1951年に自動車工学および自動車技術の向上発展の奨励を目的として設けられた「自動車技術会賞」は、公益社団法人自動車技術会により、自動車技術における多大な貢献、功績を認められた個人に贈られる。
また、「浅原賞学術奨励賞」は自動車技術に関する優秀な論文を発表した、将来性のある新進の満37歳未満の個人が対象となる。
「技術開発賞」は、自動車技術の発展に役立つ新製品または新技術を開発した個人およびその共同開発者が対象で、マツダ社員が「技術開発賞」を受賞するのは7年連続という。
今回受賞した技術、技術者および受賞理由は下記の通り。
■「技術開発賞」受賞対象
エンジンとシャシーの協調によるG-Vectoring制御車両の開発
■受賞理由(第68回自動車技術会賞 受賞者発表パンフレット引用)
本技術はドライバーのハンドル操作に基づいたエンジン駆動トルク制御によって、これまでの自動車では別々にコントロールされていた前後方向と横方向の運動を滑らかに統合する世界初の車両運動制御システムである。
車両のロール-ピッチ姿を一貫させ、四輪のタイヤ接地荷重を最適化することで、ドライバーが運転しやすい車両特性を実現した。
本システムでライントレース性が大きく向上し、ドライバーのハンドル修正操作が減少するとともに、運転の疲労を低減することができる。また、連続的な加速度ベクトル変化によって乗員の揺れも低減し、快適な乗り心地を実現できる。
市街地の直進走行から緊急回避シーンに至るまで、一貫した制御効果を発揮するという点において、横運動のみを制御対象としてきた従来のシャシー技術とは一線を画す領域横断のブレークスルーを実現した点が高く評価される。
■受賞者
梅津大輔 マツダ株式会社 車両開発本部 操安性能開発部
高原康典 マツダ株式会社 統合制御システム開発本部 電子基板開発部
砂原 修 マツダ株式会社 統合制御システム開発本部
山門 誠 神奈川工科大学(G-Vectoring Control共同開発者)
高橋絢也 株式会社日立製作所(G-Vectoring Control共同開発者)
■「浅原賞学術奨励賞」受賞対象
エンジン筒内流動場における壁面熱伝達の研究(第1報)壁面熱伝達現象の解明
■受賞理由(第68回自動車技術会賞 受賞者発表パンフレット引用)
エンジンの冷却損失を予測する壁面熱伝達モデルは、従来開発現場で活用可能な計算負荷に抑えるため、発達した壁乱流を仮定したモデルが使われてきた。しかし、近年の研究でエンジン燃焼室内では、壁乱流が未発達な流動場が存在することが明らかになってきた。
本研究では、エンジン筒内を模擬した流れを急速圧縮膨張装置で再現し、壁近傍の流動特性と壁面熱伝達量との関係を分析した。その結果、壁乱流が未発達な流動場においても高精度かつ低計算負荷で冷却損失を予測できる考え方を新たに構築できた。従来、壁乱流が発達していない流動場においては、計算負荷と冷却損失予測精度はトレードオフの関係にあったが、これをブレークスルーした意義は大きく、自動車用内燃機関の性能予測精度向上と新技術の創出において、受賞者の今後の活躍が期待される。
■受賞者
原田雄司 マツダ株式会社 技術研究所