トヨタ紡織のブースに展示されていたリチウムイオン電池は、開発品ながらユニークな方向性を持たされた製品。目指す性能と内容について担当者にうかがってみた。
駆動用バッテリーの主流であるリチウムイオンバッテリー。一般的に、出力方向に特性を振るか、それとも航続距離を稼げるエネルギー密度を追求するか、いずれかが現在のところは主流だ。前者はハイブリッド向け、後者はEV向けの特性として製品化されている。
そのような状況でLiBの開発を進めるトヨタ紡織の方向性は「ハイブリッド用電池並みのサイズと容量ながらキャパシタ並みの出力特性」。同社がねらうのはスーパースポーツのハイブリッド車向けのLiBで、従来の電池では出力不足からモーターの出力を生かしきれないという悩みがあった。いわば両得を実現しているわけである。
実現を助けたのは、トヨタ紡織の生産技術。具体的には正極と負極を隔絶するセパレータの形状と加工技術が、高性能化を助けている。同社はフィルターを事業の要のひとつとしているだけに、濾過技術と微細繊維製造技術を得意とする。また、燃料電池スタックのセパレータやシートフレームのリクライン機構など、精密金型と精密プレスの生産技術にも富む。これらの技術を駆使し、LiBのセパレータにも工夫を凝らした。
LiBの内部では、3つの抵抗成分が生じている。ひとつがイオン抵抗、ふたつが反応抵抗、そして最後に電子抵抗。イオン抵抗とは正負極間をリチウムイオンが行き来する際の抵抗、反応抵抗とは正負極物質からリチウムイオンが反応する際の抵抗、電子抵抗とは回路内を電子が移動するときの抵抗を指す。このうち、もっとも大きな抵抗がイオン抵抗。正負極間の移動、つまりセパレータの効率を高めれば効率を高めることができる。
詳しい形状や内容については開発中ということで聞き出せなかったが、トヨタ紡織はこのセパレータの技術革新によってエネルギー密度と出力密度の両立方向に弾みを付けた。たとえば、ハイブリッド車に1kWhの電池を搭載したとき、100kW相当の出力を30秒にわたってアシストすることが可能だという。安全性/信頼性についても、高出力条件での急速充放電において30000サイクルを経ても、初期性能の99.9%を確保している。これは車両寿命に相当する成績だというから、その性能の高さがうかがえる。
正極/負極ともに特別なものは使用していないとのこと。展示品以上のチューニングが可能かどうかも判明しなかったが、いずれにせよ製品化されれば興味深いバッテリーになりそう。登場を楽しみに待ちたい。