大人になった息子と何を話していいのかわからない。そんな思いを抱えていた私は、息子を思い切ってフィールドへ誘ってみることにした。それもキャンピングカーを駆使して、気ままな二人旅に出かけたのだ。家で向き合った時とは違い、非日常が生み出す雰囲気に不思議と会話も弾んだ。
会話が減った息子と共にキャンピングカーの旅へ
最近では自然を楽しみつつ、野外で優雅かつ贅沢な時間を堪能するグランピング(グラマラス×キャンピングの造語)が人気だ。中には手ぶらで出かけて行き、キャンプ場がお膳立てしてくれる快適なサイトで過ごすという、まるでリゾートホテルに宿泊するようなキャンプスタイルを提供してくれる施設まである。
そんな誰もが羨ましくなるキャンプのさらに上をいくのが、キャンピングカーの旅ではないだろうか。なにしろフィールドでの家がそのまま移動してくれるのだから、気が向いた時に好きな所へ身ひとつで出かけることができるのだ。
「最近、息子と会話していないな」。
ふと、そんな思いが頭をかすめた私は、思い切って息子をフィールドへ誘ってみた。息子がまだ幼い頃は、家族揃ってよくキャンプや旅行に行ったものだが、いつの頃からか家族はそれぞれの時間を優先するようになってしまった。だからこそ「久しぶりに二人で、ゆっくり旅をしてみようか」と、考えたのだ。
そして旅の相棒には、迷わずキャンピングカーを選んだ。それは先に触れた通り、行き先も日数も思いのままに決められるからである。今回の計画は1泊2日のショートトリップ。出かける日の天候や、気分次第で行き先を決めようという、文字通りの行き当たりばったりの旅にすることにした。目の前に現れたキャンピングカーを見た息子は、私に隠れて微笑んだようだった。男だけの旅に少し抵抗を覚えていた彼も、やはり〝動く隠れ家〞と言えるキャンピングカーは魅力的なのであろう。
出発の朝、抜けるような秋の空を眺めているうちに、この空と山と海のすべてを満喫したくなってきた。だが2日間という短い期間で、そんな贅沢を叶えてくれる場所が果たしてあるのだろうか。そんな思いで地図を覗き込む。こんな自由な発想も、キャンピングカー旅の楽しみであることは間違いない。
二人で悩んだ末に決めたのが、茨木県を回遊する旅だ。地味なイメージがつきまとうエリアではあるが、
実は関東平野で空の広さを体感でき、さらに奥まった場所では山並みも美しい。加えて雄大な太平洋に面しているので、海の幸を味わうこともできるのだ。大都会東京からさほど離れていないにもかかわらず、これだけの自然があふれている、これ以上はないという穴場なのである。
そして宿泊地は茨城県大子町(だいごまち)にあるオートキャンプ場「グリンヴィラ」に決定。ここはAC電源を備えた本格的なキャンピングカーサイトを有しているだけでなく、各種キャンプ用品のレンタルが可能なうえ、温泉施設まで揃っている。キャンプ初心者からベテランまで、満足が得られるキャンプ場なのだ。ということで、まずは常磐自動車道を北上するところから旅は始まった。