「ごかせ号」はざっくり、こんなバス
- 高速バスの運行に実績のあるバス会社が運行!
- 足元もゆったり! コンセント付き3列独立シート
- バス乗り放題「SUNQパス」全九州版での乗車も可能
九州最大の都市「福岡」。九州一の交通の要所でもあり、全国有数の高速バス発展地域としても知られています。
現在、福岡からは県内、九州島内はもとより、遠くは名古屋、東京まで高速バスが運行されていますが、その中から今回は、福岡と高千穂・延岡の間を結ぶ西日本鉄道(以下:西鉄バス)の高速バス「ごかせ号」をご紹介。
九州山地の美しい景色と夜行バス同様の充実した車内設備が売りの「ごかせ号」に乗車してみた様子や感想をレポートします!
旅の始まりは博多駅前の一大バスターミナル「博多バスターミナル」
高千穂・延岡行き「ごかせ号」は、JR博多駅に隣接する一大バスターミナル「博多バスターミナル」から発車します。
博多バスターミナルへのアクセス方法およびバスターミナルの詳細は、こちらの記事が参考になります。
バスターミナルは9階建て構造になっており、1階が西鉄の市内路線バス乗り場と一部の高速バスの降車場、2階が高速バス専用の降車場、3階が高速バス乗り場、4階以上がテナントになっています。
「ごかせ号」に乗車する際は、エスカレーターで3階へ移動します。
3階高速バス乗り場は、きっぷ売り場のほか、待合室、自動販売機、コインロッカー、トイレ、洗面所が完備されており、ゆったりとバスを待つことができます。一部のコインロッカーは、交通系ICカードで支払いができるようになっています。
足元ゆったり夜行バス仕様! 3列独立シートの車内
福岡~高千穂・延岡線「ごかせ号」は、西鉄バスと宮崎交通の共同運行路線。2社とも高速バスの運行では実績があり、知名度の高いバス会社です。今回、私が乗車したのは博多バスターミナルを8:00に出発する西鉄バスの担当便でした。
西鉄バス担当便の車両は原則として3列独立シート車ですが、車両運用の都合で本州行き(東京、名古屋、岡山行き)の夜行バス用車両になる日があるそうです。
この日は名古屋線「どんたく号」や岡山線「ペガサス号」などで見覚えのある車両が充てられていました。
「ごかせ号」は、3階35番乗り場から発車します。発車の5分~10分前にはバスが乗り場に着けられ、乗車改札が始まります。
では、早速乗車してみましょう。
幅広な車内には、座り心地の良い3列独立シートが並びます。最後部まで一人掛けになっており、西鉄バス独自のプライベートカーテンも装備されています。しかし、「ごかせ号」は夜行バスではないため、プライベートカーテンは使用できません。
シートには可動式枕・レッグレスト・フットレスト(足置き台)を装備。リクライニングの角度も深く、ゆったりとくつろぐことができます。
通常は足を伸ばしにくい最前列の座席も、切込みを入れて奥行きを深くするなど、ゆったりと足が延ばせられるように工夫されています。
各座席にはコンセントも完備。携帯電話やスマートフォンの充電に便利です。ロックする方向の矢印も印刷されています。
写真はありませんが、車内中央部にはトイレも完備。サービスエリアでの休憩停車はありますが、万が一というときに嬉しい設備です。
シートポケットには、リーフレットや情報誌(にしてつニュース、天神発見フリーマガジン「ep.」)が入っています。
枚数に制限があるものの、網棚にはブランケットが備えられています。膝元が寒いときやひと眠りしたいときに重宝します。
残念ながらWi-Fiサービスは提供されていませんが、それを除けば夜行バスに匹敵するサービス内容といえます。昼間走る高速バスとしてはハイグレードな印象を受けました。
次の乗車場は西鉄天神高速バスターミナル
8:00定刻に博多バスターミナルを発車したバスは、20分ほどで西鉄高速バスターミナルに到着。
西鉄天神高速バスターミナルは、博多バスターミナルと並ぶ一大バスターミナルで、西鉄バスの基幹ターミナルとしても位置付けられています。1日の発着本数約1,400便にくわえ利用者数約2万人という数字は、バスタ新宿に匹敵するといわれています。
