過日。いわゆるひとつのプロフェッショナル・レスリング、平たく言うところの「プロレス」を生まれて初めて生観戦してきた。結論として非常に楽しい時間を過ごすことができたわけだが、同時に「プロレスとクルマとは、少々ではあるが似ている部分があるのだな」とも思った次第だ。
プロレスラーの「手加減」から見えてきた面白さ
今さら言うまでもなく、プロレスとは、武道家などが行う試合とはかなり様相が異なる「興行」である。自分は門外漢の素人ゆえ、プロレスのマッチにおけるいわゆる筋書きというのがどこまであるのか、あるいは無いのか、そこは知らない。
だがひとつだけ確実に言えるのは――まぁ今さら声を大にして言うことでもないのだが――選手らは明らかに「手加減」をしているということだ。
無論、例えば試合中に繰り出される逆水平(いわゆる空手チョップ)は、胸板がペラッペラな自分などが受ければ即座に肋骨が折れるだろうレベルの力が込められている。選手にもよるが、生で見る気合の入った逆水平は恐ろしいほどの迫力だ。
だがそれでも、わたしが観戦したマッチにおけるすべての技は「なるべく重篤なダメージは残らないように」という基本ポリシーの下、きわめて冷静なプロフェッショナリズムに基づいて慎重にマネージされていた。
もちろんテレビジョンや雑誌、書籍などを通じてそのことは知っていたわけだが、改めて生でその「手加減」を見たわたくしは、果たして興ざめしただろうか?
とんでもない。逆に「これは凄い! そして面白い!」と思った。
手加減しながらも必然的に見えてしまう「実力」
本気を出してしまうと興行が成り立たないため、選手各位は決して相手を潰すための打撃技や絞め技等は繰り出さないわけだが、それでも選手それぞれの「真の実力」は確実に透けて見えた。そこが、非常に面白いと思った。
そして「考えてみればクルマもそうだよな」と思ったのだ。
大昔のクルマはさておき、近年の乗用車というのは大衆車レベルであってもなかなかどうしてハイなパフォーマンスを有しているため、本気でアクセルを踏んでしまうとけっこう大変なことになる。