7月初旬の発表以降、新型ジムニーの周辺がたいへん騒がしいことになっている。ジムニー関連の本の売れ行きやウェブのPVはどこも好調。スズキ側のスタッフも、「カタログの捌け具合が異常」だという。なんでこんなことになってしまったのか、確かめるべく、ジムニー/ジムニーシエラ試乗会に乗り込んだ。
PHOTO&REPORT●森本太郎(MORIMOTO Taro) PHOTO●中野幸次(NAKANO Koji)
SUVブームの昨今、新型ジムニーは、乗用SUVが他にたくさん存在するからこそ、林業従事者などプロユースに徹底的に照準を合わることができたという。つまり、乗用SUVを横目で意識するような中途半端なコンセプトにはなっていないということだ。ジムニー(5MT)からハンドルを握ってみると‥‥、ラダーフレーム、パートタイム4WDの本格オフローダーゆえ、背の低いモノコック乗用車と比べれば、ハンドルを切るタイミングやロールの仕方に違いはある。登坂時のトラクションを得るためにギヤ比は低いから、テンポ良くシフトアップしていかないと、回転が上がってしまう。同時期デビューのN-VANと比べると27cmもホイールベースが短いなど、ディメンションも独特だ。ただし、そんなことを考えながら走るのは最初だけで、すぐに慣れてしまってジムニーのリズムで運転することが楽しくなってくる。
シエラは、AT車に試乗した。車重はAT車同士ならジムニーよりも50kg重い1090kgだが、その重量以上にフィーリングの違いが感じられる。重量感や落ち着きは、軽快な印象のジムニーと比べるとはっきりと違うのだ。1.5ℓエンジンは、660ccターボと比べればトルクで1.35倍、パワーで1.6倍も違うから、当然ながら余裕がある。ただし、ブン回して走るクルマではないから、この余裕はクルージングや高速道路の移動でより楽にゆったり走れるための余力といったところだろう。ちなみにATは4速で、やはりローギヤードだ。多段化が叶うなら、いろんな意味で都合が良いだろう。
バリバリのオフロードコースも試乗することができた。急斜面の登りと下り、モーグルコースなどさまざまな路面を試したが、ブレーキLSDトラクションコントロールの恩恵もあって、踏破力そのものもさることながら、むしろ踏破するために特別な技術やコツを必要としないことに驚かされる。適切にハンドル操作する以外に、何もすることがないのだから。
ジムニーはあくまで本格派のクロカン四駆であって、四駆性能こそが何よりのセリングポイントであることは間違いない。ただその上で、この新型はオフロードに行かない街乗りユーザーにも十分お勧めできると断言できる。まず、先代比で快適性や操安性が大幅にアップし、気兼ねなく普段使いができるようになったこと。先祖返りしたような四角くシンプルなスタイリングが時代にマッチしていること。さらに、ジムニーはあくまで本物の機能性能が求められる人たちのために妥協なく仕立てられているから、ホンモノへの憧れや格好良さを喚起すること。Gクラスやラングラーが街乗りユーザーに人気なように、ジムニー/ジムニーシエラはスタイリッシュなコンパクトスペシャリティとしても、ますますユーザー層を広げそうだ。価格が安くて無駄がないことも、時代のムードに合っている。
モーターファン別冊 第574弾 新型ジムニー/ジムニーシエラのすべて
20年ぶりにフルモデルチェンジを果たした小さな本格クロスカントリー4WD、ジムニーとジムニーシエラを詳密写真とオンロード/オフロード試乗で徹底解説。