西鉄天神高速バスターミナルへのアクセス方法およびバスターミナルの詳細は、こちらの記事が参考になります。
なお、バスターミナルの2階には、西鉄電車の西鉄福岡(天神)駅があります。西鉄電車を利用される方は、西鉄天神高速バスターミナルで乗降するのが便利です。
こちらで10名の乗客を乗せ、総勢20名ほどになったバスは、8:20定刻に西鉄天神高速バスターミナルを発車しました。
車内を見回してみると、20代~40代の乗客が目立ちます。平日の「ごかせ号」は比較的空いていることが多いのですが、この日は高校生の団体利用があったことから、いつも以上に賑やかでした。
発車後、乗務員から自己紹介と運行経路、車内設備の案内が肉声で行われます。過不足ない丁寧な案内は、さすがといったところでしょうか。
バスは、天神北ランプから福岡都市高速道路へ。左手に博多港が見えます。
福岡都市高速道路から九州自動車道に入ったのは、天神北ランプを通過してから約20分後。高速基山、久留米インター、八女インターで乗車扱いを行い、のどかな風景を眺めながら高千穂・延岡へ向けて九州自動車道を南下していきます。
ところが、熊本県に入ると急に雨が強くなり、次第に前がほとんど見えなくなっていきます。
それでもバスは安全な速度を保って走行を続け、益城熊本インターを過ぎたあたりからは、雨は次第に小降りになりました。
ぜひとも見ておきたい! 松橋~延岡間の車窓からの眺め
博多バスターミナルを発車して約2時間。バスは休憩場所の緑川パーキングエリアに到着します。こちらでは10:12から10:30の18分間停車しました。
パーキングエリアにはトイレはもちろん、飲食店や売店も入居しています。停車時間が短いため、飲食店で食事というわけにはいきませんが、こちらを発車すると、運行状況によっては到着まで下車できませんので、トイレや買い物はこちらで済ませておきましょう。
発車時刻および注意事項は、車内前方のモニターに表示されます。
雨の中を走り続けたバスも、しばしの休息です。
緑川パーキングエリアを発車したバスは、少し先の松橋インターで高速道路とお別れし、ここから先は、九州山地を横切る国道218号と自動車専用道路「北方延岡道路」を経由して高千穂・延岡へと向かいます。
国道218号は、カーブやアップダウンがきつい道路として有名ですが、一面に広がるのどかな九州山地は絶景です。ぜひとも見ておきたいですね。
残念ながら、この日はあいにくの雨模様でしたが、晴れているときは、写真のような絶景を楽しむことができます。
熊本県中東部の美里町と山都町、そして宮崎県北部の五ヶ瀬町を経由したバスは、やがて高千穂町の市街地へ。ほぼ定刻の12:02にバス高千穂バスセンターに到着しました。
高千穂町は、宮崎県北端部に位置する人口約12,000人の町。国の名勝や天然記念物に指定されている「高千穂峡」や、日本の滝百選の一つにも選ばれている「真名井の滝(まないのたき)」があることで有名です。
高千穂峡へは、高千穂バスセンターから宮崎交通の路線バスで行くこともできます(運賃:150円)。
こちらでは、高校生の団体客を中心に、約半数の乗客が下車しました。順調に進んだ場合、高千穂バスセンターにおいても時間調整を兼ねて休憩を行うのですが、雨の影響で遅れ気味であったことから、すぐに発車となりました。
高千穂バスセンターを発車したバスは、引き続き国道218号を延岡へ向けてひた走ります。低く垂れこめた雲が、幻想的な風景をつくりだしています。
青雲橋、早日渡を通過したバスは、蔵田交差点から自動車専用道路の「北方延岡道路」へ。10分ほど走行し、延岡インターを通過したバスは、定刻よりも若干早い12:57に終点の延岡駅に到着しました。
延岡市は、宮崎県北部の中心都市。人口は約12万人です。旭化成の創業地工場群があり、同社の企業城下町として知られています。
