
NHKは8日、3日に89歳で死去した巨人長嶋茂雄終身名誉監督の生涯を振り返ったNHKスペシャル「さよならミスタープロ野球」を放送した。
「ON砲」として巨人黄金期を築いた盟友のソフトバンク王貞治球団会長(85)、元巨人でヤンキースGM付特別アドバイザーの愛弟子松井秀喜氏(50)など関係者の証言がVTRで紹介された。
09年に独占取材が行われた番組内では、現役時代には語らなかった本音も明かした。
長嶋茂雄という存在から逃げ出したくなったかという問いに「あるね。50年の中にね。(期待に)応えられないときもあるよ。ぱっと自分から逃げて、忘れられるものがあれば良いなって気持ちはありましたけどね」と当時の苦悩を振り返った。
期待に重責を感じても、弱音を回りにこぼさない人柄だった。「孤独でしたね。孤独というのは自分自身が人の中に出ないこと。自分自身の中にしまっておくことが大事」と話した。
当時は「天才の長嶋」「努力の王」というイメージが世間に浸透していた。王氏の1本足打法を指導した元巨人打撃コーチの荒川博氏は、長嶋氏の世間のイメージと正反対に位置する努力家な一面を明かした。
荒川氏の練習日誌には、長嶋氏が練習を自らお願いしていた記録が残っていた。「首位打者(3割5分)にいてもちょっと当たらなくなると勉強しにくる」「特別練習を3日間行った」といったメモが記されていた。荒川氏は「長嶋は努力の塊ですよ。習う姿勢が全然違う。目もギラギラしていて」とうれしそうに回顧。
天才のイメージと対照的に、練習の虫だった長嶋さんだが、ほとんどファンには練習に打ち込む姿を見せたがらなかったという。長嶋さんは「やっぱり試合に立って初めてファンは自分を見るのだから、練習は見せない。そういうものでしょう、プロ野球というものは」。弱い姿は見せず、いいところだけを見せたいという強いポリシーを信じて実行し続けた。