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【参戦記】メディア対抗ロードスター4時間耐久レース


毎年、我々メディアが参戦することで知られる「メディア対抗ロードスター 4時間耐久レース」。今年は、ジャーナリストの清水和夫氏率いるスタート・ユア・エンジンズと我がWEBチームがタッグを組み参戦することとなった。果たしてその結果は? 全記録をお伝えする。




REPORT◎鈴木 明(Akira SUZUKI)


PHOTO◎市 健治(Kenji ICHI)

今年は、60ℓでゴールすること……。

「かなり厳しいね。60ℓでゴールするには……」


夏の終わりを告げるメディア対抗ロードスター4時間耐久レースは、ファーストドライバーであるモータージャーナリスト、清水和夫選手のスタート前のコメントどおりの展開となった。




それは今に始まったことではない。初代ロードスターが登場した1989年に筑波サーキットで開催されて以来、今年で28回目を迎えた、この4時間耐久は必ずしも「レース=速さを競う」という方程式が当てはまらない。特に現行ロードスターが登場した2015年シーズンから使用できる総ガソリン量と給油回数は年々厳しくなっている。2015年は80ℓ(給油2回/1回の給油量20ℓ)、2016年は70ℓ(給油2回/1回の給油量15ℓ)、3シーズン目となった2017年は60ℓ(給油1回/1回の給油量20ℓ)に減少。もはや4時間を全開で走りきることは、不可能に近いレギュレーションの下で戦わなければならないのだ。




そうなると、求められるのは燃費を重視した走り方。エンジンの最高回転数の上限を決め、エンジンブレーキでの減速、コースティング走行(惰性走行。アクセルオフしたり、クラッチを切ったりする)などを駆使して、とにかくアクセルオンの状態を少なくしながらスピードを極力落とさず走ること。ファーストプライオリティは速さではなく、燃費なのである。まさに特殊なレースと言えるが、実際に毎年最終ラップで燃料が尽きてゴールできないチームが続出する光景を見ていると、レースマネージメントに加えて、戦略を含めた高いチーム力も必要となってくる。

その点、今年のモーターファンウェブ・チーム(以下、MFW/自動車動画サイトStart your enginesとの混成チーム)は心強い。5名のドライバーラインアップの内、モータージャーナリスト清水和夫選手と編集部吉岡選手に加え、他3名は国産自動車メーカーの錚々たるキャリアを持つ面々。C-HRの開発責任者でありながら国内レースはもとよりニュルブルクリンクでのレース経験を持つトヨタの古場博之選手、チーフテストドライバーとしてニュルブルクリンクでのテスト経験豊富なホンダの木立純一選手、テストドライバーを育成するスバルドライビングアカデミー(SDA)でインストラクターを務める秋山徹選手が加わり、速さは言うに及ばず、走りに対する分析力が高く、クルマのメカニズムを熟知するメンバーが揃った。




いつにも増して燃費レースの様相が強くなる中、参加26チームの間ではレース前から駆け引きは始まっていたが、単純に昨年の優勝チームの総周回数180(筑波サーキット・コース2000の全長が2045m/総使用燃料60ℓ)から導けば、リッターあたり6.135kmを死守しなければならない計算だ。ただしトップの周回数が増えてしまえば、ゴールできない可能性もあるため、6.2km/ℓから6.3km/ℓを目標とするチームが大半で、MFWチームも同様の数値を掲げてはいたのだが……。

ドライバー交代は1スティント45分目安、180ラップを目指す!

