先代のデビューから39年を経て初のフルモデルチェンジを受け、
いよいよ日本に上陸した新型メルセデス・ベンツGクラス。
最新テクノロジーで身をかためながらも、見た目は完全にGクラスそのもの。
昔ながらのファンの期待を裏切らない理想的な全面刷新の裏には
「ここまでやるか」と呆れてしまうほどの涙ぐましい努力があった。
ダイムラーAGの商品企画責任者を務めるミヒャエル・ベルンハルト氏に訊く。
TEXT●小泉建治(KIOIZUMI Kenji)
PHOTO●田村 弥(TAMURA Wataru)/Daimler AG
───昔からの大切な顧客や熱狂的なファンを多く抱えたロングセラーの全面刷新ということで、開発には相当な苦労やプレッシャーがあったかと思われます。
ベルンハルト
まさにそれが今回の我々の仕事の大きなテーマでした。どこまで変えるべきか、どこを変えてはいけないのか、その見極めこそが最も重要だったのです。
シンプルに言えば、Gクラスとして譲れない部分は2点です。「卓越したオフロード性能」そして「伝統のデザイン」です。コストの掛かるラダーフレームを採用したのは、言うまでもなく前者のためです。ロードクリアランス、アプローチ&デパーチャーアングルの確保に加え、最新の制御技術を駆使した「Gモード」によって、市販車として究極のオフロード性能を実現しています。
二番目のデザインに関しては、まずデザイナーにGクラスのヘリテイジを徹底的に理解してもらうことから始めました。何しろ先代モデルは39年も前にデビューしているわけですから、そのアイデンティティを堅持させることは現代の常識に照らし合わせるとかなり難しいのですが、そこは妥協できませんでした。
───先代からの流用パーツも多いのでしょうか?
ベルンハルト
いいえ、先代と同じパーツは3つしかありません。ドアハンドル、リヤに背負っているスペアタイヤのカバー、そしてヘッドライトウォッシャーのノズル(笑)だけです。
───ウインドウは先代と同様に平面ですよね。
ベルンハルト
いいえ、平面なのはリヤウインドウだけで、フロントもサイドもすべて僅かに湾曲しています。
Gクラスほどキャラクターの際立っているクルマはない
見事にモダナイズされたインテリア
───先代のイメージを踏襲したエクステリアと比べて、インテリアは驚くほど現代流に生まれ変わっていますね。
ベルンハルト
多くのカスタマーにしても、我々にしても、先代のインテリアはもはや古臭い、という認識で一致していました。新型のインテリアを手掛けたのは女性デザイナーなのですが、彼女が守るべきGクラスの伝統は、助手席前方にある大きなハンドル、そしてダッシュボード中央に鎮座するデフの切り替えスイッチ、この2点だけでした。
ただ、Gクラスならではの特徴という意味では、これはちょっとした遊び心なのですが、ダッシュボード両端のエアコンの吹き出し口と、その奥にあるスピーカーが、それぞれヘッドライトとウインカーをモチーフとしたデザインになっている点です(下写真参照)。
───先代は39年という長い年月を生き抜いてきましたが、新型はどのくらいのモデルサイクルを想定しているのでしょうか?
ベルンハルト
今のところ具体的な年数は想定していません。個人的には長く作り続けてほしいと願っていますけれどね。そして長く乗り続けられるタフネスも持ちあわせています。何万年後かに、地層の奥からGクラスのラダーフレームがほぼ新品の状態で発掘されても私は驚きませんよ(笑)。