同市の玄関口であるJR延岡駅周辺は、複合施設「エンクロス」の完成で大きく生まれ変わりました。
かつてあった延岡駅前バスセンターは廃止され、現在は駅前ロータリーがバス乗り場になっています。高速バスの乗り場は、エンクロスの向かいにあります。
バス案内所は、エンクロスの北側にあります。高速バス乗り場から少し離れていますので、特に乗車券購入時は注意しましょう。
バスを待つあいだ、時間を潰したいならエンクロスを利用しましょう。施設内には待合スペース、トイレ、洗面所にくわえ、スターバックスコーヒーや蔦屋書店などがあります。JR延岡駅の改札横にはコンビニがあるほか、駅構内にはコインロッカーもあります。
九州島内のバス乗り放題「SUNQパス」全九州版での乗車も可能
福岡~延岡間は、JR九州が運行する特急列車「ソニック」と「にちりん」を乗り継ぐか、または「にちりんシーガイア」に乗ってアクセスすることもできます。この場合、移動時間は約4時間~4時間30分、移動費は片道7,700円となります。
福岡~高千穂間は直通の交通機関がないため、高千穂にアクセスしたい場合は、延岡での乗り換えが必要です。延岡~高千穂間をむすぶ宮崎交通の路線バス(運賃:1,790円)への乗車時間をあわせると、特急列車で移動した場合にかかる福岡~高千穂間の所要時間は最短でも6時間弱。移動費は片道9,490円となります。
これに対し、高速バスである福岡~高千穂・延岡線「ごかせ号」は、福岡~高千穂間の運賃が片道4,020円、福岡~延岡間の運賃が片道4,970円となっています。
往復割引運賃、WEB割引運賃、WEB回数券、4枚綴り回数券といった割引運賃も設定されているほか、九州内の高速バス・路線バスが乗り放題になる「SUNQパス」も利用できます。全九州版の「SUNQパス」(3日間用11,000円・4日間用14,000円)を利用すれば、座席券を発行(無料)するだけで乗車することが可能です。
コンセント付きの3列独立シート車で、所要時間がJRが運行する鉄道を利用する場合とさほど変わらず、しかもJRの約6割以下の運賃で移動できることを考えると、「ごかせ号」のコストパフォーマンスは相当高いといえるでしょう。
なお、週末や繁忙期は混み合いますので、利用する際は早めに予約・購入することをおすすめします。
福岡~延岡間は夜行高速バスも運行している!
今回ご紹介した「ごかせ号」は昼間に走る高速バスですが、福岡~延岡間は夜行高速バスも運行されています。(夜行便は主に週末や繁忙期)
西鉄バスと宮崎交通が共同運行する「福岡~延岡宮崎夜行線」は、博多バスターミナル発車時刻は23:15(延岡駅到着時刻は5:17)、延岡駅発車時刻は0:42(博多バスターミナルの到着時刻は6:44)となっています。福岡行きは福岡空港国際線ターミナルにも停車するので、飛行機の乗り継ぎにも便利です。
運賃は福岡~延岡間6,470円。往復割引運賃が設定されているほか、「ごかせ号」の往復券・回数券をお持ちの方は「夜行差額券」(福岡~延岡間1,500円)を追加で購入するか、差額料金1,500円を現金で支払うことで乗車できます。
車両は3列独立シート28人乗りの夜行高速仕様車で運行。ゆったりと寝ながら移動することができます。
時間を有効に使いたい方や、現地への滞在時間を長くとりたい方には便利なバスであるといえましょう。
まとめ
今回は福岡から延岡まで利用しましたが、乗り換えなしで安く移動できる利便性の良さがこのバスの最大の売りではないかと感じました。
さらに、ゆったりとした3列独立シートと充実した車内設備のおかげで、道中疲れずに済みます。
また、途中の美しい景色も見逃せません。残念ながら今回は悪天候下での移動でしたが、晴れているときの松橋から延岡までの景色は一見の価値ありです。晴れの日にもう一度じっくり車窓からの眺めを楽しみたいと思いました。
充実した車内設備で、「景色を楽しみながらのんびりと移動したい」「乗り換えなしで移動したい」という方にとって最適なバスではないでしょうか。
(須田浩司)