
「上を向いて歩こう」で知られる坂本九さんのベストアルバム「坂本九」(CD3枚組、ユニバーサルミュージック)が、8月20日に発売される。
最新技術で再調整したリマスタリング音源で、56曲(トークなどを含めると61トラック)が収録されている。
「上を向いて歩こう」「見上げてごらん夜の星を」「幸せなら手をたたこう」「明日があるさ」「レットキス(ジェンカ)」などの代表曲を網羅。覆面歌手XQS名義でリリースした「ぶっちぎりNO文句」など、レアな作品も収録されている。ジャケット写真のように、笑顔の九ちゃんの“暖かさ”も伝わるアルバムになっている。
坂本さんは1985年(昭60)8月12日の日航ジャンボ機墜落事故で43歳で亡くなった。羽田発大阪行きの日本航空123便(ボーイング747)が午後6時12分の離陸約44分後に、群馬県上野村の御巣鷹山に墜落。乗客乗員524名のうち520名が死亡した史上最悪の航空事故だった。後部圧力隔壁の破損等に伴う制御不能が主な原因と言われる。中埜肇・阪神タイガース球団社長、浦上郁雄・ハウス食品工業社長、女優・北原遙子さんらが死去した。
間もなく没後40年となる。そして今年は昭和が続いていれば100年。NHKがラジオ放送を開始してから100年にあたる。
41年(昭16)生まれの坂本さんは昭和を駆け抜け、NHKの歌番組「夢であいましょう」など放送から国民的な人気者となった。関係者は「節目の年に、坂本さんのエンターテインメント性をあらためて伝えたい」としている。
坂本さんはエルヴィス・プレスリーにあこがれて歌い始めた。16歳でプロの世界に入り、ロカビリー歌手として東京・日劇ウエスタンカーニバルのステージにも立った。59年にレコードデビューした。
61年8月にNHK「夢であいましょう」で、「上を向いて歩こう」(作詞・永六輔、作曲・中村八大)を初披露すると、問い合わせが殺到した。同10月に東芝レコードから発売されると、大ヒットとなった。
それを受け、ヨーロッパ各国で日本を想起させる「SUKIYAKI」に改題され発売された。
63年5月3日に同タイトルで全米発売されると、同6月15日付の全米シングルチャート(Billboard Hot 100)で1位を獲得。日本人歌手の日本語曲の全米1位は史上初の快挙で、現在も坂本さんしかいない。
3週連続で1位となり、約3カ月にわたりチャートインした。坂本さんの成功は、イギリスで人気が沸騰していたザ・ビートルズの全米デビューを遅らせたと言われている。
坂本さんはかつて「もう『上を向いて歩こう』は僕だけの歌じゃない。世界中の人の歌なんだ。僕はそのメッセンジャーボーイになれただけでも光栄です」と謙虚に話した。
ベスト盤だけでなく、坂本さんの出演映画のDVD発売など、既にさまざまな話題が発表されている。来年には、岡田准一が中村八大を演じる映画「SUKIYAKI 上を向いて歩こう」(瀬々敬久監督)の公開が予定されている。
坂本九さんが各方面で、あらためてクローズされそうだ。【笹森文彦】