デンソーとカナダのBlackBerry Limited は、自動車のコックピット内の情報マネジメントを行なうHMI(Human Machine Interface)技術として、世界初となる統合HMIプラットフォームを共同開発した。
自動車の安全性や利便性の向上にともない、車両がドライバーに伝える情報は増加し、車室内には、複数のHMI製品が搭載されている。それぞれのHMI製品を作動させるためには、その特性にあわせ、個別に複数のOSが必要となるが、たとえば、安全性に関わるメーターには高い信頼性、進化スピードが速いマルチメディアディスプレイには最先端の表示を実現するOSが求められる。一方、従来のOSは、複数のマイコンで個別に制御されていて、表示内容や音声を複雑に連携、協調させることは一筋縄でいかないなどHMI技術ならではの難しい面があった。
今回両社が開発した統合HMIプラットフォームは、BlackBerry社製の「QNX Hypervisor(ハイパーバイザー)」と呼ばれる仮想化技術を、インテル社の協力のもと。インテル Atom®プロセッサー A3900シリーズ(開発コード名: Apollo Lake)<*1>に搭載し、世界で初めて自動車のコックピットへ応用したもの。ハイパーバイザー技術は、特性の異なる複数のOSを独立化させ、ひとつのマイコンで統合制御することで、HMI製品同士の連携、協調を可能としたのが特徴で、必要な情報を、適切なタイミングで適切な機器に表示することができる。
具体的には、運転中の車両周辺やドライバーの状況に応じた注意喚起・警告を、わかりやすい表現で、わかりやすい場所(表示器)へ、違和感のないタイミングで表現したり、液晶で構成されたメーター画面とセンターディスプレイの連携により、一体感のあるアニメーション表示や、メーター画面内へのナビ画面の一部表示などが可能となる。また、メーター画面とセンターディスプレイ画面に高い描画力が必要な場合も、ひとつのマイコンの性能を更新することで、双方の機器への描画に必要な処理性能を確保するメリットがある。つまり、商品力向上とコストダウンの両立に貢献するというわけだ。
デンソーは、これまでメーターやカーナビゲーションシステム、ヘッドアップディスプレイなど、自動車の安全や利便に貢献する様々なHMI製品の開発を行なってきているが、これらの製品開発で培った技術やノウハウと、車載用として初めてハイパーバイザー技術の実用化に向け開発を行なうBlackBerry社の技術を組み合わせることで、今後の自動車の進化を支える情報マネジメントHMIの開発に取り組んでいく。
開発した統合HMIプラットフォームは、表示や音声など各種のHMI製品を、最適に連携、協調できるシステムを2019年以降、順次車両搭載予定。しかも、安価での実現を目指すという。
デンソーは、2018年1月9日~1月12日に米国ラスベガスにて開催される国際家電見本市CES2018で、本製品のデモ機を展示する。
<*1>
インテル® Atom® プロセッサー A3900シリーズ用に最適化されたユニークで革新的なグラフィックス共有テクノロジーを用いることで、安全上重要な3Dワークロードと、そうでない3Dワークロードを同じグラフィックハードウェア上で、優先度を決めてオペレーションすることを実現する。