炎天下に車を停めると、車内温度はどんな速度でどのくらい上昇するのでしょうか? 今回は、まだそれほど暑くない6月の晴れた日に、停車している車の温度上昇に関する検証を行いました。その結果、初夏でも、車内の温度は非常に危険な暑さになることが分かりました。
初夏(6月)の晴天下、車内の温度はどのくらい上昇するか検証を実施
「停車中の車に置き去りにされた小さい子供が命を落とした」というようなニュースに触れるたびに、心を痛める方は多くいらっしゃると思います。2022年9月には、送迎用のバスに置き去りにされた女の子が重度の熱中症で死亡するという痛ましい事件が起きています。
真夏の炎天下に停車すると、車内温度がかなりの暑さとなることは容易に想像できることでしょう。では、真夏になる前の初夏の時期ではどうでしょうか? 真夏に比べてそれほど暑くはならないだろうと思いませんか?
今回、予想最高気温27度だった6月の良く晴れた日に、停車している閉めきった車内の温度は一体どのくらいまで上昇するのか、検証を行いました。
検証は、住宅街にあるアスファルトの駐車場に黒色ボディーの車を停車し、後部座席に温度計を設置して行いました。
検証開始からわずか15分で車内の温度は約40度に上昇
検証は2024年6月5日に屋外駐車場にて行いました。
検証を行うにあたって、車内の温度を車外の気温と同じ26度にし、午前10時から計測を開始。定期的に車内の温度を確認しました。
すると、検証開始15分後には、車外の気温は実験開始時と変わらない26度だったのに対し、エアコンをつけず窓を閉め切った状態で停車していた車の車内温度は、39.2度を記録しました。
実験開始30分後の10時半には車内の温度は42.6度となり、実験開始1時間後の11時には45.0度に達しました。
その後も車内は45度以上の高温が続き、実験開始3時間半後の13時半の車内の温度は49.6度となり、実験開始から4時間後の14時には検証に使用した温度計の測定可能範囲である50.0度に達しました。
送迎バスの置き去り防止安全装置の設置が義務化
2023年4月1日より、全国の幼稚園、認定こども園、保育所、特別支援学校などに対し、幼児等の所在確認と、送迎バス等への安全装置の設置が義務化されています。
安全装置に関するガイドラインでは、降車時確認式と自動検知式の要件がまとめられており、双方のどちらか、または両方の機能を持つ製品が、適合する安全装置として認められています。
・降車時確認式の安全装置
エンジン停止後に、車内に置き去りとなっている子供がいないかどうかの確認を促す音声やブザーによる警報が発せられ、バスの運転手や乗務員が社内確認後、車内後方に取り付けた停止ボタンを操作することで警報が止まるといったもの。
・自動検知式の安全装置
車内に設置したセンサーによって車内の確認がされ、エンジン停止から一定時間後に置き去りにされた子供をセンサーが検知したら、車外に警報を鳴らし知らせるといったもの。
短時間であっても危険
検証の結果、初夏の時期でもよく晴れた日に停車中の車は、ものの数十分で命に危険を及ぼしかねない温度に上昇してしまうことが分かりました。
特に、乳幼児は体温調節機能が未発達で、高温下では短時間で体温が上昇し、死に至る危険性があります。寝ているからという理由で車内に子どもを残すことは大変危険です。同様に高齢者も体温調節機能が低下しているため、注意が必要です。
三洋貿易株式会社が2023年に5月末から6月初めに幼稚園・保育園で送迎を担当する267名と、全国の小学生以下の子どもを乗せて車を運転するドライバー3,377名を対象に行った、車内置き去りの実態、危険性の認識、行動の変化などに関するオンラインで調査によると、「車内に子どもだけが残されることは、今後も発生すると思いますか」という質問に対し、80.8%が「今後も発生する」(今後さらに増加+少しは増加+今と変わらないくらい発生)と回答しました。 また、「車内に子どもだけ残されることは、なぜ起こると思いますか」という質問に対しては、「保護者の意識が低いから」が最多で60.5%、「用事を済ませる間に子どもを見てくれる人がいないから」が35.9%、「他のことに気を取られて子どもが車内にいることを忘れてしまうから」が22.3%という結果になっています。
まだ真夏日や猛暑日となる真夏の暑い時期ではないからと油断せず、ほんの短い時間でも、決してお子様を置き去りにして車を離れてはいけません。
もし、車内に置き去りにされている子供を見かけたら、すぐに、警察に通報するようにしましょう。