
デビュー以来、毎年のように進化を続けてきたGT-Rは、
基本的なハードウェアを大きく変更することなく、
個々の部品、あるいはユニットの持つ潜在能力を、
その時の最新技術で引き出してきた。
今回の2017年モデルでは従来の手法に加えて、
はじめてそのボディにも手が加えられ、
円熟の走りをさらに磨き込んだ。
走行性能と車両コンセプトが決定したフォルム
全長4710㎜、ホイールベース2780㎜という数字はかなり大柄な印象だが、タイヤ接地荷重の安定化と、緊急時とはいえ大人4人が乗れて荷物も積めるというユーティリティから導き出された数字といえる。重量バランスに優れたプレミアムミッドシップパッケージ
重量物のトランスミッションを車体後方に配置するトランスアクスル方式を採用し、前後重量配分を最適化。しかも後輪車軸よりもトランスミッションの重心が下になるようにしている。 ※このイラストは07年モデル視認性・質感を見直したコクピット
高級本革素材をインストアッパーに使い質感を向上。内部のクッション材も変更し薄くした。上下に分離していたナビユニットとディスプレイを一体化することでインスト高さを低くし、視認性も向上させている。快適性を向上させたフロントシート
今回、フロントシートは構造から見直し、上半身を点ではなく面で支えるよう変更した。内部のウレタン部も厚くすることでクッション性とフィット感を改善しつつ、265gの軽量化も達成した。リヤシートはエマージェンシー用
大人ふたり分のリヤシートは「いざ」という時のもの。足元スペース、ヘッドクリアランスともにタイトだ。しかし、必要な時には4人乗りができるという点は心強い。普段は高級な荷物置き場として使用できる。ゴルフバッグ2セットを積めるトランク
大容量トランクルームを持つことも他のスーパースポ ーツではありえないこと。ゴルフバッグなら2セット。スーツケースなら特AサイズとCサイズをひとつずつ積み込むことができ、日常性にも配慮している。複合素材で構成されたボディ
スチール(グレー)、アルミ(赤)、カーボンコンポジット(黒)など複数の素材を適材適所に配置し高い安全性とボディ剛性を確保。一方、軽量化の面でも大きなメリットをもたらしたといえる。フロントウインドウまわりを17年モデルで強化
デビュー以来はじめて本格的に手を入れられたモノコックは、フロントウインドウまわりを重点的に強化している。Aピラー基部へのガセットの追加や周辺部品の板厚をアップするなど、ボディ剛性の前後バランスを整えた。改善された空力性能、乗降性にも配慮

ボンネットの剛性を強化
従来モデルでは、300㎞/h以上の速度域ではボンネットの浮き上がりが発生していたことを確認したため、アウターパネルはグリルのVモーションからのキャラクターラインで強化している。インナーパネルも見直された。全数加振テストは今も実施
デビュー当初からボディは全数加振テストを行ない、合格したボディのみ次の工程にまわり、落ちたボディは廃却。生産品質も安定し、今ではテストに落ちるボディはほぼなくなったという。VR38DETT型3.8ℓV6ツインターボ
デビュー時には480㎰だったエンジンは、570㎰まで出力を向上させた。この間、ハード面でのアップデートはないに等しく、主に制御面でパフォーマンスを向上させてきた。その内容は最新技術で効率を追求した進化といえる。