予選は古場選手が担当した。決勝では1分間のピットストップが課せられていることもあって、燃費データを採ることを重視せず、少しでも上位を狙うべく全開アタックで挑んだ。




「台数が多いので、なかなかクリアラップが取れませんでしたが、アタック自体は最速タイムが出た4ラップ目に一度シフトミスしたのが痛かったですね。ピットインしてタイヤの空気圧を220kpaに下げたのも影響したようで、第1ヘアピンやダンロップのターンインでの挙動が少し不安定になってしまい、その後はタイムアップできませんでした。ちなみに燃費はレブリミットの7000rpmまで回して車載の燃費計は4.6km/ℓでした」と、古場選手は予選を振り返った。リザルトは4位からコンマ4秒の間に10台がひしめく混戦となったが、1分11秒359で惜しくも13位となった。




そこで古場選手の走行データ(燃費やタイヤの空気圧)や、目標燃費などをもとに、チームがレース前に立てた戦略はこうだ。①シフト時のエンジン最高回転数は5000rpm前後を上限とし、②最終コーナーはブレーキングせずエンブレ走行で燃費を稼ぎ、③平均燃費のターゲットは6.2km/ℓというプランだ。そして④ドライバー交代は1スティント45分目安で行い、180ラップを目指す。

スタートドライバーは、清水選手!

そして午後4時。朝からサーキットトライアルや体験試乗会、ロードスター・パーティレースなど、マツダ車一色のお祭りイベントの一日を締めくくるレースとして4時間耐久はスタートした。




MFWチームの第一走者は清水選手。1ラップ目で5台オーバーパスし、すぐにピットインして60秒のハンディキャップを消化(22位で復帰)。そこから一気に追い上げにかかる。上位グループが1分16秒台で走るなか、8周目まで1分14秒〜15秒台でラップを刻み、ポジションを上げていく。




36周を走って実質9位(見た目の順位は6位)で秋山選手に繋ぎ、無事大役をこなし戻ってきた清水選手は「燃費重視のレースはあまり経験がなくて、試行錯誤しながら走っていみたけど、マックス5000rpmで走ると5.3km/ℓくらいの燃費で、途中から4500rpmに抑えました。やはり重要なのは最終コーナー。5速で進入して、あまりブレーキを踏まずにエンブレと舵角を与えた際の減速負荷をうまく使いながらクリップまでに車速を落として5速のままで抜けるのがベストかな。常にレブカウンターと燃費計と睨めっこしながら我慢の走りが続いたけど、結果は5.4km/ℓでした。これで勘弁してください(笑)」と、燃費レースの難しさをリアルに感じたようだ。順位的には大幅にアップしたが、目標燃費はクリアできず、なかなかさじ加減が難しい。

2番手の秋山選手は初参戦ながら燃費を伸ばすことに成功!

次にバトンを受けた初参戦の秋山選手は「清水さんからクルマを預かった時の燃費計が5.4km/ℓでこのままゴールできるか、不安に思いました(笑)」と走行後に話してくれたが、前半はペースを落として燃費走行に徹した。「基本的にはルーティーンの5500rpm、要所要所で5000rpmに落としてシフトチェンジしていましたが、なんとか燃費を伸ばすことができました」と、5.8km/ℓまで燃費を改善。1時間経過時の順位は11位だったが(1位 マツダ・ワークスチーム/2位 カーグラフィック・チーム/3位 ル・ボラン・チーム)、38ラップを走り、実質10位でピットイン(見た目の順位は2位)。無事走行を終えた。やはり燃費を重視すると順位が下がる。バランスを採るのはそう簡単ではない。

3番手の木内選手は、6.0km/ℓを狙うも……。

3番手は昨年もこのレースを走ったホンダのエーステストドライバー、木立選手。ドライバーチェンジのタイミングで、唯一許されている20ℓの給油も同時に行なった。




木立選手もやはり序盤はタイムよりも燃料を減らさない走りを心掛け、ラップを重ねるごとにタイムを上げる作戦だ。終盤はほぼ1分16台をコンスタントに刻み続け、淡々と周回を重ねた。




「自分のスティントで6.0km/ℓまで燃費を上げて欲しいとチームからリクエストがあったので、終始5000rpmマックスで走りました。ですが他車とのカラミがとても多くて、狙ったペースで走れず、結果的に5.9km/ℓ止まりでしたね。でもロードスターは人とクルマの距離感が絶妙で、自分のミスがすぐにミスとしてわかりますし、うまくドライビングできればちゃんと応えてくれます。ドライビングスキルを磨くには最高のクルマだと感じました。楽しかったです」と、37ラップの中で体感した、このレースの難しさと、ロードスターの素晴らしさを語ってくれた。




