OKIは、NTTドコモと共同で、時速160kmの高速走行中の車両で広域エリアの映像モニタリングが可能なシステム「フライングビュー」のフィールド実験に成功した。
本システムは、OKIが5Gの展開を見据え開発した、高速走行中の車両の全周囲からの自由視点で広域エリアの映像モニタリングを可能としたもの。実験は2018年2月8日、富士スピードウェイにおいて行い、OKIは「フライングビュー」を、ドコモは車両と実験環境を用意し、本システムを搭載した車両を時速約160kmで走行させ、「フライングビュー」の映像の取得が可能なことを検証した。
なお、5Gとは第5世代移動通信方式のこと。LTEやLTE-Advancedの次世代の通信方式で、2010年と比較して単位面積あたり1000倍の大容量化、ピークレートは10Gbps超であり、2010年と比較して100倍の高速化、1ms以下の無線区間の伝送遅延化、2010年と比較して100倍以上の多数端末の同時接続などを目標としている。
来たる5G時代には、移動体からの大容量かつリアルタイムな映像配信が可能となる。これにともない、走行車両から送られた映像が集められ、移動体での監視や情報収集など、さまざまな用途に活用されることが期待される。OKIはこの点に着目し、用途のひとつとしてモータースポーツの新しい観戦スタイルの実現を取り上げ、ドコモの協力のもと、実際のサーキットを高速走行する車両への「フライングビュー」の可用性を今回の実験で確認した。
本実験で使用したOKIの「フライングビュー」は、4台の車載カメラと映像合成部で構成されている。カメラ映像の合成は、映像処理能力の高いFPGA*上で行うことにより、リアルタイムかつ小型省電力のシステムでの大容量高画質の映像処理を実現し、走行中車両の全周囲で、リアルタイムで死角のないシームレスな広域エリア映像を得ることが可能。これにより、周囲監視や操縦支援、景観鑑賞など多様な用途に適用可能だ。また、取得した映像は、タッチスクリーン操作により、ユーザーが俯瞰する視点を3次元的に360度リアルタイムで任意に変更でき、あらゆる角度から自車両の全周囲映像モニタリングが行えるため、臨場感あふれる映像やストップ画面での鮮明な画像の確認が可能となる。
*field-programmable gate array:製造後に購入者や設計者が構成を設定できる集積回路であり、広義にはPLD(プログラマブルロジックデバイス)の一種
OKIは、本システムの今回の検証結果を踏まえ、フィールドでの実証実験を重ね、今後、5Gやコネクテッドカー社会の進展に向けて、フライングビュー映像の遠隔地モニタリングの展開に幅広く取り組んでいく予定。
映像モニタリングシステム「フライングビュー」の概要
・映像入力
カメラ1台当りの有効画像サイズ1280pixel、720line、30fps(ハイビジョンテレビ相当)の速度(人間の目に見える快適な速度、配信動画のフレームレート)で有効画像を全て取込むことが可能。
・映像合成
前後左右などの4台の魚眼カメラの映像をそれぞれ歪み補正し、カメラ映像を合成して仮想カメラ視点位置から見た俯瞰映像を生成。
・自車両モデルの描画
自車両モデルの3D描画を行い、仮想カメラ視点位置から見た車両の映像を生成。
・映像出力
HDMIインターフェースで有効画像サイズ1920pixel、1080line、60fps(フルハイビジョンテレビ相当)の速度(近年のゲーム機程度)で出力。