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レッドブル・エアレースを深く知る!出場機体のチューニングの違い


日本大会が5月26日(土)、27日(日)千葉県千葉市美浜区で行われたレッドブル・エアレース千葉2018。その参戦機体には、限界での速さを追求するため様々なチューニングが施されている。飛行機ならではのそのチューニングとは?


REPORT●後藤 武(GOTO Takeshi)

 レッドブル・エアレースで使われているレースプレーンは、エアロバティックス用に設計された機体をベースとして、空気抵抗の低減や軽量化、運動性を向上させるためのチューニングが施されている。

Point 01.ウイングレット

 主翼の翼端に取り付けられるウイングレットは、各チームの考え方の違いが現れる部分だ。飛行機は旋回中、翼の下側の圧力が高く、上側の圧力が低くなる。翼端部分では空気が下から上へ翼端に沿って回り込もうとするが、飛行機が高速で前に進んでいるため、空気の流れは渦となる。目には見えないが飛行機は翼端から渦を引いて飛んでいるのである。この翼端渦は飛行機にとって最も大きな抵抗の一つ。特に旋回でGがかかったときに大きくなる。下から上に回り込む空気を少なくして、翼端渦の発生を抑えるのがウイングレットの役目だ。


 ウイングレットは直線ではあまり効果がなく、逆に抵抗となってしまったりするため、チームによって大きさや形がマチマチである。また、大きなパーツが主翼の先端につくことで操縦のフィーリングも微妙に変化する。パイロットの好みやフライトスタイルでウイングレットが変わってくるわけだ。

大きめなウイングレットを装着しているのはマット・ホールの機体。

室屋のウイングレットは小いさめ。
マイケル・ギューリアンのウイングレットはなだらかなRになっている。


Point 02.カウリング

 もうひとつはカウリング。エンジンを効果的に冷却し、空気を少しでも多く取り入れるため、様々な形状が考えられている。レースプレーンで問題になるのは6気筒均一に冷却しにくいこと。レースプレーンに搭載されている水平対向六気筒エンジンは、前のシリンダーが冷えやすく、前後を挟まれた真ん中のシリンダーが極端に冷えにくい。エンジンの性能を引き出すためには6気筒を同じように冷却されていたほうがいいのは言うまでもない。そのために前側のシリンダーにはあまり空気を当てないようにして、エンジン全体をカバーし、エンジン全体に空気を導き入れるような形状が増えつつある。

エンジンを覆うカバーをつけて均一な冷却しようとする機体は多い。

室屋の機体は、ストレートに風を導入する形。
カービー・チャンブリスの機体は、入ってきた空気を前のシリンダーに極力当てないようにして、導風板で後ろのシリンダーに導く考え。


ファン・ベラルデの機体は、チャンブリスの機体よりも更に極端な形状。真ん中と後ろのシリンダーを積極的に冷やそうとしている事がわかる。
ピート・マクロードの機体は室屋と似たような形状。一番前のシリンダーに多くの風を当てている。


Point 03.オイルクーラーの位置

 またオイルクーラーの取り付け位置も機体によって異なる。胴体下部に持ってきてノーズ下部にダクトを取り付けている機体もある。普段はシャッターが開いているが、レースの時はシャッターを閉めて空気の流れが乱れないようにする。高速で飛ぶ飛行機の場合は、空気抵抗の低減が非常に重要なのは間違いのだが、レッドブル・エアレースでは、全機同じエンジンとプロペラを使うルールになっているため、更に重要度が高くなる。だからメカニック達は主翼や尾翼の隙間やカウルを止めた隙間をテープで埋め、機体をポリッシャーでピカピカに磨き上げる。

開閉式のオイルクーラーのシャッター。レースがスタートする前に閉じて空気抵抗を減らす。
エンジン下部にオイルクーラー用のエアダクトが設けられている。


Point 04. 2種類の機体

 エアレースで最も多く使われている機体は、エッジ540だが、これにはV2とV3がある。V3はV2の進化形であり、軽量で空気抵抗が少ない。だからV3が圧倒的に有利かと言うと一概にそうとうも言えないのが面白いところだ。現在ランキングトップのマイケル・ギューリアンはじめ、V2を使っているパイロットはまだ多く、彼らに話を聞くとV2でもモディファイの仕方によっては十分に戦えると言う。




 ちなみにこれらの改造は、勝手に行うことはできない。メーカーがテストを行って安全性が確認され、レッドブル・エアレース側が承認したものだけしか使うことができない。速さを追求しながらも安全への徹底した配慮は怠ることがない。それがレッドブル・エアレースなのである。

カウルのつなぎ目にテープを張っているところ。すべてのパーツにこういったスムージングが行われる。

機体をポリッシャーで磨き、ワックスを拭き取っているところ。メカニックはこうして少しでも空気抵抗を減らそうとする。

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