2時間経過時点でのポジションはかなり燃費走行を重視したのに加え、無給油のチームが走行していることもあって18位(1位はGAORASPORTS/2位はカービュー・チーム/3位はマツダ・ワークスチーム)だった。

4番手の吉岡選手は、1分16秒台をひたすらキープ!

すっかり陽も暮れ、レースも終盤。残るはこのレースの優勝経験者である、ふたりのドライバーに託された。まず4番手の吉岡選手は「最終走者に繋げる走りをする」と宣言していたとおり、とにかく現状維持の燃費で1分16秒台をひたすらキープし続けた。




昨年ロードスターのパーティーレースにシリーズ参戦していただけあって、コンスタントな走りが頼もしい。3時間経過時点でトップと同一周回で36秒452の差の8位まで上昇し、燃費は5.9km/ℓを維持。32ラップを消化して早めにピットに戻ってきた。




「今年は燃料が10ℓ少ないですから、かなりヒヤヒヤしながら走ってきました。このレースの醍醐味はリレーみたいにバトンを繋いでいくことなので、ボクはその繋ぎ役として燃費計が6.0km/ℓに近い数字を目指しながらトップを狙える位置につけることを目指しました。あとは最後の古場さんがまとめてくれるはずです(笑)」。

ゴールを目指すも、ヒヤヒヤ、ドキドキの古場選手。

チェッカーが振られるまで残り45分。最終ドライバーの古場選手にロードスターが渡された時の燃費は5.9km/ℓと、目標には到達できていなかったが、5.4km/ℓから数値を上げてきた。それでも燃料タンクにどれくらい燃料が残っているのかは当然ながら誰もわからない。ピットの緊張感が一気に増す。しかし、もっともプレッシャーのかかる場面でステアリングを握っていた古場選手の走りは冷静だった。




「スタートしてから8ラップまでは5000rpmまで抑えて、それ以降は覚悟を決めて5500rpmシフトで前を追いました」と、安定の1分16秒台で走りながら、時に1分15秒台のラップを刻んで姿勢を崩さない。ここまで4人が繋いできた想いを乗せて古場選手はアタックを続けた。




どのチームも最後の勝負に出るなか、その一方で4耐恒例の光景といってはなんだが、残り10分を過ぎて燃料切れでリタイアするチームが出始める。それはMFWチームにも襲いかかっていた。




「残り20分を切ったところで燃料計はEの位置に。さすがに5000rpmに落としました。そこからはヒヤヒヤです。トップがどの位置にいるのかわからないので、いつゴールするのかわからないのがとにかく不安でしたよ。ラスト2ラップの第2ヘアピンでガス欠症状が出てしまって、ファイナルラップはとにかく祈りながら走りました」

ピットの目の前でガス欠ゴール!

チームメンバーは見守るしか術がない。そんな状況のなか、トップのJ WAVEチームがゴールしてからなかなか現れない古場選手に一瞬不安がよぎる——そこにスロー走行のロードスターが最終コーナーに現れた——古場選手である。なんとかフィニッシュ!! しかもMFWチームのピット前まで燃料が尽きてストップするという、劇的な幕切れとなった。




結果は9位だったものの、あらためて思ったのは、4耐は何かあるレースだということ。10ℓ少ない燃料の中、5人のドライバーが燃費を意識しながらバトンを繋いでチーム力を発揮してゴール直後にガス欠ストップするというドラマティンクな展開を誰が想像しただろうか。燃費レースだけにより接戦が予想されたが、自動車関係に従事するプロフェッションたちが様々な経験と知識を駆使して、厳しい耐久レースに挑戦する姿は実に清々しい光景だった。

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