外にはまずありえなかった。


 プジョー・シトロエン・グループは現在、両者とは異なるDSブランドを立ち上げたが、このDSシリーズの持つ個性を再び重視する発想であるようだ。


 ただし、60年以上も前のこの個性的な車には、まだまだ追いついていないようだ。


 


 クルマというものをもう一度見直す、驚きに満ちたモデルに触れることができるのが、オートモビルカウンシルの魅力だろう。ここに紹介した以外にも、マツダはFFファミリア、スバルは初代レオーネエステートバン4WD、日産では何とミッド4 II (2世代目モデル)を展示するなど、コンパクトなショーながら様々な好みにヒットするモデルが多彩に展示されたイベントだ。

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