気筒間で吸入空気量に差
エンジンルームのレイアウト上の制約から、インテークマニホールドの形状は手前の気筒に空気が入りにくく奥に行くほど空気が入りやすい。このために気筒毎に吸入空気量に差が生じてしまう。気筒別点火時期制御の効果
吸入空気量にバラツキのある気筒毎に最適な点火時期を設定し、各気筒の持つ最大のパフォーマンスを引き出す技術。14年の「GT-R NISMO」で投入され、今回、標準車にも採用した。ラダーフレーム構造の採用
エンジンの本体となるシリンダーブロックの下部に装着。クランクシャフトを支持する部分を写真のように井桁状のラダーフレームにすることでブロック剛性が高くなり信頼性が上がる。ライナーレス/クローズドデッキ
ブロック本体も各気筒周辺に大きな水穴のないクローズドデッキを採用し剛性を確保。さらにシリンダーライナーに鋳鉄を使わずプラズマ溶射を施し、高い冷却性と軽量化も両立した。マニホールド一体ターボ
IHI製のターボはエキゾーストマニホールドと一体にすることで、レスポンスを向上。排気エネルギーの損失を抑え効率的に過給する。さらに触媒を早期に活性化し環境性能にも貢献。駆動系のノイズと変速ショックを低減
今回は静粛性の向上もテーマのひとつ。キャビンが静かになり駆動系のノイズが目立つようになった。そこで、フライホイールダンパーの特性変更やシフト時のノイズを低減するなど対策された。
GR6型デュアルクラッチトランスミッション
シームレスな加速が魅力のセミオートマチックトランスミッションは、基本的なハードウェアは変更せず、クラッチやシフトタイミングの制御を煮詰めることでスムーズな走りを実現。新たに追加された静粛性向上アイテム
「不快な音を取り除き、心地よい音を乗せる」ことがテーマの17年モデルでは、ボディにも制振材やインシュレーターを追加しキャビンの静粛性を高めることで質感を向上させた。新開発のチタンマフラー
出口の形状は片側2本出しのため、見た目の変更感はあまりない。しかしマイナーチェンジでこれほどマフラー構造を変更した例はないという。チタン合金のため軽量化にも貢献している。ダブルウイッシュボーン式フロントサスペンション
V36型スカイラインをベースとするが、GT-R用として強化され リヤサスペンション。レースカーのようにパイプを使ったサブフレームの精度は高く、強度・剛性ともに優れている。 ※写真は07年モデルマルチリンク式リヤサスペンション
GT-Rの場合サスペンションメンバーにトランスミッションも搭載するためかなり強固なメンバーが採用された。通常は4点支持だがGT-Rでは6ヵ所でボディと締結する構造を採用した。 ※写真は07年モデル専用セッティングのサスペンション

「GT-R NISMO」と「Track edition」は高剛性なボンディングボディに対し、ダンパー、スプリング、スタビライザーを専用チューニング。走りを重視し固めたセットだが17年モデルは15年モデルより乗り心地も良くなった。減衰力を連続可変制御
車両側のセンサーから得られた情報をもとにコンピュータが減衰力を連続可変することで様々なシーンで最適なダンピング効果を得る。GT-Rはモードスイッチで3つの乗り味を選べる。ビルシュタイン製ダンプトロニック
前後ともにコイルスプリングとダンパーを同軸上にレイアウトしたコイルオーバー式。ビルシュタインと共同開発されたダンパーは、減衰力を走行状態や路面に応じてリアルタイムに可変することができる。フロント:6ポットキャリパー
ブレンボ製の対向6ポットキャリパーはモノブロックで剛性も高い。ローターはフローティングタイプでデビュー時は380㎜だったが、11年モデルから390㎜の大径サイズを装着。 ※写真は07年モデルリヤ:4ポットキャリパー
ブレンボ製対向4ポットのモノブロックキャリパーをリヤに装着。組み合わせるブレーキローターは380㎜と、やはり国産車では異例の大径サイズ。歴代GT-Rの弱点だった部分を克服。 ※写真は07年モデルボンディングボディの施工部位
14年のGT-R NISMOで一躍注目されたボンディングボディ。各パネルのイラストの赤い部分に接着材を塗り溶接することでボディ剛性を向上させる。まさにメーカーにしかできないボディのチューニング手法だ。17年モデルでは各モードの幅を変更
剛性アップしたボディに合わせリセッティングされた減衰力特性。動き過ぎる脚を低速で抑えるようにした。また各モードスイッチの乗り味も変更感を感じられるようメリハリをつけた。Track edition engineered by nismo
ボンディングボディと専用サスペンション、タイヤを装着する。エンジンと内外装は標準車だが中身はスペシャル。ある意味、最もGT-Rらしいグレードなのではないだろうか。GT-R NISMO
トップグレードとして走りの性能を追求した「GT-R NISMO」。アグレッシブな外観と600㎰までチューニングされたエンジンを搭載。13年にはニュルで量産車最速を記録した。
開発期間の様々なステージで数多くのテストを繰り返すことで、より高いレベルに新型GT-Rを到達させた日産自動車実験部の皆さん。

モーターファン別冊ニューモデル速報 No.540 新型GT-Rのすべて
600psのGT-R NISMOとTrack editionも全開チェック!!
ドライビング
インプレッション
ライバル車
比較試乗
開発ストーリー
メカニズム詳密解説
デザインインタビュー
使い勝手徹底チェック
ほか

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