北京モーターショーに出展されたスバルの新型フォレスターは、モーターアシスト使用の新型パワーユニット、『INTELLIGENT BOXER インテリジェント・ボクサー』。スバルにとって初めて中国市場に投入するモーターアシスト仕様車となる。
5代目となる新型フォレスターは、3月のニューヨーク国際モーターショーでワールドプレミアされた。北米仕様の新型フォレスターのパワートレーンは、2.5ℓ自然吸気の水平対向4気筒(FB25DI直噴仕様)+CVT(チェーン式CVT=リニアトロニック)である。日本仕様も同様で、2.5ℓFB25DI+リニアトロニックと予告されている。
さて、今回北京で発表された新型フォレスターが搭載するのは、スバルが『INTELLIGENT BOXER』と名付けたモーターアシスト仕様だ。ちなみに、このINTELLIGENT BOXERは中国仕様のユニット名ということだ。
現地取材でも技術的詳細は明らかにできなかったが、「新型パワーユニット搭載者は、モーターアシストによりAWDモデルとしてSUVカテゴリートップレベルの低燃費を実現する等、優れた環境性能を確保しながら、愉しい走りを実現している」とプレスリリースにあるように、このモデルは、「モーターアシスト」であっていわゆる「ハイブリッド(ストロングハイブリッド)」ではないということに気がつく。
スバルが公開している画像を見ると、アシスト用モーターは、リニアトロニックの後端に配置されていて、いわゆるP3=ギヤアウトプット式モーター/ジェネレーターであることがわかる。
上の写真は、先代スバルXVハイブリッドに採用されていたリニアトロニックHEV仕様だ。チェーン式CVTのリニアトロニックとモーターを一体化したもので、トルクコンバーターからセカンダリープーリーまではコンベンショナルなリニアトロニックを流用。モーターはプライマリープーリーと直結して後方に配置されている。セカンダリープーリーの下流には多板クラッチが設けられている。
XVハイブリッドの場合は、モーターは燃費改善デバイスというより、「電気ターボ」的な使われ方をしていた。
今回のINTELLIGENT BOXERも、基本的な構造は、このリニアトロニックHEV仕様と同じだろう。「モーターアシスト」と明言しているくらいだから、いわゆる「EV走行」はできないか、できたとしても発進時にエンジンが始動するまでくらいだと予想する。
トランクの下に搭載されるバッテリーは、先代XVハイブリッドと比べるとだいぶ大きい。特に高さ方向がだいぶ厚くなっているのが見てとれる。先代XVハイブリッドはニッケル水素電池を積んでいたが、新型のINTELLIGENT BOXERは、引き続きニッケル水素電池を積むのだろうか? トヨタとの協業のおかげでニッケル水素電池を低コストで載せられるのは予想できるが、車載用電池はニッケル水素電池からリチウムイオン電池へとすでに移行している。INTELLIGENT BOXERもリチウムイオン電池を積むのではないだろうか?
新型フォレスターにINTELLIGENT BOXERを積む場合は、SUVだからトランクの床下に余裕があるが、同時に発表されたXVに積む場合は、このバッテリーパックの大きさはラゲッジスペースに影響を及ぼしそうだ。となれば、より薄いバッテリーという仕様もあるかもしれない。
また、「AWDモデルとしてSUVカテゴリートップレベルの低燃費を実現する」ということになると、単なるモーターアシストだけで、それができるか、という疑問もある。
マツダCX-5のディーゼル(AWD)が18.0km/ℓ(JC08)、日産エクストレイル・ハイブリッドのAWDが20.0km/ℓといったところが燃費的にはライバルになろう。
現行フォレスターが16.0km/ℓだから、INTELLIGENT BOXERを積めば、JC08で20km/ℓ程度は達成できるということなのだろうか。それとも、(可能性は低いが)48Vシステムのマイルドハイブリッドシステムを採用するのだろうか?
「48V化するなら、リヤアクスルを直接駆動するeRAD(エレクトリック・リヤ・アクスル・ドライブ)を搭載する方が手っ取り早いじゃないか?」という疑問もあるが、スバルは機械的に4輪を駆動する方式にこだわりがある。現段階でeRADを採用するとは個人的には思えない。
そもそもINTELLIGENT BOXERのエンジンは、FB25DI(2.5ℓ水平対向4気筒自然吸気直噴)なのか、FB20DI(2.0ℓ水平対向4気筒自然吸気直噴)なのか? 将来的には過給エンジンとの組み合わせもあるのか? とさまざまな空想をしてしまう。
賢いボクサーが今後、リングでどんな戦い方をしてくれるのか、楽しみだ。