6月1日は「気象記念日」です。東京気象台(現在の気象庁)が設立され、気象業務が始まったことを記念して制定されました。
今では、私たちの生活に欠かせない天気予報や防災情報。その原点は、150年前、東京の一角で始まった地震と気象の観測にあります。
この記事では、気象記念日の由来をはじめ、記念日にまつわる気象業務の歴史や、関連する豆知識についてわかりやすくご紹介します。
気象記念日とは? 6月1日が記念日になった理由
気象記念日は、1875年(明治8年)6月1日に現在の気象庁の前身にあたる東京気象台が設立され、業務を開始した日です。このことを記念して、1942年(昭和17年)に制定されました。
今年2025年は、気象業務(※)が始まってちょうど150周年を迎えます。
(※「気象業務」には、気象以外にも海洋、地震、津波、火山などに関することが含まれます。)
気象庁では毎年6月1日に合わせて記念式典が催され、気象業務に功績のあった団体・個人に対して、国土交通大臣や気象庁長官から表彰が行われます。
気象業務開始当時の東京気象台(復元図)
<世界気象デーとの違いは?>
気象記念日は日本独自の記念日ですが、これとは別に世界的な気象に関する記念日として、3月23日の「世界気象デー」があります。世界気象デーは、世界気象機関(WMO)が1950年3月23日に世界気象機関条約が発効したことを記念して制定しました。
WMOは、気象知識の普及や国際的な気象業務への理解の促進のため、毎年、世界気象デーに合わせてキャンペーンを行っています。
日本もWMOの加盟国であり、気象庁でもこのキャンペーンの内容を発信する活動を行っています。
日本の気象業務はどのように始まった?
では、日本の気象業務はどのように始まったのでしょうか。
当時の東京気象台は、内務省地理寮量地課によって、現在の気象庁庁舎近くの港区虎ノ門あたりに設置されました。その場所で、6月1日に地震観測、続く6月5日に気象観測が、最初の業務としてスタートしたのです。
地震観測には、パルミエリ地震計という機器が使われました。ただし、今のように地震波を記録できるようなものではなく、地震が起きたことを検知し、時刻を記録する感震器のようなものだったそうです。
また気象観測については、当時の記録によれば、晴雨計・乾湿計・雨量計・地温計・風速計などが設置されていたようです。観測開始当初のデータは、降水量と気温のみですが、気象庁ホームページで見ることができます。
◆気象庁「過去の気象データ検索(東京1875年6月)」
気象業務が始まった当初の3か月間は、イギリス人のジョイネル氏がたった1人で地震・気象観測のすべてを担当していました。ジョイネル氏は、測量助師として来日し、明治政府に気象観測の重要性を提言した人物です。
当然ながら、今のように自動でデータ収集はできませんでしたから、毎回目視で記録をする必要がありました。彼は、1日に3回気象観測を行い、地震が起きるたびに地震計のもとへ急いで駆けつけていたそうです。ようやく9月になって日本人のメンバーが加わり、観測技術の継承が行われました。
ここで注意したいのが、この1875年6月1日は、"日本初の気象観測が始まった日”ではないということです。
東京に先駆けて、政府として最初に観測を行ったのは北海道の函館気候測量所(現在の函館地方気象台)でした。開拓使函館支庁の福士成豊氏が函館の自宅に観測機器を設置し、1872年(明治5年)8月26日に気象観測を始めました。地震についても、機器を使わない体感による方法ではあるものの、1873年(明治6年)1月に観測を開始しています。
東京気象台で気象観測を開始した当初の観測データ(1875年6月)
同じく6月1日は日本で天気予報が始まった日
なお、6月1日は、日本で天気予報が始まった日でもあります。
気象業務が始まったちょうど9年後の1884年(明治17年)6月1日に、日本で一般向けの天気予報がはじまりました。
天気予報は1日3回発表され、日本初の天気予報は、「全国一般風ノ向キハ定リナシ天気ハ変リ易シ但シ雨天勝チ」という日本全国の予想をたった一つの文で表現するものでした。これを現代風に訳すと、「全国的に風向は定まらず、天気は変わりやすいでしょう。ただ、雨が降りやすい見込みです。」になります。
当初は東京の派出所などに掲示されるだけだったため、見られる人が限られていましたが、その後、新聞やラジオでも伝えられるようになり、天気予報は広く普及していきました。
日本初の天気予報(1884年6月1日発表)
気象庁マスコットキャラクター「はれるん」の誕生日も6月1日
ところで、警視庁の「ピーポくん」同様、気象庁にもマスコットキャラクターがいるのをご存知でしょうか?
気象庁のマスコットキャラクターは「はれるん」といい、太陽、雲、雨をモチーフとしたデザインをしています。
このはれるんの誕生日は、ずばり、気象記念日の6月1日。ちなみに2004年生まれです。
そんなはれるんは、気象庁ホームページや気象科学館などでその姿を見ることができます。
ちなみに筆者のお気に入りは、気象庁ホームページの天気予報などのページで、データ読み込み中に表示される「Now loading」画面のはれるん。一瞬だけ表示される、ものすごい勢いで走るはれるんの姿に、思わずくすりとしてしまいます。ぜひ、一度覗いてみてください。
気象庁のマスコットキャラクター はれるん
まとめ
気象業務が始まって150年。東京の一角で始まった業務は、今ではアメダス、気象レーダー、気象衛星などを使って、全国を24時間365日きめ細やかに観測できるようになりました。また、スーパーコンピュータや最新の技術を駆使して、台風や線状降水帯をはじめとした予報精度の向上、大規模地震対策に取り組むなど、今も進化を続けています。
6月1日の「気象記念日」は、私たちの暮らしを支える天気予報や防災情報の大切さを改めて考えるきっかけにしてみてはいかがでしょうか。
(参考)
気象庁「気象記念日について」
気象庁「地震計の写真に見る気象庁の地震観測の歴史」
気象庁「旧地震観測網 全国業務履歴」