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燃料電池車の未来が開ける? 燃料電池向けの高性能な非フッ素系電解質膜の開発に成功


NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)事業において、山梨大学は、固体高分子形燃料電池向けの高性能な非フッ素系電解質膜の開発に成功した。

山梨大学が開発した電解質膜は、非フッ素系の中で耐久性に優れる炭化水素系の高分子構造に着目し、分子レベルで組成比を最適化することにより、これまで課題のひとつであった化学耐久性を飛躍的に向上させることに成功した。


この研究成果により、2025年以降のFCVの本格普及期に求められる燃料電池用電解質膜の分子設計指針の確立に大きく貢献することが期待される。


本研究成果は、米国科学振興協会(AAAS)が発行するScience姉妹誌「Science Advances」のオンライン版に、2017年10月25日14時(米国東部標準時)付けで掲載された。

図2 従来開発していた炭化水素系電解質膜と今回新しく開発したSPP-QP電解質膜の分子構造と化学的な劣化に対する特徴の比較

概要

水素社会の実現に向け、2014年に経済産業省が策定した「水素・燃料電池戦略ロードマップ」では、燃料電池自動車(FCV)の普及拡大のために燃料電池システムのコストを大幅に低減し、「2030年までに80万台程度の普及を目指す」という目標が掲げられており、NEDOは、2025年以降の本格普及期に求められるFCV用燃料電池の要求値(スタック出力密度:4kW/ℓ以上、耐久性:50,000時間以上、等)を設定し、新規材料の設計指針に資する技術の開発を目的とした事業を2015年度より実施している。




燃料電池は、水素と空気中の酸素(供給ガス)を触媒上で反応させて、水を生成する際に発生するエネルギーを電力に変換するシステムである。近年、高エネルギー変換効率、低公害の発電装置である燃料電池は、エネルギーや環境問題解決の観点から注目を集めており、固体高分子形燃料電池(PEFC)は家庭用燃料電池(エネファーム)やFCVとして実用化された。


PEFCで用いられる電解質膜は、主にフッ素系電解質膜が広く利用されているが、供給ガス透過性、環境適合性、コストなどが課題となっている。一方で、これらの課題を克服できる新たな電解質膜として構成元素にフッ素を含まない炭化水素系電解質膜の可能性が検討されてきたが、成膜性、化学耐久性、機械特性(特に柔軟性)に課題があり、これまで燃料電池への応用は困難だと考えられてきた。


今回、NEDO事業において、国立大学法人山梨大学の宮武健治教授、三宅純平助教らの研究グループは、高性能な非フッ素系電解質膜の開発に成功した。




具体的には、極めて耐久性に優れる炭化水素系高分子であるポリフェニレン(主鎖がベンゼン環のみから成る芳香族系高分子のこと)構造に着目し、分子レベルで組成比を最適化することにより新たなポリフェニレン電解質(SPP-QP)を合成し、これが透明で柔軟な薄膜を形成し化学耐久性にも優れるということを見いだした(図1、図2)。


化学耐久性はフェントン試験(酸化安定性を評価する手法)を実施し、従来開発していた炭化水素系電解質膜と比較して、酸化に対して非常に安定であることを示した。また、SPP-QP電解質膜を燃料電池に搭載した場合の初期発電特性は、現行のフッ素系電解質膜と比較して同等であることが確認された。




今回の成果により、PEFCの作動条件下でも高い性能を発揮できる非フッ素系電解質膜の分子設計指針が見いだされたことになり、今後、この設計指針をさらに発展させて展開していくことで、2025年以降のFCVの本格普及に向けた課題解決やエネファームのさらなる導入拡大に貢献していく。

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