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アルファロメオ・ステルヴィオで368個のコーナーを曲がってみた!


アルファロメオ初の本格SUV、「ステルヴィオ」がついに日本に上陸した。


ヨーロッパ屈指の峠道に由来を持つネーミングを与えただけあって、


開発陣はその運動性能には絶大な自信を持っているという。


それではと、早速ニッポンのステルヴィオ峠に繰り出したのである。




TEXT&PHOTO●小泉建治(KOIZUMI Kenji)

一見するとスポーツカー、もしくはスポーツサルーンにしか見えないコクピット。センタークラスターはドライバー側に若干傾けられ、スイッチ類はなるべく少なめに抑えることに苦心したという。

アルファロメオがSUVを作るからには……

 アルファロメオ初のSUV「ステルヴィオ」がついに日本上陸を果たし、長野県は軽井沢でメディア向け試乗会が開催された。もはやSUVはスペシャルな存在ではなく、ひとつのカテゴリーとしてメインストリームにすらなりつつある。それはコンパクトからハイエンドに至るまでクラスを問わずに起きている現象で、そんなSUVを求める市場の強い声に対するアルファロメオの回答とはいかなるものなのか、クルマ好きならほとんどの人が注目しているに違いない。なにしろ戦前から続く珠玉のスポーツカーブランドなのである。




 まず実車を目の当たりにして思うことは、想像していた以上にSUV感が希薄だということ。スポーツカーとは言わないが、5ドアのスポーツサルーン、もしくは巨大なホットハッチといった風情で、アウトドアやオフロードの気配は微塵も感じられない。アルファロメオがわざわざSUVを作る意味を彼ら自身がよく理解していることの表れだ。




 プラットフォームはスポーツサルーンのジュリアと同じ「ジョルジオ・アーキテクチャー」で、サスペンションも基本的にジュリアと同じである。もちろんセッティングは変更されている。着座位置は190mm、最低地上高は65mm高くなっているが、ロール軸の角度はジュリアとまったく同じである。




 フロントオーバーハングはクラス最短の859mmで、これが身をかがめた動物のようなスタイルの演出に効いていると思われる。ホイールベースはクラス最長の2820mmだ。Cd値は0.30と、これもSUVとしてはトップクラスに入る。



軽快感に溢れ、すべての動きにタメがない

おなじみアルファDNAのセレクトスイッチ。「ダイナミック」「ナチュラル」「アドバンスト・エフィシエンシー」の3つのモードが用意され、パワー特性、アクセル開度、ステアリングやブレーキのアシスト量などが変更される。

 走り出してみると、なにしろ重量を感じさせないことに驚かされる。エンジンフードをはじめボディ各所にアルミニウムを使い、カーボン製ドライブシャフト(!)を採用するなど徹底して軽量化に取り組んだとはいうものの、それでも1810kgという車重は一般的な感覚では軽いとは言い難い。




 だがこれだけの車重を持ち、200mmというロードクリアランスを確保したSUVとは思えないほど、すべての動きにタメがない。それは駐車場から通りに出る瞬間から感じ取れた。




 一応、試乗会の推奨コースは中軽井沢のホテルから白糸ハイランドウェイを巡るものとなっていたが、かつて北イタリアのステルヴィオ峠をロータス・エヴォーラで攻めたことがある筆者としては、白糸ハイランドウェイとステルヴィオ峠は似ても似つかないと言わざるを得ない。目指すはニッポンのステルヴィオ峠、碓氷峠の旧道だ!

いよいよニッポンのステルヴィオ峠へ!

碓氷峠の旧道には、184ものコーナーがあり、それぞれに番号が振られている。往復したので、368のコーナーを曲がったというわけだ。

 そんなわけでやってきました碓氷峠の旧道です。ご存知の方も多いかと思うけれど、ここはとにかくタイトでツイスティなワインディングロードで、多くの人は南側を並行して走っている碓氷バイパスを選ぶ。とりわけステルヴィオのように全幅が1.9mを越えるようなSUVでここを走るのは苦痛以外のなにものでもない、はず。




 当然ながら最初はゆっくり慎重に走る。だが前述の通り、その慣性を感じさせない身のこなしと、思いのほか掴みやすい車両感覚に背中を押され、じわじわとペースが上がってくる。




 そして前走車がまったく現れないことにも助けられ、気がつけばまるでホットハッチのような感覚で運転を楽しんでいる自分がいた。




 いや、正確にはホットハッチではない。確かにサイズ感はホットハッチのようだが、ハンドリングのナチュラルさは明らかに後輪駆動スポーツカーのそれだ。




 なにしろ前後重量配分は50:50で、前後トルク配分は基本的にフロントが0、リヤが100……つまりFRなのである。だからコーナーの出口でアクセルを多少無遠慮に踏みつけても、ステアリング操作がトルクに影響されることがない。あくまで必要が生じたときだけ、フロントに最大60%のトルクが配分される。




 12:1というクイックなステアリングレシオも、もはやSUVとは思えない。ドライバーの目の動きとノーズの向きが連動しているかのようで、タイトターンをまるでスキーでも楽しんでいるかのように気持ちよく駆け抜けられるのだ。




 エンジンもただでさえフラットトルクな特性を持っているうえ、ATが8速もあるから常にパワーバンドを維持し続けられる。動力面でも1.8tもの車重を意識させられることはない。




 碓氷峠の旧道を往復し、合計で368ものタイトコーナーをクリアしても、まったく疲労感はなかった。むしろ残っているのは高揚感だけ。




 結論づけるなら、「運動性能にも不満のないSUVを作ったのではなく、ただひたすら優れたスポーツカーを作った。しかしスタイルだけは“SUV風”である」といったところだ。


 


 ニッポンのステルヴィオ峠を走り抜けたステルヴィオは、期待していた以上にリアルなスポーツカーだった。SUVらしく悠然と流すのは、ことによると難しいかも知れない。





アルファロメオ・ステルヴィオ ファースト・エディション


全長×全幅×全高:4690×1905×1680mm ホイールベース:2820mm 車両重量:1810kg エンジン形式:直列4気筒DOHCターボチャージャー 総排気量:1995cc 最高出力:206kW(280ps)/5250rpm 最大トルク:400Nm/2250rpm トランスミッション:8速AT フロントサスペンション:ダブルウィッシュボーン リヤサスペンション:マルチリンク タイヤサイズ:255/45R20 車両価格:689万円
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