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【初試乗】強豪を突き放す、新型XC60の躍進!


ボルボ人気の勢いを加速すべく、ミディアムSUVのXC60が二代目へと進化を遂げた。安全性能や北欧独自のデザインセンスを受け継ぎながら、新型の最大の見所は走りの完成度が大きく前進したこと。ガソリン、ディーゼル、PHEVの中から、まず先手を切って日本に導入された、2.0ℓガソリンターボエンジンを搭載した「T5 AWD Inscription」の魅力を掘り下げてみよう。




REPORT◎吉田拓生(Takuo Yoshida)


PHOTO◎平野 陽(Akio Hirano)

新プラットフォームを採用。得意の安全装備もより充実。

ボルボの新型デビューにおいて、今回のXC60ほど注目を集めたことがあっただろうか。ミドルサイズのSUVであるXC60は、世界で最も売れているボルボという側面もあるが、我が国ではXC90にはじまったデザインコンシャスな新世代ボルボの最新版という位置づけにおいても興味をひいているのだと思う。




2009年に本邦デビューを飾った初代XC60は、日本初となる完全停止の自動ブレーキを備えたモデルだった。使い勝手やデザイン以上に安全性能に注力しているボルボらしいトピックと言えるだろう。さらに興味深いのは、先代XC60がモデル末期になればなるほど売れていたという事実で、その背景には昨年施されたエンジンのダウンサイジング化などのテコ入れも効いていると思われる。一方でBMW X3やアウディQ5、メルセデスGLCといったライバルが激しくパイを取り合うこのサイズのSUVがいよいよ従来の4ドアセダンにとって代わる定番スタイルとして認識されはじめたと解釈することもできる。




新型XC60はサイズ感や想定カスタマーこそ従来通りだが、その中身は完全に刷新されている。プラットフォームはSPA(スケーラブル・プロダクト・アーキテクチャー)と呼ばれる新世代ボルボの大型車用を採用し、内外装のデザインは好評のXC90の流れを踏襲する躍動感と近未来感に溢れたものになっている。




パワートレーンはガソリン直列4気筒ターボのT5と、ガソリン直4ターボにスーパーチャージャーとモーターを組み合わせた最上級版であるT8の2種類が第一弾として導入される。今回はXC60のメインを張るであろうT5搭載のAWDモデルに試乗することができた。試乗車には30万円のオプションとなるエアサス+FOUR-Cアクティブパフォーマンスシャシーが装備されていた。

従来のイメージを破った味わい深い北欧デザイン。

左右に流れる連続したラインや加飾の質感の高さなどで、ラグジュアリーな雰囲気を演出。流木をモチーフにしたホワイトアッシュの木目パネルも見どころのひとつ。操作スイッチ・ボタンが合計8個のみで、先進感と使い勝手が融合されている。

新型XC60を目の当たりにして意外だったのは全高の低さだった。スタイリングの精悍なイメージも手伝っているのだが、数値上でも初代と比べて55mm低く、新型X3やQ5よりも数mm低められている。




初代XC60は従来のボルボのイメージ通りの実直なモデルで、現在の眼で見ても古くは感じない。けれど、もし新型XC60と横並びにして比べたら古さを感じずにいられないだろう。新型はTハンマーと呼ばれるTの字が横に向いたスモールライトに象徴される緊張感に溢れる外観もさることながらインテリアの意匠がそれ以上に目新しい。




iPadよりひと回り小さなタッチパネル式の9インチ縦長センターディスプレイは、ナビやスマホとの連携、車両設定、オーディオ、エアコン、シートコントロールといったあらゆる機能が集約されている。このため新型XC60のダッシュパネルには、メカニカルなスイッチが実に8個しか存在しない。すっきりとした操作系は初代i Phoneが誕生した10年前には使いこなせなかっただろうが、デジタル全盛の現在であれば「こうあるべき」設計だと言い切れる。




このセンターディスプレイを核として、北欧ならではの「すっきりとして温かみに溢れる」室内空間が広がる。ダッシュボードパネルに沿ってカーブするウッドパネルは。ドリフトウッドと言って流木をイメージしている。まさにシンプルで味わい深い北欧のテイストだ。




我が国における初代XC60は、従来からのボルボ・ファンの視界にしか映らない控えめなモデルに思えていたが、新型はこれまでボルボ車を少しも意識したことがなかったようなデザインに敏感な人たちからも大いに注目を集めるに違いない。


 昨今は走り出す前に機能をチェックしなければならない新型車がほとんどで、新型XC60もその部類に入る。センターディスプレイには左右と上にスワイプして現れるページが隠れていて、最初にこれを理解する必要がある。またステアリング上の左側のスイッチ群で操作するクルーズコントロールも必修である。これらの機能はいきなり直感的に操作することは難しいが、一度覚えてしまえばすぐに使いこなせるようになる人がほとんどだと思う。

走りの変化が新型の真骨頂。エアサス装着車が本命!

