starthome-logo 無料ゲーム
starthome-logo

ポルシェ恐るべし。911GT3の超高回転型フラット6(MA175型)を分解する


水平対向エンジン……自動車用ではポルシェとスバルの2社、モーターサイクル用ではBMWとホンダの2社。ようするに量産自動車・モーターサイクル用水平対向エンジンを造っているメーカーは、この4社しか存在しないのだ。それでも、我々は「FLAT」とか「BOXER」と呼ばれる、この形式のエンジンに惹かれる。そこで、量産型水平対向エンジンの最高峰ともいえる、ポルシェの3.8ℓ・MA175型エンジンを分解。ディテールまで迫ってみた。


協力◎ポルシェジャパン

エンジンを上から見てみる。

そして、これが底面である。排気の取り回しが見える。中央左がオイルポンプユニット、その右側がマーレ製オイルフィルターだ。

今回、ポルシェジャパンの協力で分解・撮影させていただいたのは、『MA175』型3.8ℓ水平対向6気筒エンジンだ。991GT3用のエンジンである。GT3はFIA競技規定のGT3枠へのホモロゲートのために仕立てられたモデルである。




MA175は991型911の前記型GT3が搭載するエンジンだ。現在のポルシェ911の主力エンジンは3.0ℓ水平対向6気筒ターボだが、このMA175は自然吸気エンジン。3.8ℓで475psという出力を8250rpmで発揮するという超高回転型フラット6である。102.0mmというビッグボアに77.5mmというショートストローク。ボアピッチは118mmだ。


圧縮比は12.9。燃料供給はDI(筒内燃料直接噴射)である。

「MA175」の文字が見える。

シリンダーヘッドカバーにはMWAとある。

外された排気系。排気系はエバスペッヒャー社(Eberspacher)製。

分解してこそわかったこともいろいろあった。




ドライサンプ方式を採るMA175型だが、今回はオイルタンクはあらかじめ取り外された状態での撮影となった。水冷化された996のGT3以降はオイルタンクをエンジンに背負うような形で搭載する。ドライサンプ化の狙いはもちろん、低重心にすること。クランクの撹拌抵抗を少なくすることなどが挙げられる。水平対向エンジンを積んで走ると、コーナーでは遠心力でオイルが外側に片寄る。外側はヘッド側に向かって戻って来なくなるし、内側はヘッドにオイルが向かわなくなる。そこで、サクションポンプを用いてヘッド側からオイルを強制的に吸引。圧力ポンプで押し出すわけだ。そのオイルポンプの存在感に感動した。エンジン底部のオイルパンを剥がして出てきたオイルポンプユニットは、まるで小さなプラントようだ。

オイルポンプはSHW社(SHW AG)製

クランクからチェーンで駆動されるオイルポンプ。そのチェーンの横にあるのが4連サクションポンプが見える。

PHOTO:SHW このようなポンプが4連で収まっているはずだ。

シリンダーヘッドを燃焼室側から見る。シリンダーヘッドはAlSi7MgCu0.2でできている。

シリンダーヘッドはAlSi7MgCu0.2でできている。

直径が大きい方(上に見える方)が吸気バルブで、その吸気バルブ側の縁にインジェクターの噴射口が顔を出している。中央は点火プラグが刺さる箇所。

シリンダーヘッドカバーを外したところ。茶色いパーツは治具で、エンジンパーツではない。

バルブ駆動はフィンガーフォロワーを介して行なわれる。(主力のターボユニットは4気筒も含めてダイレクト)DLCコーティングされて真っ黒に見える。

ここだけ見ると「直列3気筒エンジン」のようだが、ボア径102.0mmというビッグボアのエンジンは、ほかにはGMシボレー・コルベット(LS7)のボア104.8mmくらいか。

ガスケットを外したところ。

ピストンを取り外したシリンダーを覗き込む。コンロッドはチタン合金製でパンクル(Pankl)社製。

底部に2本のピストンオイルジェットが見える。

アルミ鍛造ピストンを見る。このピストンが2013年製。走行1000km程度の状態だそう。

エンジン底面からオイルポンプを取り外し、オイルウィンデージトレイを取り外した状態。6気筒分の部屋が見える。水平対向といえば、いわゆる「カミソリクランク」。水平対向で全長を短くし、回転バランスの面で有利にするには、対向するシリンダーにおけるクランクピンのオフセットを小さくする必要がある。そのためにはクランクウェブを薄くせざるを得なくなるので必然的にカミソリクランクになる。

ピストンの薄さもチタン製コンロッドも、レーシングエンジンのよう。ピストンピンもフィンガーフォロワーもDLC(ダイヤモンド・ライク・カーボン)コーティングが施されて真っ黒。


エンジンの補機パーツも、シリンダーブロックも、もちろんシリンダーブロックも、水平対向エンジンを造り続けてきたポルシェのこだわりとノウハウが込められている。ひと言でいうと「ポルシェ、恐るべし」と感嘆させられるエンジンだ。

MA175


水平対向6気筒DOHC


排気量:3799cc


ボア×ストローク:102.0×77.5mm


圧縮比:12.9


最高出力:350kW(475ps)/8250rpm


最大トルク:440Nm/6250


燃料供給:DI(筒内燃料直接噴射)


ブロック材:アルミ合金


Motor Fan illustrated Vol.134『水平対向エンジン』

MFiとしてVol.20以来の水平対向エンジン特集。ポルシェ、スバル、ホンダ、BMW、ライトプレーン(飛行機)の水平対向エンジンをじっくり図解する。『水平対向エンジンの現在地』を探る。11/15発売。表紙のエンジンは、このMA175。

    Loading...
    アクセスランキング
    game_banner
    Starthome

    StartHomeカテゴリー

    Copyright 2024
    ©KINGSOFT JAPAN INC. ALL RIGHTS RESERVED.