モータースポーツ活動に裏付けられた
納得のドライブフィールを味わう
KW/カーヴェー
輸入車に詳しくない人であれば、読み方も知らないかもしれない。KW=カーヴェー。世界一過酷と称された2018年ニュル24時間耐久レースで頂点に立った、世界最強のサスペンションメーカーだ。
ドイツ、フィヒテンブルクという小さな町で生まれたKWは、1995年の創業当初、たった3人しかスタッフがいなかった。それが2018年のニュル24時間耐久レースでは優勝したマンタイレーシングのポルシェ911GT3Rの足元を支え、同じそのレースで150台中74台にサスペンションを供給するメーカーへと成長を遂げた。
KWのクオリティと実力を語るのに、この事実以上の説明は不要なのかもしれない。
日本の国産車に乗る人には馴染みが薄いかもしれないが、KWは現在、世界で最も親しまれているサスペンションメーカーと言っても過言ではない。特に欧州車の車高調としては定番中の定番で、本国ドイツはもちろん、ヨーロッパからアジアまで広くファンを抱える世界的ビッグネームだ。
現在は欧州の自動車メーカーへ製品を供給するサプライヤーとしても活躍しているが、これは市販車への大量生産を請け負うわけではなく、自動車メーカーのレーシングカーやスペシャルロードカーのみがその対象。
誰にでも何にでも提供するわけではなく、少量での限定生産にこだわるマイスター的な立ち位置を貫いているのも、KWの特徴だ。
そんなKWの製品は、すべてが自社工場内で内製されるのが原則。シェルケースからロッド、マウントといった金属加工から、組み付け、計測に至るまですべてが自社でまかなわれる。
現代的な設備も備わるが、バルブやロッドの組み付けなどは、バラツキを避けるために熟練の職人が手作業で。3D・CADをはじめとする最先端機器と、職人の技術とがハイブリッドされて、KWのサスペンションは完成する。
そうした工程の中で生み出された先進の技術も、多数。強い負荷がかかったときにバルブを開き、減衰力を一時的に弱めて乗り心地を確保する「バイパスバルブ」。耐腐食性に優れたステンレス加工技術である「イノックスライン」。ツインチューブ構造のダンピング技術や、アプリの開発も含めた電子制御式ダンパー技術など、KW独自のアプローチはすべて、この手作業にこだわった生産過程の中から誕生しているのだ。
ちなみにこうして開発されたサスペンションたちは、世界中にKW製アフターパーツとして輸出されていく。またこれ以外にレース用車両のための試作品や、プライベーターのレーシングカーに対しての製作を請け負うことも。
たった3名で始まったKWは、10回以上の拡張を繰り返していまや広大な敷地面積となり、社員も約260名という巨大企業へと生まれ変わっている。
KWは、F1マシンの設計開発に使用されるシミュレーターシステムもファクトリーに所有する。これを駆使し、あらゆる走行状態を再現することで膨大な情報を収集する。そこから生まれた試作品を、実車に装着してテストドライブを実施。ワインディングから市街地、ときにはサーキットにも出向き、きめ細かくセッティングを煮詰めていく。
つまり実際にレーシングカーを解析する際にも使うというシミュレーターで理論を、テストドライブで実践を追求するということ。サーキット、ストリートを問わず、KWのサスペンションが高い評価を受けるのは、こうした真摯な開発姿勢に負うところも大なのだ。
そんなKWは2018年、インポーターとして活躍してきた橋本コーポレーションとの共同で、KWの日本法人を設立した。KWの信条は、常に現場でナマの声を聞くこと。日本の声により深く耳を傾け、日本車用サスペンションの開発に生かしたいという狙いも、だからそこには込められる。
ミニバン用として初のキット、アルファード&ヴェルファイア用も誕生させたKW。世界の足のドライブフィール、日本でも、ぜひ。
KW本社から開発チームが来日、日本でデータを収集して完成させたアルファード&ヴェルファイア用のバージョン3車高調。突き上げやロールがなく、安定したハンドリングを実現できるのが特徴。減衰は伸び16段、縮み12段。
【SPECIFICATION】
Version-3
LINE UP:30アルファード&ヴェルファイア、レヴォーグほか
PRICE:25万6000円〜
問:KWオートモーティブジャパン 075-771-7351
http://www.kwsuspensions.jp
スタイルワゴン2019年7月号より
[スタイルワゴン・ドレスアップナビ]