新型XC60のドライブフィールは独特である。ボディ自体は硬質な印象だがエアサスによって支配されたアシの当たりは柔らかくて乗り心地は非常にいい。またステアリングやブレーキの軽めのタッチ、そして低回転から滲み出るようなトルクの出方によって車体が実際よりもはるかに軽く感じられるというのもXC90やV90を開祖とする新世代ボルボのテイストといえる。軽快、スッキリ、クリアな感じは、内外装のデザインだけでなく乗り心地にまで共通している新型XC60のイメージなのである。




今回はエアサス装備のモデル以外に標準の金属スプリングを備えたモデルにも試乗できた。こういった比較は、通常は価格の高いエアサスの圧勝に終わることが多いのだけれど、新型XC60に関しては甲乙つけがたいと感じた。エアサスは渋滞時のノロノロ運転レベルの速度域と山道で飛ばした時のハイスピード域で微かにバタつくのだが、金属スプリングはエアサスが苦手としていたピンとキリの速度域で良い動きを見せる。そして金属スプリング装備車の方が挙動の予測もつきやすい。




とはいえエアサスはドライバビリティ以外の効果もあるので、装着する価値は大いにある。エコ、コンフォート、ダイナミック、オフロードの各モードごとに適正な車高に変化し、特にコンフォートでは速度によって3段階に車高が変化する。またエントリーアシストでは車高40mm下がり、荷積みモードでは50mm下がるという配慮も実用的だ。




アダプティブクルーズコントロールに追加されたパイロットアシストⅡと呼ばれる車線維持機能は特に高速道路では優秀で、ステアリングさえ握っていればレベル2の自動走行を享受することができる。またステアリングの支援が組み込まれたことで、一般的な衝突回避のみならず車線変更時に後方からの衝突を回避する機能なども標準装備されている。




インパクトの強いスタイリッシュな見た目と、それに優るとも劣らない高性能が融合する新世代ボルボ。XC60はその実力を一般に広める役目を立派に果たす1台となるだろう。

12.3インチの全面液晶メーターを採用する。ナビ設定時には中央の画面に案内が表示される。
先代より開口部を50%拡大したパノラミック・サンルーフ。日中駐車中に外気温が25度以上になると自動でサンシェードが閉まる機能も付いている。


「Pure」「Hybrid」「Power」「Off Road」の4つのドライブモードを用意する。
コンサート・モードはイェーテボリ・コンサートホールの音響を再現。同ホールで最高のスポットとされる「席番号577」で聴く音を目指し、チューニングされている。


先代に比べてホイールベースが90mm拡大。その恩恵は室内のゆとりにつながっている。後席はシアターレイアウトが採用され、眺めも良好。「Inscription」には、リヤシートヒーターも標準装備。
運転席のシート構造は兄貴分のXC90とまったく同じ。セグメント№1の座り心地の良さが自慢。「Inscription」はマッサージやベンチレーションなどが付いた多機能タイプとなる。


容量はフル乗車時505ℓ(T8は468ℓ)、最大時1432ℓ(T8は1395ℓ)。後席は6対4分割可倒式を採用。荷室側面に配置されたスイッチで簡単に格納可能。床面がフラットなので荷物も積み込みやすい。
XC60シリーズ全体のホイールデザインは5タイプを用意。「Inscription」(T8以外)には、10本スポークの19インチアルミホイールを装着。足元の精悍さをグッと引き締めている。


【SPECIFICATIONS】


ボルボXC60 T5 AWD Inscription


■ボディサイズ:全長 4690×全幅 1900×全高1660 mm ホイールベース:2865mm ■車両重量:1830kg ■エンジン:直列4気筒DOHCターボ ボア×ストローク:82.0×93.2mm 圧縮比:10.8  総排気量:1968cc 最高出力:187kW(254ps)/5500rpm 最大トルク:350Nm(35.7kgm)/1500~4800rpm ■トランスミッション:8速AT ■駆動方式:AWD ■サスペンション形式(前/後):ダブルウイッシュボーン/マルチリンク ■ブレーキ(前後):ディスク ■タイヤサイズ:235/55R19 ■環境性能(JC08モード)燃料消費率:12.6km/ℓ ■車両本体価格:679万円
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